【紹介】
今回は,青崎有吾さんの小説「早朝始発の殺風景」の紹介です。
初読は刊行直後の2022年です。書店で裏表紙の内容紹介を見て,「何か面白そうだな」くらいの感覚で購入しました。表紙や内容紹介からして,最初は高校生の青春恋愛小説かと思っていましたが,まったく異なるジャンルでした。今年になって,久しぶりに再読してみましたが,再読でもやはり面白かったです。
【あらすじ】
◆早朝始発の殺風景
男子高校生の加藤木が,諸事情で早く登校する必要があり,始発電車に乗ると,同じクラスの女子・殺風景がその電車に乗っていた。お互いが,なぜ始発電車に乗っているのかを会話の中から探り合う。
◆メロンソーダ・ファクトリー
仲良し三人組女子の真田・乃木坂・詩子が,ファミレスでおしゃべりしている。クラスTシャツのデザインを描いてきた真田が,二人にその素案を見せるが,詩子だけは真田のデザインに反対する。
◆夢の国には観覧車がない
部活の卒業旅行で遊園地にやってきた男子高校生の寺脇は,後輩男子の伊鳥にいっしょに観覧車に乗るように誘われる。なぜわざわざ男どうしで観覧車に乗ることを望んだのか,寺脇は考え始める。
◆捨て猫と兄妹喧嘩
妹に公園に呼びつけられた兄が駆けつけると,そこには捨て猫が入った段ボール箱があった。家に連れて帰るわけにもいかずに途方に暮れ,喧嘩にまで発展してしまうが,そんなやり取りの中で,妹はあることに気づく。
◆三月四日、午後二時半の密室
女子高校生の草間は,卒業式を体調不良で欠席した煤木戸に卒業証書を届けるために,煤木戸の家に行く。煤木戸は真面目だが不愛想で,ぎこちないやり取りが続くが,煤木戸の態度や言動から,草間は何か違和感を感じ取る。
【レビュー】 ※以下,わずかながらネタバレが含まれています。
この小説は,5本立ての短編集です。
各話の主人公はすべて高校生です。ストーリーはすべて独立して,読むうえでの互換性はありません。ただ,巻末の「エピローグ」に,このことに関するちょっとした仕掛けがなされていて,それがとても秀逸だと感じました。
※ここから,さらに踏み込んだネタバレが含まれています。
3つ目の話「夢の国には観覧車がない」は個人的にお気に入りです。男子高校生が2人で観覧車に乗るというシチュエーションからして,おそらく誰もが同性愛をテーマにした話なのかと思いながら読み進めることでしょう。しかし,寺脇には好意を抱いている子がいるということがわかります。ただ,その片思いの子が男子なのか女子なのかは,最後まで明かされません。同性愛なのか異性愛なのか,どちらをテーマにしているとも取れる描写が,非常に優れています。
前述の【紹介】で,最初は青春小説だと思ったと書きましたが,青春の要素を盛り込んだ「コージーミステリー」となっています。結末に導くための伏線が巧妙に張り巡らされていて,読了後の納得感を得ることができます。
全体的には軽い雰囲気のストーリーが多いので,安心してサクサクと読むことができます。それでいてちゃんとミステリーとして成立しているのが,この小説の素晴らしいところです。現役の高校生はもちろんですが,大人が青春時代を振り返りながら読むのも,なかなか味わい深い作品だと思います。







