ユニクロは、創業から順調に店舗数が伸び、売り上げも右肩上がりで増えていた1995年、商品の品質チェックには、目が届かなくなっていた。品質が落ちていれば大変なことであった。
柳井正は、そこで一計を案じるのである。全国紙と週刊誌に、ユニクロのキャンペーンが広告された。
「1995年10月に、全国紙や週刊誌に"ユニクロの悪口言って百万円"という広告を出したのだ。
やがて、集まった"悪口"は一万通にも上った。もちろんほとんどが品質へのクレームだったという。
柳井正は、品質にこだわるユニクロを告知するために、面白い方法で品質改善を試みる。
いわば逆転の発想である。
柳井は、「上下1900円のトレーナー、一回洗ったら糸がほどけた。もう買いに行かへん」など、読んでいると気分が落ち込んだが、その当時の私たちの商品の到達水準を知る上では非常に役立った、と後に述べている。
応募者は、当選を狙ってわくわくしながら商品のクレームを見つけ出していた。しかし、あえて"悪口"を募集するところに柳井正のセンスと頭の良さが伺える。この懸賞なら、消費者は重箱の隅をつつくように、商品の欠点を洗い出してくれる。
メーカーにとって、クレームほど商品を成長させる情報はないだろう。それを柳井正は、たったの100万円で10,000通も集めたのである。見事な一手であった。
