朝食業務が終われば中抜け時間になる。温泉の清掃時間があるので直ぐに温泉には入れず、一旦寮に戻って部屋で過ごす。近所を散歩しようと思ったがとにかく寒い、無駄に歩き回りたくない程寒いから散歩は止めた。寮の部屋でゆっくり読書が出来る、これぞ湯治。この湯治場では食事が朝夕2食だったのでお昼は食事が付かない。あらかじめちょっとした食料は持ち込んでいたのでお腹が空いたらつまむ。午後になり温泉の清掃時間が終われば早速温泉を楽しむ。実質昼間の時間が一番のんびりと温泉を楽しめる時間なのでゆっくり味わう。内湯はいくつかあり、温度がそれぞれ違うのでぬるいお湯や熱いお湯にその日の気分で使い分けて浸かった。

 

 夕方の部は16時に社員食堂で夕食を食べて16時半から仕事が始まる。夕食を早い時間に食べることが出来るのはありがたい。夕食の仕事はまずバイキングのお料理を並べる、種類が70種ほどあるので何処に何の料理があるかを見ながらお料理を並べる。その後レストランがオープンすればお客様をお席に案内して簡単なバイキングの説明をする。最初の1,2時間はお客様の席案内を繰り返し、ある程度落ち着いて来たら下膳が始まる。初日と2日目はそれほど忙しく無かったのでこの間にしっかりと動きを覚え、本番は大晦日から始まる。大晦日になるとレストランが長蛇の列になり、テーブルも2回転させなければならないので素早く下膳をして次のお客様をご案内しなくてはならない。夜の部はインカムを付けてインカムから仕事の指示が飛んでくる。会場が広くお客様で溢れるともはやスタッフの誰が何処に居るかもわからない。たまに洗い場で同僚のお姉さんに会うとお互いホッとして「元気だった?」など声を掛け励まし合う。どんなに忙しくても心は客室乗務員、落ち着いて笑顔で下膳を続ける。

 

 ラストオーダーが終わり、お客様が帰ったら全員で後片付けをする。後片付けが終わると1日が終わる。21時から22時の間に業務が終わり、そのまま温泉に向かう。仕事後の温泉は特に気持ちが良い。夜の時間帯はお客様も従業員も居るので賑わっていて、私はササっと済ませる。昼間にゆっくり落ち着いて温泉を楽しみ、夜は早めに済ませる。


 2日目から朝風呂は止めた。そして2日目以降足が痛くなり始めた。制服一式と靴も新品を支給されたのは良いのだが新しい靴は固く足に馴染まない、その上ひたすら歩く仕事だから靴擦れが出始めてしまった。こういう時は履きなれた自分の靴が良いのに。お姉さんも同様で直ぐに靴を誰かが履き古した中古品に取り換えてもらっていた。私はお姉さんがくれた絆創膏で乗り越えた。2日目以降は毎日の生活スタイルが出来て日に日に慣れてきた。初日と2日目までは夜もあまり眠れず、食欲も少な目だったが3日目以降は賄いもおかわりするほど食欲も回復していた。仕事は常に歩き回るので足が疲れるが温泉効果もあって疲労は溜まらないからありがたい。社員食堂の1日2食の食事は、朝食は前日夜のバイキングで残ったお料理が多かった。夜は揚げ物が多く、トンカツ、唐揚げ、コロッケ、魚フライなど。大晦日だけは夕食がお刺身で豪華だった。年明けの2日以降はお雑煮やお節も出て少しはお正月気分も味わえた。