舌のピリピリする痛みと指の関節痛、病気でしょうか? | 口腔乾燥症ドライマウス 唾液過多症(流涎) 味覚障害 嚥下障害
[舌のピリピリする痛みと指の関節痛、病気でしょうか?]

(あなたの健康百科  2013年08月01日)



<専門家へきいてみよう 「質問する」より> 
〔症例〕 60代 女性
〔症状〕 舌の先にピリピリとした刺激痛があり、以前より喉が渇くように
なりました。
指の関節は曲げ伸ばしをすると痛みます。
どんな病気が疑われますか?
また、どのような治療法がありますか?



口腔乾燥感を伴った舌痛と関節痛があるため、シェーグレン症候群が最も
疑われます。 

シェーグレン症候群とは、口の中や目の乾燥症状を特徴とする自己免疫性疾患
です。
中年以降、特に女性に多く発症し、男女比は1:9や1:14ともされます。

関節リウマチや他の膠原病に伴って生じる場合(二次性シェーグレン症候群)
と、そのような合併疾患が認められない場合(一次性シェーグレン症候群)の
2種類が存在します。



<症状>
口の中や目に乾燥症状が生じます。
口の中の乾燥症状として、口渇や味覚障害の他に、乾いた食べ物を食べる際に
水分が必要となる、口がべとついて日常会話が続けられない、夜間飲水の
ために目を覚ますようになった、入れ歯が合わないなどが出現します。

舌の運動後の刺激痛も口腔乾燥による可能性が高いと思われます。

乾燥症状以外の症状として、耳下腺(耳の前から下にある唾液腺)の腫れ、
関節炎、レイノー現象(主に手指において、寒冷時や冷水に浸した場合に
突然白くなった後、紫色に変色し、その後に元に戻る現象で、特定の指の
しかも特定部位のみ白くなる)、皮疹、紫斑などを認めます。中でも、関節痛
(炎)が最も多発します。
頻度は少ないのですが、注意する症状として、間質性腎炎、間質性肺炎、悪性
リンパ腫があります。


シェーグレン症候群は、生活に支障を来すことは多くても、単独では命に
危険を及ぼすことことが少ない病気です。
しかし、関節リウマチや全身性エリテマトーデスをはじめとする膠原病を合併
していることが全体の3分の1程度あります。



<治療法>
基本的に、病気の元を断つのではなく、症状を緩和する対症療法が中心となり
ます。

飲み薬としては、
 ・唾液分泌を促進するセビメリン(商品名「エボザック」
     「サリグレン」)
 ・たんを取り除くアンブロキソール(商品名「ムコソルバン」
     「プルスマリンA」「ムコサール」など)
 ・気道の粘膜を保護するブロムヘキシン(商品名「ビソルボン」など)
 ・漢方薬では口渇や空せきに効く麦門冬湯
などがあります。
また、
 ・人工唾液のスプレー剤
 ・リン酸一水素カリウム・無機塩類配合剤(商品名「サリベート」)
も比較的よく用いられます。


関節痛には非ステロイド抗炎症薬(いわゆる解熱鎮痛薬)が用いられ、主要
臓器症状(間質性肺炎、間質性腎炎、中枢神経症状など)には副腎ステロイド
薬や、免疫抑制薬のシクロホスファミド(商品名「エンドキサン」)などが
投与されます。


眼乾燥の検査(シルマーテスト、ローズベンガル染色テスト、蛍光染色
テスト)や口腔乾燥の検査(ガムテスト、唾液腺造影、唾液腺シンチ
グラフィー、唾液腺生検)、自己抗体(抗SSA/Ro抗体、抗SSB/La抗体)
などで、シェーグレン症候群が否定された場合には、口腔内乾燥症(ドライ
マウス)と診断します。
この場合の治療法も対症療法です。



(明海大学歯学部歯学科病態診断治療学講座口腔顎顔面外科学
                            坂下英明教授)





http://kenko100.jp/articles/130801002482/