ダイビングと健康管理 | 精神科医:みえしん院長

精神科医:みえしん院長

精神科医・産業医のブログ!心理学や精神医学、療養の方法から、障害者の結婚相談など障害者のお役に立てるサービス提供をしています。

おはようございます(こんにちは)。三重心身クリニックの臼井卓士ですニコニコ


以前診断書のことを書きました(→過去記事 )が、私が書く診断書ではスポーツ向けのものもあります。いろいろあるのですが、私は学生時代から少しですがダイビングをしますので、ダイビングやシュノーケリングをされる方が時折、「ダイビングをしても問題ない」という旨の診断書を希望されていらっしゃることがあります(*注)。


ダイビングは、多くのスポーツやアドベンチャーに比べて安全性が高いレジャーと言えますが、やはり自然相手ですし、水の中でのレジャーですのでやはりそれなりの危険は想定しておく必要があります。ダイビングにおいては、スキルアップも大切ですが、自分の体調を整えて楽しむことがトラブルの予防に大切です。
臼井卓士のブログ
さて、私はダイビングの経験は多くなく、運動神経も鈍いほうですので、いつもインストラクターやバディ(注:ダイビング中のパートナーのこと)の方などに御迷惑をおかけしていますしょぼんが、せめて自分のできることで皆さまのお役にたちたいと思い、ダイバーの方から良く受ける健康上の悩みについて少し書いていきたいと思います。他のスポーツにも応用できるものも多いと思います。
では早速ですが、今回は、
「船酔い」について書きます。


ダイビングで「船酔い」というと大きく2つに分けられます。
①ボートダイブの場合に起きる船での移動中の酔い
②水中での浮遊による酔い
①はイメージしやすいと思います。②は意外に思われる方もいらっしゃると思いますが、泳ぎながら酔ってしまうという現象です。
医学的には「動揺病」と呼びますが、体に加速度や水による上下動が加わって耳の内耳にある三半規管(特に耳石器系)が刺激されることにより生じます。動いていても一定の速度で全く揺れずに直進している乗り物では酔いは起こりません。同じ乗り物でもバスでは起こりやすく、電車では起こりにくいのです。いずれにせよ内耳の刺激の結果自律神経が失調状態となり、吐き気、めまい、胃腸の不具合などが生じるのです。


さて予防の方法ですが①の場合、大きな船なら船の中央が揺れが少ないので中央に陣取りましょう。前は揺れが大きいですね。「横に寝てしまうのが最善」という人や、「顎を上げて横になると垂直感覚をつかさどる三半規管が水平になり楽になる」と教えてくれる人がいましたが、私の経験では最悪ですね。横になれば必然的に頭が船と一緒に揺れるので、一層酔いを助長してしまうと思います。まずは遠くの動かないものを見続けるのが現実的です。


②の場合も同じです。透明度にもよりますが、進行方向の岩やあなたが後ろのほうならインストラクターを常に見ておくのでもよいです。水平線を見て三半規管に垂直・水平情報をインプットしておけるからです。ちなみに「下を向く」場合はできるだけ時間を短くしてください。下を向くとどうしても身体(頭)は船と一緒に揺れてしまいます。船釣りをする場合で初心者は酔いやすいです。エサ付けなどは手元を見て作業しますが、初心者は作業に手間取るため酔いやすいのです。できるだけ下を見ず、水平線を見るのはダイビング以外でも大切です。


また船の後部は排気ガスが強くなります「揺れ」と「におい」を減らすことが船酔い予防には重要です。

ただこういった工夫は船酔いしやすい人にとって、「気休め」にすぎない場合も多いです。船酔いでダイビングに行くのがおっくうになるくらいなら「酔い止め」を活用するのが大切です。私のお勧めは、プリンペラン®(メトクロプラミド)ナウゼリン®(ドンペリドン)です。

臼井卓士のブログ 臼井卓士のブログ

ちなみに市販の「酔い止め」は眠気を起こす成分が入っていますのでご注意ください(例:スコポラミン臭化水素酸塩水和物、クロルフェニラミンマレイン酸塩など)。きちんとした診察を受け、あなたに合ったお薬を処方してもらいましょう。


*注:当院に定期的な通院のない方に診断書を発行することはできませんのであらかじめご了承願います。定期的な通院があっても症状の残存している方には発行はできません。
ペタしてね