2023年は、大河ドラマが『どうする家康』に備えて年末年始に読む第3弾
近世日本国民史
『織田信長(三)』
徳富蘇峰の『近世日本国民史 織田信長(三)織田氏時代後編』を読了しました。
<書籍データ>
『近世日本国民史 織田信長(三)』
著 者:徳富蘇峰
発行所:株式会社講談社
1981(昭和56)年1月10日 第1刷発行
定 価:780円
講談社学術文庫
もともとは大正7年ころに執筆
考察や感想
徳富蘇峰の織田時代完結編。
中国毛利攻めの秀吉の大活躍、本願寺との決着、徳川信康の処分、長篠の戦い以後から武田家の滅亡、追い詰められる上杉氏、本能寺の変、信長の時代
という内容で展開します。
現代の多くある歴史小説や、ヤングマガジンで掲載されていた『センゴク』を読めば内容的には十分なところです。
徳富蘇峰の執筆当時の認識や、様々な資料の引用から注目するところとしては、
太田牛一の『信長公記』を確実たると評価する中、小瀬甫庵の『信長記』については、小説じみたるという評価をしていることが、現在でも『信長公記』は様々に出版されているが、小瀬甫庵の『信長記』がそうではないことにつながっているということだと思います。
本能寺の変については、今でも様々な理由が提示されていますが、この当時も、
信長の度重なるパワハラへの怨恨説
毛利攻めに際して丹波や坂本の領地は召し上げられ、出雲・石見の毛利領地を与えるといわれたことに対する未来への不安
稲葉一鉄との家臣引き抜きをめぐる信長の対応
領地の愛宕山は周山ともいわれ天下の山を諒することによって天下を取りたいという思い
などが挙げられる中、徳富蘇峰としてはどれか一つに決定することは困難だが、信長が本能寺でわずかのものしか連れていないことや、信忠も京都にいるというまさに千載一遇のチャンスから、様々な思いと合わさりという感じの書き方でした。
この当時でも、信長が天下統一すれば、その後は世界に打って出るという認識があったようで、徳富蘇峰も、大阪を本拠に進出していくことを書いていました。
この信長を通じていえることは、徳富蘇峰の評価としては、とにかく尊皇あふれる存在であるということですが、もし信長が天下を統一して、世界に打って出るような場合、その尊皇はどういうかたちになっているだろう。
足利将軍家についても、信長はその価値を認めて、大義の旗を得ることができる間は尊重していたが、そうではなくなれば(義昭も信長に対抗したというきっかけもあるが)、足利義昭を追い出したようにどうなるんだろうという思いもいだくものでしたが、それは”歴史のif”なので謎のままなんでしょう。
当時における織田信長の評価を知るという意味では貴重なものなんだと思います。
『近世日本国民史 織田信長(一)織田信長時代前編』は、こちら
『近世日本国民史 織田信長(二)織田信長時代中編』は、こちら