最近、毎日新聞を始めとする多くのマスコミが次期韓国大統領、尹錫悦のフリガナを「ユン ソクヨル」から「ユン ソンニョル」に変えた。このことに関する毎日の説明、釈明はなかったように思う。

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韓国、保守政権復活も「少数与党」 次期大統領、首相は留任検討か

毎日新聞 2022/3/14 17:43(最終更新 3/14 17:44)

 韓国大統領選で当選した保守系政党「国民の力」の尹錫悦(ユン・ソンニョル)氏が、5月の新政権発足に向けた準備を加速している。13日には文在寅(ムン・ジェイン)政権からの「政権引き継ぎ委員会」の委員長に、中道系政党「国民の党」の安哲秀(アン・チョルス)代表を指名した。

 
           ―------------     --------------                       外務省もソンニョルを採用したことを最近知った。 

             

 

                                          一松書院のブログから引用          

 

次期大統領の呼称については、①ユン ソクヨル  ②ユン ソギョル  ③ユン ソンニョル の三種が従来より行われてきた。

 

このうち、①の ソクヨルは ハングルを文字通りに読んだもの。②の ソギョルは 韓国で実際に発音される頻度のもっとも高いもの。③の ソンニョルは 本人の希望ということらしい。

                                        

③については、本人が子どものころ、親からそう呼ばれた記憶があると語ったとの新聞記事を読んだことがある。

時代と共に変遷する発音を統一して固定するために創出された訓民正音(ハングル)であるのに、なぜ三種類もの発音が共存するのか?これは言語の大混乱ではないのか?

 

先ず、①のソクヨルは ソク ヨルという風に一つ一つ区切った場合の発音を示すもので、間違いではないが、実際にそのように発音されることはない。続けて発音しようとすれば、ソギョルになるということである。

 

漢字表記の 尹錫悦も ハングル表記の 윤석열も一つしかないのに、読み方だけが複数あるということは不自然である。これは朝鮮語の特色に由来する、発音の習慣から来たものである。

 

従来、日本語も朝鮮語もウラルアルタイ系言語であると言われ、中国から来た漢字音との摩擦が生んだ共通の傾向を持つ。日本語も朝鮮語も語頭の濁音を避ける。ラ行音も濁音と同じに見なして避ける。「国語」辞典を見れば、濁音より始まる語、ラ行で始まる語が極めて少ないことが分かる。

 

日本語よりももっと強烈に漢字文化の波に曝された朝鮮では語頭のR音を徹底的に避けた。

長い歴史の中で、李は Rが脱落させられて イになった。ヤユヨの母音を含む音節もRを脱落させたので、呂(りょ)は ヨと発音された。

 

また、羅や 盧は Rを落とし、代わりにNを当てた。ラが ナになり、ロが ノになった。

 

                           

                          

ここで、ソギョルを なぜ ソンニョルと 発音する人がおるかを考えて見たい。

もう一度言うが, 석열 → 성 녈 のように名前、綴りが変わったわけではない。読み方だけが変わったのである。

 

その理由は先に見た語頭のR音忌避に関係する。

現代韓国語で 열(ヨル)と発音する音節には 三つの系統がある。

 

a,  日本語で言うと えつ=悦(열)。この場合、エ母音がヨになったことが分かる。

b、日本語で言うと ねつ=熱。  (ニョル)が Nを脱落させて 열(ヨル)となる。

c、日本語で言うと れつ=烈。   (リョル)が Rを脱落させて 열(ヨル)となる。

 

つまり、母音系統のヨルaと N系統のヨルbと R系統のヨルcが あるわけである。

 

先も述べたように、元々濁音とR音を嫌う言語であったため、R音の多い中国語の波に曝されながらも巧みに忌避してきたという経過がある。

 

ところが日帝支配からの解放後、北朝鮮が成立した。北朝鮮はRを忌避せぬ文法体系を取り入れたためR音をめぐって異なる言語習慣が朝鮮半島に存在することになった。南の韓国側では長い間軍事独裁政権が続き、アカ(パルゲンイ)狩りが行われたため、韓国民はR音に対して必要以上に敏感になった。

 

R音を文字の上からも、発音上も消そうという暗黙の民意が形成されたのである。そこで、もともとは語頭のR音を避けるものであったものが、語中、語尾でもRを脱落させるようになった。容共と見なされれば獄舎と拷問から逃れられなかったから、その痕跡まで消そうとしたのである。70年代、80年代にはそんな韓国人が多かった。

               

 

もう一つの理由としては漢字教育がおろそかにされたことが挙げられる。現在は最小限の漢字は教えるようになったらしいが、日本のごと書き取りテストがないので、読むことは出来ても、自分の名さえ正しく書けぬ人が少なくない。

 

先に見た a、b、c の区別ができん人が大多数なのである。
次期大統領の親も知識人であったかも知れぬが、漢字の素養がなかったためか、母音系統のヨルをR系統のヨルと錯覚し、我が子を間違うてソンニョルと呼んだと推察される。

 

錫烈(석렬 → 석녈  →  성녈 ソンニョル)という類推が働いたのだろう。もう一度確認するが、彼の名前は錫悦であって、錫烈や 錫熱ではないからソンニョルと呼んではならないのである。

 

ソンニョルが 間違いであることが分かった。間違いは改めるにしくはない。

ところが毎日新聞を始めとするマスコミは 隣国の次期国家元首の名を 間違うて表記した。これによって数百万の人が誤った情報を与えられることになる。

 

先に述べたが、ソクヨルは字面上そうだということで、実際の発音はソクヨルではない。韓国人はそう発音せぬところが問題で、次期大統領であるし、記事に登場する度合いもケタ違いに増えるだろうから、この機に整理する必要があると毎日新聞は考えたのだろう。                 

 

実際ソギョルと発音する人が一番多いし、理論的にもソギョルが正しいからソギョルにすれば良かったのだが、どういうわけかソンニョルにしてしまう。本人が幼いころ親からそう呼ばれたとの話が流布されたところから、本人の希望にスリ替わり、要請されたわけでもないのに変更した。これは権力者への忖度に当たる。安倍政権下での昭恵夫人への忖度問題で、あれほど社会に警鐘を鳴らした毎日新聞のすることとは到底思えない。                                             

                  
                         

        

日本人の中に贖罪意識からか、韓国人に対する負い目があり、右と言えば右、左と言えば左を向く人がいる。韓国朝鮮のことを知らぬか、知ろうとせぬ人も多い。そうした人が自分の頭で考えず、韓国のことだから韓国人に聞こうという態度を示す。本当の友人であろうとするなら、彼らの間違いはきちんと指摘すべきであろう。

 

私人なら諸般の事情で理解を示すことも必要であろうが、彼は公人中の公人、次期大統領である。

公人の名前を手続きを経ずに変えていいわけがない。韓国人の人名ではあるが、仮名で表記する以上日本語の問題ともなる。日本政府や毎日新聞をはじめとするユン ソンニョル表記に切り替えたマスコミに抗議し、表記の撤回を要求する。

 

(追加)

この問題に関して知人から紹介された「一松書院のブログ」が大変参考になった。

読んでいただければ、韓国が表音文字であるハングルの読み方を巡って大混乱に陥っていることが分かる。一読をお勧めします。

 

https://ameblo.jp/onepine/entry-12731490987.html?fbclid=IwAR1aRB5dBBmQucEZfsniEHYF06enxbUhTDtZ5VlGLrsVkKeaUtET6ND2xcM

 

 

韓国では 일  열 の前に が介在し、 닐   녈 となる法則と考えられているが、これは問題の立て方自体が的外れで、漢字本来の音価から考えるのが正しい。

 

ㄴ 介在の例としては、                                                                       台所の仕事つまり炊事を 부엌 일 というが、文字通りプオッキルではなく ㄴ を介在させて

プオン ニルと 発音する。これは所属を表す「の、つ」に該当する ㅅが挟まり、さらにそれが有声子音化して ㄴ(n)になるというプロセスを踏む。

부엌 ㅅ 일 →  ㅅ → ㄴ  → 부엌 ㄴ 일   → 부엌 닐  → 부엉 닐

 

もう一つは、

무슨  일  は文字通りに ムスニル(무스닐 )と発音せず、ムスンニル(무슨 닐)と発音する。これは二つの異なる要素が結合した語の場合、連音化すると意味が分からなくなるため、ㄴ を介在させるわけである。ソンニョルとは次元の異なる問題であり、一緒にしてはいけない。