これまで、安倍・菅・岸田政権の政策を批判してきました。要は本質を見誤っているからです。

 

 今回も、岸田文雄はこれまで同様、子育て対策としてお金をばらまこうとしています。小池都知事に先を越されたので焦ったのでしょう。しかし、これまでも同じようにやってきて、成果が上がるどころか少子化の勢いは強まるばかりなのに、まだ同じ過ちを繰り返そうとしています。まるで、前の大戦の日本と同じように。

 

 浜田敬子氏「男性中心企業の終焉」(文春新書)を読みました。付箋だらけになった本書にこんな一節があります。

 

『・・・「女性輝け」「働く女性を応援」と言われても私たち(女性)が鼻白むのは、こうした伝統的家族像を守り、昭和の「よき母」「よき妻」を求めながら、労働力としてもフル稼働せよというご都合主義的な政策にうんざりしているからなのである・・・』まさにご賢察。

 

 残業歓迎、長時間労働は普通、仕事帰りの飲み会いいね、という男性の意識改革・働き方改革をほったらかしたままにしているから、働きたい女性は結婚しないし、子どもをもうけようとしない、そんなあたりまえを無視した効果なき政策から抜け出せません。これでは少子化に歯止めをかけることなど、絶対に不可能でしょう。

 

 少子化が進めば、当然もことながら働き手不足が生じます。

 先日、秋田県警察本部に関する記事が載りました。秋田県では警察官志望者が激減しているそうです。県警として対策に乗り出しているようですが、うまくいくでしょうか。

 

 先日、昨年度の教員採用試験受験者数に関する記事が載りました。相変わらずというか、順調にというか、受験者数は着実に減少カーブを描いていました。なかでも、大分県では小学校教員志望者が募集定員を下回ったことが大きく取り上げられていました。とうとうここまで来ましたか・・・そんなため息が出ました。

 

 教員志望者減少の問題は何回か書いてきました。当宮城県も例外ではありません。世間では「学校はブラック企業並み」という評価がすっかり定着しています。こうなるのは当たり前です。

 20日の毎日新聞では、全日本教職員組合が小中校の教職員の1か月あたりの平均残業時間が92時間34分に上ったとの調査結果を発表したそうです。俗にいう“過労死ライン”は月80時間ですから、多くの先生方がいつ過労死してもおかしくないことが分かります。かくいう私も似たような状況を経験していますから身につまされます。

 

 そこで、この問題の解決方法としてよく言われるのが「教育公務員特例法があるからよくない」という指摘です。この法律によって、教職員は自動的に給与の4%を上乗せされる代わりに、残業代は一切支払われません。だから、これをやめてちゃんと残業代を払えよという話なのです。しかし、私はそれも問題の本質を見誤っていると思います。

 根本は、仮に給与の4%を上乗せされてもそもそも先生方がやらなくてもいい業務が多すぎる」ということなのです。中学校の部活動もその一つですが、何回も書いたので今日は触れません。しかし、これだけは言えます。部活動問題を曖昧にしたまま教特法を改正したら、却って「残業代を払うんだからいいだろ」となり、残業そのものは減りません。そしてそのことは、ワーク・ライフバランスを重視する若い世代が、教員を忌避する流れに拍車をかけるだけでしょう。

 

 昨年来、保育所や幼稚園での不適切な対応が問題となるケースが増えました。一つには、安倍政権の時代に、待機児童を減らすために闇雲に施設数だけ増やそうとしたことが原因になっています。その結果、園庭すらない認可外保育所がやたらと作られました。また、幼児教育・保育に関する識見がないのに、異業種の企業が利益第一で参入してきた来たことも事態を悪化させました。

 しかも、保育に関する基準(保育士一人当たりの子どもの数)には手をつけないので、保育士は疲弊し、しかも待遇はあまり変わらない。これでは子どもが好きで優秀な人材は集まりません。確かに、報道されている“不適切な保育”は批判されるべきです。しかし、その背景にある幼児教育・保育政策の貧困はもっと批判されなければなりません

 

 警察官も教員も、そして保育士・幼稚園教諭も国家を維持するうえではなくてはならない職業です。それなのに、それらの仕事の人気が低下し、それでなくても担い手は減るばかりの状況で志望者が減少する、そして少子化に歯止めはかからない。去年生まれた子どもたちが働くまでには、少なくとも、後18年かかるのです。それまでこの国は地球上に存在しているでしょうか?

 これこそ国家の危機というべきです。

 

 これも前に書きましたが、私は職業には貴賤が存在すると思います。好きな事をして生きるのがいい人生だ、というのも否定しません。しかし、いなくても困る人が少ない芸能人やスポーツ選手、プロゲーマーやYouTuber等がもてはやされ、営利のために宗教家を気取る人々、怪しいCMを垂れ流して不健康食品を買わせようとする企業が溢れる、こんな世の中は間違っていると思います。

 

・・・今日のBGMは“Pokaz Trio”の「Kintsugi」、静かだが胸に迫ってくるアンサンブルが沁みます。