前回、金英達氏の論拠は否定しましたが、当然まだどっちなのかは分かりません。
まぁ、放っておけば勝手に姓が氏になったわけで、戸籍謄本や戸籍抄本の交付を請求でも問題にならないということは、好きこのんでわざわざ届け出る人は実態として殆どいないとは思いますがね。

ってことで、今日も朝鮮総督府法務局編纂『昭和十八年新訂 朝鮮戸籍及寄留例規(朝鮮戸籍協会 1943年12月)』の中から、「朝鮮民事令中戸籍條規及朝鮮戸籍令 附記 第6節 氏の設定」の続き。
今回は続けて2つ。

【画像3】

【1424】
未就籍者も、昭和15年8月11日以後は其の姓と同じき氏を有す。

(19.5.47)(昭和15年4月22日各地方法院長、各支庁上席又は一人の判事宛 法務局長 通牒)


(第1244項掲出)


【1425】
氏設定に伴ひ名を変更する場合、氏届出期間を失する虞あるを以て、先づ氏設定届を先に為さしむるを適当とす。

(19.7.33)(昭和15年6月33日各地方法院長、各支庁上席又は一人の判事宛 法務局長 通牒)


(第1134掲出)
嗚呼。
第6節しか入手して無かったよ・・・。_| ̄|○

まぁ、最初の【1424】はタイトルどおり、未就籍者も届出期限以降は姓と同じ氏を有するってことなんだろうけど、戸籍に載ってない人に関する規程って、何か意味あるんだろうか・・・?
次の【1425】については、創氏改名強制論者でも名前については強制ではなかったと認めている話。
尤もこれは、差別を残すせいとか阿呆な事言ってる人が居ますが、じゃあ皇民化政策って結局何やねん、と。(笑)
つうか、韓国でも親しい間では名前で呼び合うわけで、それが変わらなかった事に何の問題があるんですか、と。
どうせ話を作るんなら、もっと上手く辻褄合った話を考えて欲しいですな。(笑)

【画像3】

【1426】
無籍者の氏設定届は受理すべからず。

(19.7.33)(昭和15年6月3日各地方法院長、各支庁上席又は一人の判事宛 法務局長 通牒)


一乃至四(略)

五.無籍者の氏設定届は之を受理せしめざること。
これ、さっきの【1424】と関連しそうに見えますが、多分未就籍者の場合父又は母の戸籍に入る予定がある者を指し、無籍者は本当に戸籍が無い者になるのかな?
日本の戸籍法だと、無籍者については新戸籍を編製する事になってますが、朝鮮戸籍令ではどうだったんでしょうねぇ。
いづれにしても、無籍者の氏設定届は受理しない、と。

【画像3】 【画像4】

【1427】
名の変更許可申請の理由と異る氏の届出あるも受理差支なし。

(19.7.33)(昭和15年6月3日各地方法院長、各支庁上席又は一人の判事宛 法務局長 通牒)


首題の件に関し、京城地方法院開城支庁判事より、別紙甲号の通照会あり。
同乙号の通回答したるに付、為参考通知す。


(甲号) 氏設定名変更に関する件 (昭和15年5月27日法務局長宛 開城支庁判事照会)

首題の件に関し左記事項疑義有之に付、如何に取扱ひ可然哉、至急何分の御回示相仰度此段稟伺す。

一.氏の設定届出前、「平山」なる内地人式氏と定めたき理由あるを以て名変更許可申請を為し、之が許可ありたる後氏設定届を同時に提出するに■り、名変更許可申請書記載の氏、即ち「平山」なる氏と異なる例えば「松本」なる氏設定届を為す場合、之が氏設定届は受理し差支へなきものと思料せらるるが如何。

二乃至四(略)


(乙号) 氏設定名変更の取扱に関する件 (昭和15年6月3日開城支庁判事宛 法務局長回答)



一.差支なし

二乃至四(略)
氏設定届けを出す前に「平山」っていう氏にしたいからという理由で名の変更許可申請を提出し、その許可後に氏設定届けを理由とは異なる氏で出した場合、その氏設定届けって受け取るしか無いと思うけどどうよ?という疑義に対して、うん、そうだね、と。
まぁ、珍しい事例ではあるんでしょうな。

【画像4】

【1428】
在外帝国公館に於て、法定期間内に受理したる氏設定届の送付を受けたるときは、期限経過後到達するも受理すべし。

(19.11.49)(昭和15年9月18日各地方法院長、各支庁上席又は一人の判事宛 法務局長 通牒)


在満帝国大使館に於て、法定期間内に受理したる氏設定届を本府外事部長経由の上、本籍地府邑面に送付したる処、期限経過後到達したるの故を以て之を返戻する向少からざるも、右は朝鮮戸籍令第49條に依り適法の届出なること勿論なるを以て、自今斯る不当の措置なき様留意せしめられ度く、尚昭和14年朝鮮総督府第221号第3條第1項但書の規定に依る戸籍記載の更正は、氏設定を為さざりしこと明なる場合に非ざれば之を為し得ざること勿論にして、従ふて本籍地外居住者に付ては当分の間更正を為すべきものに非ざるも、若し既に斯る更正を為したる後、前記の如き氏設定届書の送付を受けたるときは、職権に依る戸籍訂正の手続を執らしむる様、管下府尹邑面長に相当指示相成度し。

追て自今在外帝国公館に於て受理したる戸籍届書類を返戻せんとする場合に於ては、先づ之を監督裁判所に提出せしめ、監督裁判所に於て其の適否を調査したる上、本府外事部長経由返送せらるる様致したし。
もう既に、氏設定期間を過ぎた9月18日の通牒ですんで、面白くはならないようで。(笑)

まぁ、長々と書いてますが、要は在外公館で期限内に受け付けた届けが、自分のとこに到着したのが期限後だからって返戻すんな、と。
更に、朝鮮以外で朝鮮民事令の改正等が周知徹底されているかといえば、恐らくそうではないわけで、氏設定をしない事が明白な場合に戸主の姓をそのまま氏とするんだから、本籍地外に住んでる者が氏設定届を出したら、職権で戸籍訂正の手続きをとる様に管轄の府尹邑面長に指示しなさい、と。
半島外在住朝鮮人に対する緩和措置ですな。

で、手続き方についても、在外公館で受け付けた戸籍届書類を返戻する場合は、監督裁判所で審査を受けてから返送しろ、と。
お役所仕事防止。(笑)


さて、今日はここまで。
次回で再び一旦休載予定。



朝鮮民事令と第11条の第1回改正
朝鮮民事令第11条の第2回改正
朝鮮民事令第11条の第3回改正(一)
朝鮮民事令第11条の第3回改正(二)
朝鮮民事令第11条の第3回改正(三)
朝鮮民事令第11条の第3回改正(四)
朝鮮民事令第11条の第3回改正(五)
朝鮮総督府編『朝鮮の姓』より
朝鮮人の氏名に関する件
高元勳
朝鮮戸籍及寄留例規(一)
朝鮮戸籍及寄留例規(二)
朝鮮戸籍及寄留例規(三)
朝鮮戸籍及寄留例規(四)