振付師ロリ・ニコル氏が今季浅田真央選手に与えたショートプログラムが「滑っているだけで元気が出るようなプログラム」であるI Got Rhythm。
今までどちらかというとSPは浅田選手にとって鬼門でした。対してキム・ヨナ選手はどちらかというとSPの巧者で、SPで点数をがっつり稼ぎながらFSでこけてもSPの貯金で逃げ切った試合もありました。フィギュアスケートは総合得点で競うスポーツですから、いかにSPという出だしが大切か、考えさせられますね。
先日仙台で行われたNHK杯の浅田真央選手のSPは久しぶりの会心の演技でした。ファンの方から見たらジャンプやスピン、ステップといった要素よりも、あの演技直後の浅田選手自身が自分の演技に納得できたような表情の方が印象に残ったのではないでしょうか。
プログラムのオープニングから3Aをはずして2Aで固定したことで、精神的な負担という重石の外れ、彼女が本来持っているのびやかで、且つ軽やかなスケーティングが戻ってきたように見えますし、またそれは、ポニーテールを揺らしながらお姉さんである舞さんのおさがりのオレンジ色の衣装を着て「カルメン」を滑っていた頃の、怖いもの知らずだった頃のスケーティングを彷彿とさせます。ただしあの頃よりもぐっと洗練されていますけどね。
またこのようにしてSPの完成度が高くなることによって、FSで3Aを入れる余裕が出てくるという利点があります。SPで点数を稼いでおけば、FSで3Aを入れて仮に失敗しても総合得点はそれなりに高くなるでしょう。
ただ今季の浅田選手のFSのジャンプ構成だと、SPである程度貯金をしてもFSでジャンプミスが出てしまうと表彰台の真ん中はきついはずです。このジャンプ構成についてはまた他の記事に譲ります。