空の高さに秋の深まりを感じるようになり、散歩が心地よい季節になってきました。

親子での散歩は、子供の考える力を育てる絶好の機会になります。

子供の考える力を伸ばそうとすると、何か課題を与えて、正解を考えさせることに目が向きがちです。


でも、それよりも大切なのは、自分で問題を見つけて考える「主体的な思考力」を育てることです。


そして、主体的な思考力を育てるために欠かせないことが、「考えるための視点」を養うことです。

何かについて考えようと思ったとき、その視点がなければ、深く考えることができません。

以前の記事で折り紙に取り組む子供たちについて書きましたが、視点を与えることで子供の思考の質は大きく変わります。

これは折り紙に限ったことではなく、日常のあらゆる場面で当てはまることです。


どんな視点で物事を捉え、どう考えるかは、子供の思考の質に大きな影響を与えます。


散歩は親子のコミュニケーションを深めながら、その視点を育てることができる貴重な機会です。

散歩中に変化する自然環境や季節の移り変わりを観察することは、子供の好奇心を刺激すると共に、深く考える視点を身につける手助けになります。

例えば、同じ道を歩いても、春には色とりどりの花が咲き、夏は草木が茂り、秋には葉が色づき落ち葉が舞う、といった季節ごとの変化があり、さらに天気や時間帯によっても自然や街の景色は変わります。

その変化に意識を向けて観察することは、一つの出来事や事象に対して、違いを見つけ複数の側面から考える視点を持つ練習になります。


また、高学年のテキストで学ぶ学習への種まきも、日常の景色や事象に意識を向けることから始まります。

例えば、この時期の空気が澄んで空が高くなることや雲の様子が夏とは違うことに季節の移り変わりを感じ、その変化に関心を寄せることから探究心は芽生えます。

その時に大切なことは、物事を見る視点を広げるきっかけとなる問いかけです。


散歩中に目にする花や木々、虫や鳥、空の様子について「あの花は何だろう?」「これは何の鳴き声だろう?」「雲の形は何に見える?」「葉っぱの色はなぜ変わるんだろうね?」などのように具体的に問いかけてあげると、五感を働かせてそこに意識を向けることが出来ます。
そうやって自分なりに考えるきっかけを作ってあげて、それを深めていく対話をすることが大切です。

そこから「なぜだろう?」という疑問を持つことが出来れば、さらに一緒に考えたり調べたりして興味や関心を深めていくことが出来ます。


そうやって自ら見つけた疑問を探求することが、学ぶことの楽しさに繋がります。

これが低学年で大切な学習の種まきです。

四年生以降に理科や社会で苦労しない子は、低学年までに自ら探求することをして来た子です。


中学受験の学習をスタートする前に低学年までの学習の準備で肝要なことは、学習習慣をつけておくことは大前提として、思考力と好奇心と探究心を育てておくことだと思います。



子供の思考力や好奇心、探究心を育てるためには、子供の興味や関心に寄り添い、それを引き出すきっかけとなる「経験と対話」が必要です。


そして何よりも、親子で同じ景色を見つめ、感じ、考え、小さな発見や驚き、感動を共有する時間は親子にとってかけがえのない幸せな時間となります。

そんな日常の積み重ねの中でこそ、子供の思考力や好奇心や探究心は自然と育まれていくものです。




親子で一緒に手を繋いでお散歩できる時期は決して長くはありません。

いつものように息子と手を繋ごうとしたら、ふっと手を振り払って前を歩き始めた――我が子の成長と共にそんな瞬間は突然やって来るのです。

あの瞬間の一抹の寂しさは今も心の片隅に残っています。

限られた時期を大切にし、今しかない親子の時間を楽しみたいものですね。