風邪引きなのに、私事でかなり多忙。
久しぶりに一ヶ月2回目のお休みをしてしまいました。
まぁ、色々ありまして。(笑)

さて、本題。
今日はまず、前回の冒頭で提示した『機密第20号』に対する陸奥宗光から井上馨への返信、1895年(明治28年)4月1日付『機密送第16号』より。

義州電信線の義に付ては、3月1日付機密第12号を以て申進置候次第も有之候処、右に対し同9日附機密第20号を以て御回答之趣了承致候。
朝鮮電信線譲受之義に付ては、既に3月1日附機密第13号を以て委細申進置候通り、此際是非とも我政府に於て管理致候様致度考案に付、義州線之如きも同様我手に入置候様致度存候。
此度御申越之如く、従来事実上清国政府に於て管理し来いたるには相違なきも、既に明治18年訂結に相成たる日韓電信條約に於て、義州線は朝鮮国の所属たることを認め、且朝鮮政府より清国政府に対し、年賦を以て右建設費の幾分を既に辨償したる義に候得ば、該線の全体を清国政府之所有と看做し、戦利品として之を没収することは、穏当の処置には有之間敷候へ共、去りとて従前之通り据へ置候事は、是亦我国の為め大に不利益と存候。
就ては、朝鮮政府より昨年年末迄に既に清国政府に辨償したる3万余両は、此際帝国政府より之を朝鮮政府に辨償し、而して朝鮮政府に於て尚清国政府に対し負担する残額に付ては我政府に於て之を引受け、其報償として従来清国政府が該線に関し有したる総ての権利義務を、帝国政府に移転致候様取極度存候。
将又、清国政府は関係に付ては既に申進置候次第も有之候通り、平和條約締結之際相当之取極を設け候様致度存候。
要するに、義州線を我手に入置候義は、将来之為め極めて必要の事に有之候に付、朝鮮政府に対しては可然御談判之上、承諾致候様御取計相成度、此段申進候也。

追て
右は逓信大臣とも協議済之義に付、此段御含置有之度候。
『機密第12号』は3月21日のエントリー、『機密第13号』については3月23日のエントリーで取り上げたもの。

戦利品という考え方については、義州電信線は実態は兎も角として名義上は朝鮮のものであり、借金も返しつつあり、清国の持ち物ではない事から戦利品とするのは無理という井上の指摘を、妥当だと思ったようですね。
しかしながら、やはり従来のとおり据え置く事は日本の不利益である、と。

ということで、負債の立替を日本が行い、清国から権利譲渡を受ける方向へと方針が転換されたわけです。
次第に、井上と日本の意識が接近してきましたね。(笑)

で、今回までの史料から個人的な感想を述べれば、陸奥の拘っているのはきちんと保安管理された電信と共に、清国と朝鮮の条約そのものにもある気がします。
借金が絡んでいる以上、日清戦争前の「商民水陸貿易章程」の破棄要求のようにはいきませんし。
まぁ、余談。

続いては、前回の『機密第26号』への回答督促と、日清戦争後の対韓政策について、井上からの1895年(明治28年)4月8日付『機密33号』。

鉄道電信條約案要項に付、去月24日附機密第26号信を以て本官の意見具申し、何分の訓令相仰ぎ置き候。
右條約に付ては、追々及具申候通り、当政部内に国権及び国利を主張する者多く、議論兎角一致せざる由に候処、数日前外務・内務・工務3大臣を以て調査委員と相定め候趣に付、遠からず閣議を一定し、我と協議を開くの運びに立至り可申と存候間、前記機密第26号信に対し、可成丈早く回訓相成候様致度候。
将又、日清両国の間愈々平和に相復したる場合に於ては、独り鉄道電信條約に限らず、一体我が朝鮮に対する将来の政策は、此際其方針竝に干渉の厚薄等確定相成り候事必要と存候。
抑々日清両国の開戦は、本と朝鮮の独立問題より興り、我天皇陛下は既に之を内外に宣言せられ、且我政府より独手朝鮮政府を改良する云々諸政府へ対し放言したるに付、改良を忠告するのみならず改良の実に干渉したり。
故に、本官は最初より朝鮮政府に対しては、常に独立を鞏固ならしむるの実を挙げしめんと断言し干渉をなしたり。
然るに、今日となりては多少の変態を考究をせざるを得ざるは、先般の貴電にて「魯政府は、名実とも朝鮮の独立を毀損す可からずとの一條を以て日清平和條件の骨子と為す旨」御内報有之、且又近来各新聞の所報に拠りて判断するに、日清事件に対し、英国も魯国と内々其意を合せたるやに被疑候。
然るときは、向後朝鮮独立の能く保全せらるると否とは尤内人の注目する重要問題と相成り、諸強国は、之を以て他日我対韓政略を拘束する唯一の鎖鑰と為すに立至るべくと存候。
従来我対韓の方針は、清国の干渉を根底より芟除し、名義及び事実の上に於て朝鮮の独立権利を保全するに在りて、之が為め兵力を以て清国を斥け、朝鮮をして略ほ独立の姿を為さしめたれば、各国共に我大義を尊敬するは勿論に候得共、唯同国をして内政を整理して独立の基礎を鞏固ならしめ、并右鞏固に至る迄内外の患害を被る事なからしめんとするには、将来朝鮮国は富強に赴き、自ら其国を守るに至る迄は、我が国の義務として之を保護せざるべからず。
左れば、鉄道も我より之を架設し、電信も我にて之を管理し、且又守備兵も旧に仍て之を存置せざる可からず。
加之朝鮮目下の形勢は、実に腐敗の極度に達し居れば、内政理上勢ひ多数の顧問官を採用せしめ、強迫的に之に干渉せざる可からず。
然るに右鉄道の建設と云ひ、電信の管理と云ひ、且又内政整理の干渉と云ひ、孰れも多少朝鮮の独立権を損傷するに相違なきに因り、局外者をして我は表面朝鮮の独立を唱ふれども、其実之を属隷とする野心ありとの疑を懐かしめ、即ち我宣言と事業と相矛盾せりとの擬論を受くるを免れざるべし。
左候時は、之が為め他日諸日諸強国の容喙を招くに至るも難計に付、差当り左の3件に付我政府の方針を確定相成度候。
これまでの史料のとおり、鉄道・電信条約は朝鮮政府内でも反発が強く議論も一致していなかったけど、近々ようやく一定の方針を決めて協議に入れそうだから、前回の『機密第26号』に関しての対韓方針を決めれ、と。

で、元々朝鮮を独立国にするのが目的なわけなんですが、内政を整理し、外患内患を除くために富強しなければならず、鉄道もひいてやり、電信も管理してやり、守備兵も置き、朝鮮は極度に腐敗しているので顧問官を宰相させ、半ば強制的に干渉しなければならず、要は独立国として一人前になれるまで日本の保護が必要ってことですな。
その矛盾を局外者・列強諸国に誤解され、容喙を招くかもしれない、と。

独立国に価しない国を、独立国扱いするからだ。(笑)

一.守備兵排置の件
朝鮮を以て完全の独立国と認むるときは、日清両国平和に復し日朝の同盟已むの日を以て、我が在韓の兵を撤去するは(或は我官民保護の為め若干を留め)当然なりと雖ども、現今の版況は、我兵一旦撤去の暁には、東学党又は地方官従来民産を掠奪の怨恨を堪へず、名を東学に借り、再燃して国内の紛乱を致すは必然と思惟せられたり。
尚、一層注意を要するは、従来の現在兵凡1万人斗勿論悪弊多く、且用に立つ可き見込なきにより、帰休兵となすの見込。
其他在京無用の官吏幾百人、地方に於ては監司所在地を除き、府郡縣州凡327ケ所にて役員2万2,300余あり、改良の為め官制を定めしむるに付ては、凡1万6,000有余の廃官吏を生じ候。
就ては、多少の変動は免がる可からざる事と被信候。
如何にも急激なる改革着手と御驚愕に可有之候得共、財政の不充分と積弊を矯正せんとするよりして、止むを得ざる次第に有之候。
依て、我兵をば平和の後に至ても其儘駐屯せしむるか、若くは一旦撤去と決定し、而して朝鮮政府の依頼を待て之を駐留せしむる事と為す可き也。
おお!
ようやく守備兵が!と思ったら、所謂電信守備兵の話じゃなかった。(笑)

「日清両国平和に復し日朝の同盟已むの日」とは、去年の5月18日のエントリーで取り上げた、日朝盟約の第三条、「此盟約は、清國に對し平和條約の成るを待て廃罷すべし」の事でしょうね。

攻守同盟が切れれば、当然兵を置く必要性は無くなるけど、まだ東学党や地方官吏への恨みで蜂起する等の国内紛乱が起きるのは必然。
韓国の兵士は悪弊が多く役に立たないので、帰休兵とする見込み。
その他、中央・地方の無駄な人員を整理すれば、1万6,000有余が失職。
急激な改革に見えるけど、財政と旧来からの弊害を取り除くためには必要な事である、と。

ってことで、講和後も日本兵をそのまま駐屯させるか、一旦撤去し、その後朝鮮政府の依頼として駐留させるかすべきだって事ですね。

一.鉄道電信條約の事
本件に付、機密第26号信を以て鄙見委曲申進候に付、熟と御詮議相成度候。
右に付進々申進候通り、訂約に至る迄は非常の強迫手段を要する事と致推量候処、右強迫手段は到底秘密を保つ事能はず、我は之を秘密にせんとしても、彼方にては困迫の余り、少くとも英・米・魯の3使臣へは内々相談を試むるに相違なく、左候時は外見上甚だ宜しからず、且又当国人は邪推強く、猜疑心深き方なれば、我国は野心を包蔵すとの観念は今に至迄心裏に消滅せず。
故に、彼我両国の間に困難事件の生ずる毎に其疑心悤ち増長して、処辨上に妨害を与ふるは、既往に徴して明なる事に有之候。
依て、其辺をも併せて御再考相成度候。
鉄道・電信の二つの条約については、今のままでは強迫手段が必要となるけど、それをすれば朝鮮はイギリス・アメリカ・ロシア等に相談するに違いなく、外見上非常に宜しくない、と。
先ほどの「その矛盾を局外者・列強諸国に誤解され、容喙を招くかもしれない」と同義ですね。
で、朝鮮人は邪推が強く、猜疑心も深いので、日本は野心を抱いてるに違いないnida!という観念は、今でも消えていない、と。

つか、現代と変わらないわけですが。(笑)

一.内政改革の事
右は、改革の目的を達せんとするには、今日迄の如く深く之に干渉し、一方には、大院君・王妃等の動もすれば妨害を為さんとする者を押へ置き、他の一方には施政の方針を立て、規画を授け、且つ我顧問官を薦用せしめ、恰も手を取らぬ斗りの世話をなさざる可からず。
然るに、局外者より之を観るときは、右等の干渉を以て朝鮮の独立権利を毀損すと為すも難計と存候。
依て、其嫌疑を避けんが為めに、向後は改革の成否には深く頓着せず、干渉の手を縮めて、朝鮮政府の自行に任ずべきや、若くは我政府は、朝鮮の内政改良を以て既に内外に宣言したる事なれば、改良を成功せしめんが為興る所の干渉は、多少深入するも差支なしとするか。

已上3件に付、至急我政府の議御確定相成り候様致度、此段及内申候也。
内政改革に関しては、今までは深く干渉し、一方でそれを邪魔する大院君や閔妃を掣肘し、また一方で施政方針や企画を与え、顧問官を採用させて手取足取りやってきたが、これは朝鮮の独立権利を毀損すると見なされるかもしれない、と。
で、その疑いを避けるため、今後は改革の成否にはあまり頓着せず、干渉も少なくして朝鮮政府に自分でやらせるか、改革を優先するために多少深入りする事も仕方ないとするか決めてくれって事ですね。

まぁ、日清戦争の終結を睨んだ動きが、あちこちに見られてるっぽいですなぁ。


ということで、今日はこれまで。



電信守備兵(一)
電信守備兵(二)
電信守備兵(三)
電信守備兵(四)
電信守備兵(五)
電信守備兵(六)