その女は他の人間とは違っていた。



何を考え、何を求めているのか全く見当もつかなかった。



その瞳を何時間も見つめていても、きっと何も見いだせないだろう。



だからこそ、彼女は誰よりも強く、誰よりも愛されていた。





―――・・・




目の前の少女の目がスッと細くなった。「―――ドンキホーテ・ドフラミンゴ」



「ほう。俺の名を知ってるのか」




茶化すように笑みを浮かべるが、彼女はにこりともしなかった。




「どいて」




その声には大地を揺るがすような凄みがある。




益々あの女に似てるな・・・。




「フッフッフッ・・・これでも七武海でねぇ。そう簡単に」




だったら尚更。




くいっと指を動かす。「通すわけには行けねぇんだ」




手にいれたくなるじゃねぇか。




ぴたり。



ダフネの動きが止まった。




まるで石のように。



意地汚い笑みを浮かべたまま俺は彼女に歩み寄り顎を掴んで顔を上げさせた。




ギロリ。




炎のような青い瞳が睨みつけてくる。




「―――いいぜ、その顔」



指で顔をなぞる。「気に入った」



首筋にかかる髪を払いのけ、彼女の首筋に顔をうずめた。



味わうように舌を這わせる。




「―――いけ」




「あ?」



「心から」



顔を上げると怒りに満ちた瞳と出会った。「出ていけ」



その瞬間、ダフネの目が赤く染まった。



驚く暇もないまま体が浮かび上がり、反対側の岩壁に叩き付けれた。



「―――あんたに私は倒せない」




こちらを真っ直ぐ見つめる目。



「あなたは私を越えられない」




「私は、ポートガス・D・エース、ただ一人を助けたいの」




「守るべきものがある限り」





「・・・・守るべきもの、ねぇ」



岩に体を預けながら、肩を震わせて笑う。



そんなもの。




とっくの昔に消えてしまった。




彼女とともに。