今月は、スパッタ関連の参考書を紹介します。

”スパッタ薄膜”基礎と応用 小林春洋著 日刊工業新聞社(2001)です。

170ページとやや小ぶりですが、スパッタ膜に関する基礎から応用まで簡潔、平易にまとめられています。さらに言葉だけでなく、簡単な数式を用いて理解しやすく配慮されています。スパッタ膜を扱う人にとっては、分かりやく、役に立つ入門書かと思います。

 

まず初めに、

1.1.2真空蒸着とスパッタ膜との違い

が説明されています。大きな違いとしては、堆積粒子の持つエネルギーがスパッタの場合には、平均的には10eV程度と大きく、それに比べて、蒸着膜は0.2eV程度と低いことです。それにより、膜の構造、緻密性が大きく異なります。本書で挙げている

スパッタ膜の特徴を掲載します。

ⅰ)成膜しているとき同時に基板を照射する高エネルギー粒子の量とエネルギーを適当に制御すると次の優れた性質を持つ薄膜が得られる。

①緻密な高密度薄膜

②バルクにない結晶構造を持つ薄膜

③磁性材料に対し、垂直方向の磁気異方性をもつ薄膜

④基板との付着力が大きい薄膜

です。他に、合金薄膜が作りやすい、成長速度がスパッタ電力に比例する、面ソースなので膜厚均一性が良い、酸素、窒素を加えて容易に酸化物、窒化物ができる、ターゲット寿命が長いので連続運転ができる、マグネトロンスパッタによる成膜速度が向上した、RFスパッタにより誘電体薄膜が容易に作成できる などです。

 

この本の中で、特に参考になった部分として、

”5.2.4表面拡散を生じさせる方法

があります。ここでは、(1)エネルギ粒子の同時照射(a)イオン照射:スパッタ粒子のイオン化率を上げ、低イオンエネルギを用いたメリットを解説(b)反跳Ar:ターゲット材料の原子量が大きいほど高い など原理的な考察をしています。(2)基板温度:基板温度を上げると、表面拡散をする。 Ts/Tm>0.3 、またさらに高温では、内部拡散する。Ts/Tm>0.5 これは、バルク拡散に相当し、スパッタ膜の微細構造モデル(Thornton model) でZone3に相当する。 Ts:基板温度 、Tm:スパッタ膜材料融点

”5.2.5”表面拡散を妨害するもの

 (1)残留ガス:材料によって変わるが、例えばスパッタ粒子100個に対して1個の在留ガス分子であれば10E-6Torr程度となる。(2)Arガス圧:高ければ、スパッタ粒子への衝突散乱を起こし間接的に表面拡散を妨害する。

 

”5.4.1純金属・合金ターゲットのリアクティブスパッタ

反応性スパッタでは、ヒステリシスが生じる理由をBergらの論文を用いてわかりやすく解説しています。[S.Berg,T.Larsson,C.Nender and H.O.Blom:J.Appl.Phys.63(3)887(1988)] 

 

”5.7.1微小欠陥の種類

として(1)ゴミによるピンホール(2)ヒロック(3)スプラッツなどが挙げられています。現場の技術者は常に、コスト、歩留まりに神経を使うことになります。 このような解説も参考になると思います。

 

アーステックホームページもよろしかったら参考にして下さい。