人気刑事ドラマ「相棒」Season3・第11話「ありふれた殺人・時効成立後に真犯人が自首」(脚本:櫻井武晴、監督:和泉聖治)について再度書く。


時効のため迷宮入りになった20年前の殺人犯・小見山勇司殺害を巡り、捜査は思わぬ方向にシフトし始める。20年前、同事件を手掛けた警視庁・捜査2係の港刑事(清郷流号)に疑惑が浮上したためだ。かつて、坪井聡子の母親(吉村実子)を自殺未遂から救った恩人による"義憤殺人"の浮上。誰もが望まない結末が現実味を帯びる中、警視庁・特命係の亀山巡査部長(寺脇康文)は終始うつむき加減でいたが、相棒の杉下警部は、









「君は逃げる気ですか?!」







と、弱気になっている亀山を叱りつけ、警察官はご遺族のご無念を第一に考え、せめて我々だけはご遺族のお心に最後まで寄り添うべきではないのか、それなのに君が逃げていてどうするのかと亀山を諭す。 杉下は亀山を叱咤激励すると証拠物件である2つの指紋懐から取り出す。一つは身柄が既に捜査一課に移された港刑事のもの、だが、2つ目の指紋の主は依然不明だった・・・ 口ぶりから察するに杉下はすでに真犯人の目星をつけたようだ。となると、真犯人はこの2つ目の指紋の主と言うことに・・・ 杉下の推理を裏付けるように、捜査一課から観察に身柄を移された港刑事は謝罪は要求したが殺人については頑として否定し、監察官の大河内(神保悟志)を手こずらせていた。

杉下に促され特命係の二人は真犯人検挙に向かったが、そうした中、小見山事件の善後策を講じる為、小野田官房長(岸部一徳)が警視庁を訪れていた。杉下と亀山は官房長に一礼し捜査に向かおうとしたが、官房長は二人を引き留め現実重視の官房長は時効の現実の前ではすべては無力、気休めにしかならないのでは、と二人を諭すが、一言居士の杉下は反駁するかのように、







「だとすると、時効という制度にも、限界が来たのかもしれませんね!」






そう一言言い残すと、ある場所へと足を延ばした、二人の行き先は小見山が殺害された例のアパートだった。二人の到着と時を同じくして、例の鈴木(正名僕蔵、最近では「夜明さん、夜明さんはもう現役じゃあないんですよー」に出演している)という三橋系の隣人が帰宅した。4度目の来訪に、鈴木は明らかに不機嫌な様子だ。その鈴木に、杉下は最後に確認したいことがあると切り出し、既に刑事の顔に戻った亀山は「殺害された小見山とは交友がなかったというのは確かか?!」と問い詰め、ならば小見山の部屋に入ったこともないはずだなと語気を強める。鈴木はその何れについても疑惑を否定するがなぜか杉下らと視線を合わせようとはしない、どうやら杉下が目を付けた本ボシはこの鈴木という隣人のようだが、だとすれば殺害の動機とは何なのだろう?!

杉下は、殺害された小見山は大音量で音楽を流し続けていたと言っていたが、その音楽のジャンルは何かと鈴木に問う。鈴木は「クラシック」をレコードでさいせいしたものだと(主としてモーツァルト)だと即答する。だが、このレコードなる証言は、





「秘密の暴露(真犯人しか知りえない証言)」






であり、鈴木にとってはこれが致命傷となる。小見山は確かにクラシック愛好家だが、そのクラシックがレコードで聴かれていたことは部屋に入らなければわからない。鈴木は杉下らが最初に訪問した際に、この「秘密の暴露」をしており、杉下はこの言葉に疑いを持ったのだ。


杉下らの追及に、鈴木の表情からみるみる血の気が失せていく。鈴木はこの時点で"半落ち"だが、レコード云々は単なる言葉のアヤで断定はしていないと抵抗を見せるが、間髪入れず杉下は"二の矢"を即座に繰り出す。杉下が繰り出した二の矢は例の2つ目の謎の指紋で、杉下は疑惑を晴らすためにこの謎の指紋とあなたの指紋を照合してはどうかと持ち掛ける。 すると、やや間をおいて鈴木は完落ちする。 事の顛末はこうだ、あの夜、港刑事が帰宅した直後、鈴木は抗議のために小見山宅を訪れたが小見山は鈴木の抗議を一顧だにしないどころか、意味不明な言葉を口走ったため(小見山の意味不明の言動は20年前の事件からきたノイローゼの為だが、無論鈴木は知る由もない)、思わずカッとなり夢中で絞め殺してしまったのだという。警視庁を揺るがした殺人事件の真実は「復讐殺人」「義憤殺人」でもない、三橋系の隣人による私憤によるものだった。こうした私憤に基づく「時間差殺人」は劇場版の「X-DAY」等でも用いられている櫻井作品の「お約束」とも言えるが、とにもかくにも事件は解決を見た。






殺人を告白した鈴木は負け犬のなんとやらとも言うべき捨て台詞を口走る。









「俺の人生、パーだよぉ-! 弁護士としての将来がプァ一だよぉ-!」






鈴木はもはや「哀れな青年」といった趣だが、その鈴木に杉下はこう畳みかける









「貴方は、最初から弁護士になる資格などなかった、ただそれだけの話ですよっ!」








鈴木の逮捕により、時点は一応の解決を見た。だが、20年前の坪井聡子殺害を遺族と世間に公表すべきか否か、その課題は依然として残されたままだ。

To be continued

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