「どうすれば国語の点数が上がるのか?」

多くの中学受験生が抱える悩みに、真っ向から向き合った女の子がいました。


「点を取ること」ばかりが優先される中で、私たち大人が見失ってしまいがちな“大切なこと”があります。


この春に中学受験を終えた生徒さんとお母様との1年半にわたる軌跡を通して、私自身が改めて心に刻んだことでもあります。

その歩みを綴っていきたいと思います。



  文章を読むことをやめてしまった女の子


彼女は大手集団塾に通いながら、5年生の秋から私のもとで国語の読解の個別指導を受け始めました。

当初、国語の偏差値は他の教科と比べて20ほど下回っていて、どう手を施して良いか分からないということでご相談を受けました。


小4の半ばころ、

「国語の点数が取れない。時間が足りない。」

という相談をした際に、通っている集団塾の先生から「設問の近くの文章だけを読んで解答する」というアドバイスを受けたそうです。


それ以来、彼女はテストで文章全体を読むことをやめてしまいました。


  成績は下がるばかり


彼女自身が「国語をなんとかしたい」と思い、個別指導塾に通い始めたそうですが、そこでも同じように「設問の近くを拾って答える」という指導を受けたとのことでした。


お母様の中には「これで本当にいいのだろうか」というモヤモヤがあったそうですが、それでも他に打つ手が見つからずに、受け入れていらっしゃいました。


しかし、変わる兆しの見えない国語の成績を前に、お母様がエフィカへご相談くださいました。


そのお話を聞いた時、私はとても胸が痛みました。


時間が足りないことに不安を抱えながら、どうにか点数を取ろうと必死だった彼女にとって、そのアドバイスは一つの救いだったのかもしれません。


素直な彼女はそのアドバイスの通りに実践しました。

しかし、文章を読まずして読む力が育っていくはずありません。


私は彼女に「文章を読むことの大切さ」を伝えました。


ですが、この1年以上、文章を読むことをやめていた彼女にとって、今さらすべての文章を読んで問題に向かうことは大きな挑戦でした。


最初はなかなか勇気が持てなかったのも無理はありません。


  本当に必要な力を育てる学習へ


子どもの読解力は、一方的な解説を聞いているだけでは育ちません。


その子の語彙力や理解力に寄り添って、一緒に文章を丁寧に読み解いていことが大切です。


また、設問に対してどう考え、どう答えるかという、思考のプロセスを育てることが重要です。


そうした文章の読み方、設問の考え方、答えの作り方は、様々なジャンルの文章にひとつひとつ丁寧に向き合う経験の中でこそ導いていけるものだと思います。


  語彙力を育てることの大切さ


そして、それを支える土台となるのが語彙力です。


語彙力がなければ、そもそも文章を「読むこと」自体ができないのです。


漢字学習をただの丸暗記だと捉えていた彼女に、言葉の意味や使い方を理解しながら学習することの大切さを伝え、言葉を習得する為の漢字学習へ切り替えてもらいました。


あわせて、日々の文章を読むトレーニングについてもアドバイスをしました。


その中で、お母様が共感してくださった言葉があります。 

 

  「急がば回れ」


受験では、短期間で結果を出そうと短絡的な方法を取ってしまいがちです。


しかし、長い目で見れば、本当に必要な力を身につけるためには、遠回りのように見える方法こそが最も確実な道になることもあります。


「先生の『急がば回れ』の言葉にはっとしました。受験のためだけではなく、生涯にわたって必要な力をつけるための学習として取り組みます」 


受験の成功だけを目指すのではなく、その後の人生においても役立つ力を育てることが大切だと、お母様自身が強く感じてくださったのです。


テストでは一旦、点数が落ちて苦しい時期があることも覚悟してもらい、テストでは文章を最後まで読むようにしてもらいました。


こうして彼女の挑戦は始まりました。




次の記事では、彼女の受験を乗り越えるまでの道のりを綴りたいと思います。