Feathercraftオーナーツアー2015 ~その四~ | DriftWoodBeach

Feathercraftオーナーツアー2015 ~その四~



朝起きると天気は良いものの風は依然として強く吹き続けている。
朝食は前日に大量に作りすぎたカレーを使ったカレーうどん。朝からノルマを決めて豪快に食べてもらう。
この日はリーフの中を波打ち際ぎりぎりに漕いで行きたかったのでしばらく満ちるまで潮待ち。ゆっくりと出発することに。



風が強いと空の雲の形は独特だ。高いところの雲、低いところの雲、それがレイヤー状に重なりあって太陽の光を受け、何とも言えないグラデーションを作る。野外に出ると空をよく見ることになるのだが、その必要性からなのか、それとも雲が単純にきれいだからなのかはわからないのだけれども、空を見上げることが多くなるのだ。


10時半出発。なかなかパワフルな向かい風を受けながらじりじりと進んでいく。さすがに自艇を持っている経験者だけあって漕ぐ手をやめず、力加減を調整し、ゆっくりと着実に水をキャッチして皆進んでゆく。多少、女性であるYさんが遅れるが辛さによるものではなく、単純に馬力の問題だった。


南風見田浜の東屋を過ぎて忘勿石にさしあたるあたりから風が弱まってくる。琉球石灰岩が見れるフケガーラまで来ると驚くほど辺りは静かだ。カヤックを上陸してしばしの休憩。こういう場所でしか写真を撮らないので後で振り返って見てみるとこの日も穏やかなカヤッキング日和ではないかと勘ぐってしまう。











現実はこのフケガーラを抜けると、いよいよ北東の風が南風見崎を回り込んできてもろに吹き抜ける区間になっていく。ここからはもう気合と根性でしかない。もちろん何か所か上陸できる(撤収できる)場所もあり、無理をしなくてもいいのだが、ここまで来たらしっかりと出発した大原港まで行きたいというのが全員の意見だった。


フケガーラから豊原沖、豊原から南風見崎手前。ここまでは通常のツアーでも「けっこう風が強い日」で納得できるものであった。風速でいえば8m/sくらいだろうか。しかし南風見崎を回り込むと違った。明らかに12~15m/sは吹いている。スピードは出ないし、止まりもしないがギリギリ前進している感じである。満潮に近づいているのが救いで、岬を回り込むと沿岸側に進んでいき、大原港の入り口まで何とか行くことができた。潮をこれでもかと前からザブザブ被っていたので全身びしょ濡れである。

スロープに舟を皆で揚げ終わると、なんとも言えないため息の後に笑顔が溢れてきた。
今回のカヤックツーリングはこれにておしまい。記念写真を撮り終わるとすぐにカヤックの解体にとりかかった。







メンバーのうち、Tさんはこの後、奥さんが待っているという竹富島に行ってもうちょっと漕ぐというので石垣島までカヤックを持っていくことに(さすがにこの風で漕いで行くのはためらった)。そして男性のYさんもすぐにまた四国でカヤックを使用するということで超過料金を払って飛行機に乗せるという(後で聞いたら¥8,000ほどかかったらしい。安いと思うか、高いと思うかはあなた次第…)。
そんなわけでカヤックを送るのは女性のYさんのみ。僕のは後日洗ってたたむので皆があくせくパッキングしている間に昼食のラーメンを作っていた。


ラーメンも食べ終わり、パッキングも終わると車に荷物を放り込んで先ほど通過した南風見田浜にあるキャンプ場に向かい、そこでテントを張ってまったりしてもらおうということにした。



ツアーとは別件で、実はちょうどこのツアーの日程で友人夫婦が来島しており、僕らがバックカントリーから戻ってきてキャンプ場泊になったので合流しようということになっていた。彼らをスーパーでピックアップして再びキャンプ場に向かう。

彼らは徳島県吉野川の支流である貞光川で現在カヌーや沢登、キャニオニングなどの川遊びをメインに冬はスキーなどを提供している、いわば同業者。屋号を「Trip」という。何度かこのブログにも登場しているからご存知の方も多いはず。なによりなんとなく名前がうちに似ている。


  ◎Trip 四国の川の案内人:http://www.trip-yoshinogawa.com/


オーナーの牛尾健は僕と同い年。「瀬戸内カヤック横断隊」で出会ったのがきっかけだが、共通の知り合いも多く、なにより「魚突き」というマニアックな趣味をお互い楽しんでいたので気が合った。

奥さんの愛子さんもガイドを務めるがガイドには珍しくフィールドの地元出身。でもそれほど地元色を濃く出しているわけでもなく、二人していい意味でふらふらと放浪している。

また、一つのジャンルに囚われず、色々なフィールドの様々な遊びを提供しているのが僕個人の印象として好印象だった。ゆるい空気感が一緒にいて抵抗なく、ありがたい同業者の友人たちである。

そんなわけで旅の打ち上げと、友人たちの合流があり、ツアーのお客さんは他のアウトフィッターと交流も持て、この夜は豪勢にも初日見たけど食べられなかったヤシガニを茹でたものと、イノシシのスペアリブを炭で焼いて、キャンプ場も我々だけの貸し切り状態だったので、やんややんやと楽しんだ。





翌日は雨である。確かに雨は降ったが時折やむこともありそれほど劣悪な状態ではなかった。しかし次第に風も強まり、夕方には暴風雨になってしまった。なんとも良いタイミングでツアーを終わらせたものである。


午前中はクーラの洞窟に牛尾夫妻とともに6名で行く。ショートコースのお手軽なトレッキングと洞窟だが、森の中にぽっかりとあいた琉球石灰岩にガジュマルが蔓延り、気根が垂れ下がっている景観は沖縄のジャングルならではのものではなかろうか。

「こんなお手軽に、こんな本格的な体験ができるなんてさすが西表だねぇ」


さすが同業者である牛尾夫妻はリサーチ的な着眼点でフィールドを楽しんでいたようだ。昼は豊原にある「字南風見」で昼食をとり、ツアーメンバーは昼過ぎの高速船で石垣へと帰っていった。


「カヤック旅→キャンプ場泊→洞窟」という昨年と同じ流れになったのは、やはりこの時期の特色なのだろうか??



季節の変わり目である11月初旬。天候は不安定でツアーを行いやすい季節ではないが、ころころと変わる天気の中で、どう旅(ツアー)を続けていくか?どこに行くか、何をするか、とても考えさせられる。頭を抱えてしまうシチュエーションにもなり、ガイドには辛いところだ。でもそれが逆に地形を読んだり、天気を考えたりするきっかけとなり、思慮深い行動を行うことになる。自らの力で旅をするカヤッカーには必要な能

力を身につけさせてくれる。今回は用心深く南海岸のみに留まったのであまり痛い目に合わずにすんだが、けっこうガシガシ漕げる3人だったのでもう少しフィールドを広げてもよかったかなとも思う。これも何もなかったからそういうことが言える訳で、兎にも角にも怪我も事故もなくクレームもなく(?)楽しんでもらえたようなので良しとしましょうかね。


フェザークラフトに限らず自艇持参のお客さま限定ツアーを今年度もやっていきたいと思っています。
できればファルトならではのツアーを西表に限らずおこなっていけたらいいなぁ。