#662 レビュー じゃないほう源氏の歴史『公家源氏』 倉本一宏 | 歴史に遊び!歴史に悩む!えびけんの積読・乱読、そして精読

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大河ドラマ『光る君へ』で登場する源雅信などの公家の源氏たちを知る公家源氏ー王権を支えた名族 [ 倉本 一宏 ]』を読みました。

天皇を支えること(天皇の藩屏)を期待され、源氏として臣籍降下した公家源氏、天皇が代ごとに源氏を生み出してしまうのであるものは地方で名門武士になるも、長く朝廷で生き残った公家源氏もいるその歴史を知る1冊

公家源氏ー王権を支えた名族 (中公新書 2573) [ 倉本 一宏 ] 楽天

  レビュー

源氏というと、鎌倉幕府の源頼朝や室町幕府の足利尊氏などの武家の清和源氏が有名すぎて、武士というイメージが一般的ではないでしょうか。しかし、源氏は、天皇の皇子や皇女で源姓をもらい、皇位継承権を無くして臣籍降下したやんごとなき公家です。

大河ドラマ『光る君へ』でも、源雅信や源俊賢などが公家源氏として登場しています。

(NHK大河ドラマ『光る君へ』の源雅信(宇多源氏)と源俊賢(醍醐源氏)(C)NHK)

 

その貴族の源氏”公家源氏”の成立と幕末維新に至るまでの歴史を知ることができるのが本書になります。

 

公家源氏の成立の背景としては、794年の桓武天皇の平安遷都後の嵯峨天皇が弟に譲位して、嵯峨太上天皇となり、弟は淳和天皇として即位し、皇統が嵯峨系統なのか、淳和系統なのかという状況が生まれますが、842(承和9)年の承和の変で嵯峨系統が勝ち、藤原良房の北家が藤原氏内部でも優位となります。

 

この嵯峨が淳和かという皇統争いの中で、嵯峨天皇は在位中の814(弘仁5)年に、「親王・内親王が多くて国費を圧迫する」という理由で、自らの皇子女8人に源朝臣の姓を賜って臣籍降下させました。以前の学説では国費圧迫が理由でしたが、今では皇位継承候補者を減らすことでの皇位継承争いを軽減することや自らの子を臣下として官僚化して「天皇の藩屏」として自らの政治の輔弼にあたらせようという説などがあるそうです。

 

ただ、この「天皇の藩屏」には限定理由がつくものでした、源氏は嵯峨天皇の嵯峨源氏に始まりますが、それぞれの天皇も自らの皇子女に源朝臣姓を賜って臣籍降下させる状況が発生し続けます。源頼朝や足利尊氏らは清和天皇のときの臣籍降下なので清和源氏と呼ばれます。

 

他にも醍醐天皇の醍醐源氏、『光る君へ』との関係では冷泉天皇や円融天皇の父の村上天皇による村上源氏、道兼に出家退位させられる花山天皇の花山源氏や、後白河法皇の後白河源氏など次々に生み出されます。

 

臣籍降下直後世代は、命じた天皇との関係で藩屏として期待され、高位につくこともできましたが、代を経るにしたがって、そのときの天皇とは距離ができ、そのときの天皇が皇子女を臣籍降下させるとそちらを重用するという流れになり、高位につくことなどなく、地方官がやっとだったり、まったくわからなくなったり没落していくそうです。高貴な血なのに非常に過酷です。

 

そんな流れを読み取って、むしろ地方で武家として生きていくことを選んで、後に幕府を開くのが清和源氏になることが分かります。見切りの良さが武家政権樹立につながったわけです。

 

そんな流れの中、『光る君へ』を楽しむ上で外せないのが、源雅信と源俊賢です。

源雅信は、宇多源氏で登場当時は左大臣です。非常に高位の公家です。雅信の系列はその後も高官を輩出することになります。それが大きかったのは娘の倫子が藤原道長の正妻となったことで、摂関家との関係を築けたことでした。

 

源俊賢は、醍醐源氏です。父の高明が安和の変で左遷され、その流れのままだと没落している可能性もあったと思われます。こちらは姉の明子が道長の室になりました。その関係もあり蔵人頭から、参議、権大納言と登り、後世には、藤原行成、公任、斉信らと「寛弘の四納言」とたたえられ、子孫は院政期まで繁栄できたそうです。

 

中世以降も、幕末維新に及ぶ長い間、公家世界で続いたのが村上源氏で、道長ら摂関家との密接な血縁・姻戚関係をもとに、幕末維新で活躍する大原家、久世家、岩倉家などを輩出します。

 

大河『光る君へ』で、源雅信や源俊賢の源氏の流れを確認してみるのもいいと思います。

 

〈書籍データ〉

『公家源氏‐王権を支えた名族』

著 者:倉本 一宏

発 行:中央公論新社

価 格:880円+税

 2019年12月25日 初版

 2020年1月30日   再版

 中公新書2573

 
 
 
 

 

 

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