デーシーデース!!
帝王切開後のお話、続きです。
麻酔が切れて少しでも腹筋を使うと激痛、そのまま眠れず夜を明かした朝、ベッドから立てとの指示が。
鬼の指示ですが、術後すぐに立たないと血栓ができてしまったり、体の回復がどんどん遅くなってしまうため、早々に離床をはかるということらしいです。
希望を託していた強力な痛み止めも効かず、
もう絶望し、立つのは無理だと泣きながら訴える私に、助産師さんは言いました。
考えてみてください。
その強力な麻酔が効いた上で、今その状態なんです。
この後、これが切れた時に立ち上がれと言われたらもっとできなくなります。
そしたらもっと辛いですよ?
やるなら今しかありません。
今です!!
立つのは今なんです!!
石出さん!!
今、立ってください!!
この、最悪な今よりもっと最悪になる、まさに今でしょ!な状況。
最悪の最悪を提案された私は、なおも大泣きしながら、ついに立つ決意をしました。
叫びながら少しづつ、少しづつ状態を起こし、
呻きながら少しづつ一本ずつ足を下ろし、
悶えながらベッドの横に置かれた捕まるポールのようなものに手を伸ばし、腰を浮かせました。
排泄の管を繋いでいた管が大きな音を立てて落ち、
下からは産後の悪露でダバダバと出血し、床が血だらけになりました。
もう、人間としての理性は吹っ飛んでいて、生き延びなければならないという動物としての本能だけで立ち上がりました。
その時の痛さといったらもう、
生きてきて1番痛かったです。
ボロボロの体で立ち上がることに全ての力を使ったからか、痛みで呼吸がうまくできなくなりました。
でも、お腹の回復もろもろに血液の循環は集中してしまうらしく、苦しすぎて、声が出ないのです。
息もできず、助産師さんにSOSも伝えられず、このまま死ぬんじゃないかと思いました。
なんとかポールにしがみついて耐えていると、少し息ができるようになってきましたが、以前として苦しくて痛くて、なかなか一歩を踏み出すことができず。
助産師さんから、とにかく息を吐くことだけに集中しろという指示があったので、気絶しそうな中、それだけに集中しました。
ハアハアハアハア、
ハアハアハアハア、
ううう、ううう、ううう…。
何度も、もう人間のメスを辞めたいと思いました。
わずか3メートルくらい先のトイレに行くことがゴールだったのですが、石出の号泣イヤイヤも含めて1時間くらいかかっていたのではないかと思います。
死に物狂いでトイレに辿り着きました。
その時トイレを済ませたのか何だったのか正直もう覚えていないです。
ただ、助産師さんが言ってくれました。
「ほんとに良く頑張りましたね。すごいです。」
そして私を車椅子に載せてくれて、行きましょう、と言ってある所に連れて行ってくれました。
それは。
赤ちゃんのところでした。
この世に産まれてきてまだ1日も経っていない、
大きなベビーケースに入った小さな小さな私の赤ちゃん。
助産師さんがボーゼンとしている私に、赤ちゃんを渡してくれて、少しだけ抱っこしました。
出産してから、まだ自分の手で抱っこしていなくて、そのとき初めてじっくり顔を見ました。
可愛くて、可愛くて、愛しくて。
もう涙が訳わからないくらい出ました。
そうか、この子に会うためにこんな辛い思いをしたんだなと…。
腕にも力が入らないのでほんの少しで赤ちゃんを戻してもらい、また回復のために車椅子に乗ってベッドに戻りました。
助産師さんはボロ泣きしている私を気遣いつつ、たくさん褒めてくれました。
私は車椅子に乗りながら、こんなことを考えていました。
いやトイレまでも車椅子乗せてくれや!!!
でもまずは自分で立たないとダメなんですよね。
喝を入れて、ボクシングのトレーナーくらい立て!立つんだ石出!とやってくれた助産師さんに感謝です。
人間をやめなくてよかったデーシーデシタ!!