人間の最期の治療はさまざまである。例えば末期がんであといくばくもない時でも抗がん剤を打ったり、透析をしているのが医療の現状である。もともとがんそのものは痛みがないものであるが、そこに化学製剤を入れることで痛みなどの症状が出てくる。
最期の最期まで様々な治療を続けることが「愛」だと信じて疑わない家族がいる。人生の最終章を干し柿にたとえるとよく分かる。柿は、時間とともに赤く熟し、食べ頃を過ぎてからはゆっくり水分を蒸発させ、渇きながら小さく萎み、枯れ果てて腐り、やがて土に還っていくといわれる。人間もこれと同じで自然の摂理によって干乾びていく肉体に、過剰な水分や栄養を外部より入れると体のバランスが崩れかえって苦しめる結果となる。老衰で亡くなった遺体と、病院の治療を受けて亡くなった遺体の体重差さは10㎏も違うらしい。平穏死で亡くなるのは最もいい最期ではないだろうか。
参考資料:薬のやめどき