哀•弾丸•愛、7人の刑事たち!

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刑事ドラマの名作、「特捜最前線」について書く。同作の中で最も評価が高いものとして、昭和59年に放送された「哀•弾丸•愛、7人の刑事たち!」(脚本:塙五郎、監督:辻理)の2部作が挙げられる。今回はその2部作を文章形式で書いて行こうと思います。

昭和59年卯月、都内にある大手都銀東都銀行が、強盗に襲撃を受ける。犯人は行員、取引先の関係者ら10数人を人質に籠城、強盗は、同銀行を襲撃した後、抵抗した警備員(加藤武)を銃撃、同警備員に重傷を負わせた末、実に半日以上もの間抵抗を続けている。負傷した警備員、人質共々、肉体的、精神的な疲労は限界に来ており、捜査を統括する警視庁•特命捜査課にも次第に焦燥感が広がり始める。そうした中、武闘派の吉野巡査長(誠直也)は、神代警視正(二谷英明)に強行突入を進言、捜査員、人質、犯人、それぞれが時間との戦いを迫られる中、神代も次第に強硬策に傾く。 犯人の氏素性は早い段階で判明している。強盗の名は花田精治(中西良太)、窃盗の前科があるケチなチンピラで年齢は20代後半から30代前半と見られる。籠城事件は、花田単独の犯行と考えられるが、襲撃の手際の良さや半日以上も籠城を続けながら、眉一つ動かさない精神力は、単純に社会の不適合者の凶行とは侮れない怖さを感じる。

そうした中、花田は何故か、渋谷のある喫茶店のブルーマウンテンが飲みたいと要求をし始める••• 立て篭もりを続ける花田に、次第に睡魔が襲い始めた兆候なのか、あるいは人質を手中にしていることからくる“挑発“なのかはわからないが、強行突入するとすれば、コーヒーを受け渡す、このタイミングしかない❗️

そうした中、紅林警部補(横光克彦、元民主党•衆議院議員)が、喫茶店のマスター•広川さん(北村総一郎、後の湾岸署署長でもある)を連れ現場に舞い戻る。広川さんは、花田が要求したブルーマウンテンを所持している。 コーヒーの到着を受け、現場のやや正面に陣取っていた船村警部補(大滝秀治)は、コーヒーが到着したことを犯人につげようとするが、拡声器を構えた次の瞬間、船村の左胸部に強烈な痛みが走る。持病の心臓発作が再発したのだ。船村は、発作を抑制するための常備薬に手を伸ばしたが、常備薬のケースの中は空で、その間に船村の痛みは次第に大きくなって行く。 傍に寄り添っていた桜井警部補(藤岡弘、)は、船村の異変を察し、常備薬は自宅に出向いて取りに行くと申し出るが、船村は、発作の再発を伏せるよう、桜井に懇願する。幸い、発作は短時間で収まり大事には至らなかった為、桜井はこの事実を伏せたが、船村が発作の再発を隠したことが、後にとんでもない事態を引き起こすことになる❗️

船村が心臓発作の再発を告げなかったのは理由がある、船村は警視庁きっての豪腕である傍、心臓発作の持病を抱え、齢は既に50代後半に差し掛かっていた。昭和50年代における50代というのなは、年齢的には晩年 と言った趣がある。 そうした、肉体的な衰えを背景に、船村は数カ月前から、警察庁の大江刑事局長(御木本伸介)から、現場を退くよう、陰に陽に促されていた、仮に発作の再発が公になれば、それは刑事としての限界を迎えたと見なされる。

陣頭指揮を執る神代は、花田が指定したコーヒーと同時に、花田と人質への食料を同時に配布する考えを捜査員に告げる。強行突入は、花田が警戒心を緩めるその間隙を付く形で決行、決行時間は午前7時30分Just、各捜査員には、決行に向け配置に着くよう指示した。

神代の指示を受け、各捜査員が配置につく。船村は、裏口からの狙撃を命じられ、ここで相方が桜井から叶警部補(故人、夏夕介)に交代となる。一方、花田が要求したコーヒーは、看護師の姿を装った高杉婦警(関谷ますみ)が届けることになった。高杉婦警の役回りは囮になることと同義語で、女性ならば警戒心は薄くなると考えた判断ではあるが、捜査員の中では最も危険な役回りだ❗️ 一方、裏口からの狙撃を命じられた船村と叶は、非常階段からの潜入を試みるが、非常階段を軽妙に駆け上がって行く叶を尻目に、船村の息はあっと言う間に切れて行く。刑事という仕事がわかってきたことと反比例するかのように、身体は次第についていかなくなる。発作の再発以上に、叶の若さは、船村の置かれた現実を見せつける。

船村と叶が配置についたことを確認すると、神代はコーヒーと同時に、花田と人質全員の食料を差し入れる旨を拡声器で告げる。花田は食料の差し入れに不服だったが、軟化し、それを受け入れる。看護師を装う高杉婦警は、負傷した警備員の治療をさせて欲しいと花田に申し出る、花田はこれにも不服だったが、高杉婦警が



「このまま放置しておけば死ぬ❗️ あなた人殺しになりたいんですか?❗️」



そう訴えると、心なしか躊躇したかのような表情を見せ軟化した。花田にしても、人を殺めることについては、良心がやはり咎めるのか•••?!

正面のシャッターが僅かながら開かれたことで、強行突入に向けての舞台設定は少しずつ整いついあった。高杉婦警が負傷した警備員の応急処置に入ると、花田は、余程コーヒーが飲みたかったのか、傍らにいた女性行員に、コーヒーを淹れるよう命じる。花田の視線は、既にコーヒーに移っており、後は捜査員らが手筈通り動ければ確保は時間の問題だ。一方、裏口に控えていた叶は、狙撃は自分がやるから、仮にしくじったら親父さんにサポートして欲しいと申し出るが、船村は、狙撃は年長の自分がやると退け、




「これはっ、訓練とは違うっ❗️」




と叶を一喝する。

そして、高杉婦警の潜入からやや間をおいて、中華料理店の店員を装った吉野が食料の配布に現れる。吉野は、配布を終えると手元の時計に目をやり、正面に控えていた神代と目配せを交わす。次の瞬間、吉野の手元の時計は、決行時間である7時30分を指した。その瞬間、吉野は所持していた台車型の岡持ちをシャッターの下に差し込み、正面シャッターの降下を防いだ。吉野の早業に、同じく正面に控えていた神代や桜井らが後に続き、捜査員らの弾かれたような早業を前に、花田の狼狽は明らかだった。だが、 追い詰められた花田は悪いことに、間隙を縫う形で逃亡を試みた女性行員と高杉婦警に銃口を突きつけ、最後の抵抗を試みる。ただ、花田が人質に危害を加える可能性については、神代も想定済みであり、その為に裏口に船村と叶を配置したのだ。花田の視線が正面突破に釘付けとなっていることを尻目に、裏口から潜入した船村は、背後から銃口の先に花田を捉える。これだけの至近距離なら、万に一つも討ち漏らすことはない。だが、花田を射程圏内に捉えた船村は、何故か銃口を下ろしてしまう。この船村の不可解な躊躇いは「高い代償」を伴うことになる。船村が狙撃を躊躇ったことで、女性の行員が逃亡を図ったことに逆上した花田は、行員と高杉婦警に向け銃弾を発砲。船村の躊躇いが、花田に時間的な猶予を与えてしまったのだ。 花田は、少し間をおいて潜入した吉野に取り押さえられたが、銃撃を受けた女性行員は即死、既に心臓が停止している。同じく銃撃を受けた高杉婦警の重傷をも招いた。

花田は既に確保され、身柄は渋谷にある特命室に移されようとしていたが、死傷者を出した以上、突入作戦は成功だったとは言えない。警察全体にとっても、この事件は痛恨の出来事だ。同時に、狙撃を躊躇った船村と叶の失態は明白だった。

呆然と立ち尽くす叶に対し、吉野は強く激昂。




「何故撃たなかったっ?! 何のために拳銃持ってんだっ?!」






吉野は、放心状態となっていた叶を激しく殴りつけた。代償を伴ったとは言え、花田の確保により、捜査は一応の解決を見た。花田の犯行動機、共犯の可能性の有無が残されたままだが、皆目わからないのが、花田を射程圏内に捉えながら土壇場で狙撃を躊躇った船村の真意だ。心臓発作の余波?! 発作が直接的な原因とは考えられない、突入の段階で発作は既に収まっていたからだ。

To be continued


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