原油価格が一時1バレル50ドルを割るほど急落しています。

石油価格下落、世界経済低迷が主要因=サウジ国王
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0KF1GU20150106

[リヤド 6日 ロイター] - サウジアラビアのアブドラ国王は、サルマン皇太子が代読した演説のなかで、石油価格の下落によってもたらされた課題に対し同国が「断固たる意思」をもって対処すると表明した。

アブドラ国王は、石油価格の下落は主に世界経済の低迷が原因だと指摘。同様の状況に同国はこれまで直面したことがあると述べた。

一般的にはアメリカのシェールオイルの生産を潰すために身を切って我慢比べをしているのだという解説がなされており、加えて景気低迷で実需が落ちて、環境車などで消費量が減っているのだと言われています。

そんな訳は無くないですか?一時期最高値147.27ドルからしたら3分の1。景気低迷で車に乗る人が半分になる訳でもなし、エコカーのシェアが増えていても説明できる落ち方ではありません。米国のシェールオイルに対抗してというのは真かもしれませんが、米国と対立する意図はサウジには無いはずです。

サウジが価格調整役を投げ捨てて原油安を仕掛ける理由はどこにあるのでしょうか?そして何故今のタイミングなのか?アメリカと利害が全く一致しない政策ではないとするとそこから浮き上がるものは何か・・・?

結論から言うと、サウジが恐れているのは「イスラム国」の台頭ではないかと思います。そしてその裏にいるイランも不倶戴天の敵。これはアメリカも同様です。軍事介入しないと弱腰、したらイラク戦争の二の舞、打つ手が限られる中でイランの財政を逼迫させ、イスラム国への支援の余裕を無くす政策・・・がこのエキセントリックな原油安を仕掛ける背景ではないでしょうか。

上記は政治的な解釈なので少し陰謀めいていますが、純粋に経済的に考えるともう一つ大きな理由があると思います。原油価格の異常な高騰は、需要が爆発的に増えたからではありません。原油への投機が爆発的に増えたからです。当時ゴールドマンのレポートは興奮気味に200ドル到達を予言していました。

この投機マネーは、リーマンショック後動きが取れなくなった投資銀行に変わり独立したファンドが流し込んでいました。ところが更にこのファンドに資金を出していた年金・大学などのポリシーが変わりました。例えばこれ。

米カルパース、リスク回避でポートフォリオ変更を検討=WSJ
http://jp.reuters.com/article/domesticFunds/idJPL4N0QH19P20140811

[10日 ロイター] - 米国最大の公的年金基金、カリフォルニア州職員退職年金基金(カルパース)は、よりリスクの高い投資を回避するため、ポートフォリオの大幅変更を検討している。ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙が10日報じた。

複数の匿名関係者が語ったところによると、コモディティーや企業株、ヘッジファンドからの資金引き揚げあるいは投資縮小が検討されている。ウェブサイトによると、カルパースの4月30日時点での運用資産規模は2905億ドル。カルパースからのコメントは得られていない。

同紙によると、最高投資責任者のTed Eliopoulos氏を含め投資担当の幹部が検討しているが、最終決断には至っていない。協議について取締役会への通知もないという。

検討されている最大の変更点は、エネルギーや金・金属を含むコモディティー指数への投資の取り止め。550億ドルにのぼる企業株への投資を国やセクターなど広範な対象にシフトすることも検討されているという。

これによりコモディティーから投機マネーが流出したのが大きな理由です。

更にもう一段安くなって行くと、とばっちりを受けたロシアの再度のデフォルトもあるかもしれません。世界経済が動いてきましたね。