パスポート。
今月、仕事で韓国に行く。
つー事でパスポートが必要になり、マネージャーのゼッキー関山に‘パスポートを持ってきてください'と言われた事をスッカリ忘れて現場入り。
楽屋で磁石とワチャワチャ話していると、関山が音も無く忍び寄り、気が付くと背後をとられていた。
ゼ‘野村さん、パスポートを…。'
ハッ!!!
忘れたっ!!!
しかし、キツく言われていたから、ここはどうにか忘れた事を悟られずに切り抜けなければ!
迂闊に‘忘れた'と言えば、背後からそのまま顎を上に上げられ、ガラ空きになった喉に、スッ…とナイフを入れられかねない!
よ~し、ここは一芝居うつしかない!
野‘パスポート?いやいや、僕、日本人ですけど?'
ゼ‘………。'
ピクリとも反応しない、関山。
その一瞬の膠着状態を、関山が破る。
ゼ‘忘れたんですね?'
そこで俺は、すかさず返す!
野‘はい。'
その言葉を聞き、氷のような冷たい表情は変わらない。
その能面のような顔に気を取られている隙に、関山は素早くポケットに手を入れ、引いた時には黒い固まりを手にしていた。
その姿はまるで、流れるような手つきで、トランプを出したり消したりするマジシャンを思わせる。
素早すぎる手つきに、黒い物体が銃なのか、ナイフなのか、目で捉える事も出来ないまま、呆然とする。
関山はもう片方の手で、カチャリと黒い物体を開く。
バ…バ…バタフライナイフ?!
関山の獲物は、バタフライナイフだと言うのか?!
そして、さらにその獲物を耳元に持って行ったかと思うと…
ゼ‘あっ、お疲れ様です。ホリプロコムの大関です。パスポートの件なんですが…'
ケ…ケータイかぁ…。
背中に冷たいモノを感じながら、電話が終わるのをジッと待つ…。
おそらく相手は制作会社。
もし、パスポートを忘れた事によって、韓国行きがパーになったら目も当てられないぜ…。
電話が終わり、また音も無く忍び寄る、関山。
ゼ‘野村さん、今日中に制作会社の方に、パスポートのコピー送ってください。'
野‘いや、今日中って言っても俺にだって…'
ゼ‘今日中です。'
その強気な物言いに、俺はズバッとこう返す!
野‘はい。'
仕事が終わり、すべての用事を巻きめに終わらせなくてわ!
足早にコーヒー屋に入り席に着く。
速読の如きスピードで小説を読み、驚異の肺活量で一吸いでタバコを灰にし、一気にアイスコーヒーをすする。
なんとか無事に用事は済んだぜ!
さて、家に帰ってパスポートを探し、コピーをカマして、FAXするべし!
パスポートなんて普段使わねーから、結構探しちゃったよね!
夜になり、涼しくなってきたにも関わらず、噴き出す汗。
頬を伝う汗もそのままに、焦燥感が俺を突き動かす。
‘無くなった'的なオチだけは勘弁してくれよぉ~。
探す事、1時間。
諦めかけたその時…
‘あったぁ~!!!'
やっと見つけ出した、パスポート。
そのパスポートをそっと開いてみると、赤みのかかったソフトモヒカンの、チャラついた8年前の俺が居た。
なんか、イラッとした。
つー事でパスポートが必要になり、マネージャーのゼッキー関山に‘パスポートを持ってきてください'と言われた事をスッカリ忘れて現場入り。
楽屋で磁石とワチャワチャ話していると、関山が音も無く忍び寄り、気が付くと背後をとられていた。
ゼ‘野村さん、パスポートを…。'
ハッ!!!
忘れたっ!!!
しかし、キツく言われていたから、ここはどうにか忘れた事を悟られずに切り抜けなければ!
迂闊に‘忘れた'と言えば、背後からそのまま顎を上に上げられ、ガラ空きになった喉に、スッ…とナイフを入れられかねない!
よ~し、ここは一芝居うつしかない!
野‘パスポート?いやいや、僕、日本人ですけど?'
ゼ‘………。'
ピクリとも反応しない、関山。
その一瞬の膠着状態を、関山が破る。
ゼ‘忘れたんですね?'
そこで俺は、すかさず返す!
野‘はい。'
その言葉を聞き、氷のような冷たい表情は変わらない。
その能面のような顔に気を取られている隙に、関山は素早くポケットに手を入れ、引いた時には黒い固まりを手にしていた。
その姿はまるで、流れるような手つきで、トランプを出したり消したりするマジシャンを思わせる。
素早すぎる手つきに、黒い物体が銃なのか、ナイフなのか、目で捉える事も出来ないまま、呆然とする。
関山はもう片方の手で、カチャリと黒い物体を開く。
バ…バ…バタフライナイフ?!
関山の獲物は、バタフライナイフだと言うのか?!
そして、さらにその獲物を耳元に持って行ったかと思うと…
ゼ‘あっ、お疲れ様です。ホリプロコムの大関です。パスポートの件なんですが…'
ケ…ケータイかぁ…。
背中に冷たいモノを感じながら、電話が終わるのをジッと待つ…。
おそらく相手は制作会社。
もし、パスポートを忘れた事によって、韓国行きがパーになったら目も当てられないぜ…。
電話が終わり、また音も無く忍び寄る、関山。
ゼ‘野村さん、今日中に制作会社の方に、パスポートのコピー送ってください。'
野‘いや、今日中って言っても俺にだって…'
ゼ‘今日中です。'
その強気な物言いに、俺はズバッとこう返す!
野‘はい。'
仕事が終わり、すべての用事を巻きめに終わらせなくてわ!
足早にコーヒー屋に入り席に着く。
速読の如きスピードで小説を読み、驚異の肺活量で一吸いでタバコを灰にし、一気にアイスコーヒーをすする。
なんとか無事に用事は済んだぜ!
さて、家に帰ってパスポートを探し、コピーをカマして、FAXするべし!
パスポートなんて普段使わねーから、結構探しちゃったよね!
夜になり、涼しくなってきたにも関わらず、噴き出す汗。
頬を伝う汗もそのままに、焦燥感が俺を突き動かす。
‘無くなった'的なオチだけは勘弁してくれよぉ~。
探す事、1時間。
諦めかけたその時…
‘あったぁ~!!!'
やっと見つけ出した、パスポート。
そのパスポートをそっと開いてみると、赤みのかかったソフトモヒカンの、チャラついた8年前の俺が居た。
なんか、イラッとした。