恋がしたい恋がしたい恋がしたい② 第1話 婚約者に逃げられた涼介がたまたま入った牛丼屋に集まった孤独な男女7人。 7人が出会った事で運命の歯車が動き始める。

 

 永島蜜柑(菅野美穂)は誕生日のその日、いつものように勤務先のホテルCentury Hyatt Tokyo を出たあと銀座の靴屋に立ち寄り、以前からずっと買いたいと思っていたお気に入りの赤い靴が一足先に別の誰かに買われてしまい、がっかりします。

 

 仕方なく、足の向くまま牛丼屋に入り、そこで夕飯を一人食べる事にした蜜柑。

 

 

 席に着き周りを見回してみると、数名の客が一人ずつバラバラに座っていました。

 

 

 2つ隣には、30代前半くらいの背の高い男性・赤井涼介(渡部篤郎)が座っていて、知り会いに片っ端から電話をしています。

 

 制服を着た男子高校生・青島渉(山田孝之)、主婦らしい女性・黄田織江(岡江久美子)、夜なのにサングラスをかけた紫村一郎(及川光博)が、少し離れた所で一人ずつ座っています。

 

 

 蜜柑は、注文を取りに来た店長・緑川文平(所ジョージ)に並盛一つを注文します。

 

 

 数分後牛丼が運ばれてきて食べ始めると、そこに一人の女・羽田藍(水野美紀)が入って来て座ったかと思うと、反対方向を向いて座っている一郎に向かって、悪い所があったら直すから別れ話を考え直してほしいと話を始めます。

 

 

 皆に聞こえる声で話しているのを当初周りの客は見て見ぬふりをしようとしますが、一郎が

 

 「お前と俺が釣り合うわけないだろう」

 

 と声を張り上げると、藍は怒って一郎に飲んでいたビールをぶっ掛けます。

 

 すると、怒った一郎が藍の顔を殴ってしまい、周りは無視できない空気になってしまいます。

 

 

 織江に目配せされた店長・文平が喧嘩は他のお客様に迷惑になるから、と止めようとしますが一郎はアンタらに関係ないだろうとスルーします。

 

 蜜柑もこれはマズイと感じ、左隣に座っている涼介に何とか言ってよ、と言わんばかりに目や手で合図をします。

 

 そして涼介の後ろに隠れるように逃げて来た藍を、涼介は庇う羽目になります。

 

 

 「ちょっとやりすぎじゃないですか。男が女の人を殴るのは良くない、ですよ」と涼介が説教っぽく話をすると、

 

 

 「学校の先公みたいだな」と開き直る一郎。

 

 

 「一応そうですけど…」と涼介が答えると、意外な返答に怯むものの

 

 「自分の生徒をちゃんと指導しないから、今の若い奴らがダメになるんだ」と一郎が切り返すと

 

 「それ、どういう意味? なんでアンタにそんな事言われなきゃならない?!」

 

 と只でさえイライラしていた涼介がカチンときて一触即発状態になります。

 

 

 すると、パチンと一郎は手を合わせて

 

 「ハイ、カット」

 

 

 とにっこり笑い、これが仕組まれた芝居だった事を告白するのです。

 

 

 どうしてこんな手の込んだ悪戯をしたのか涼介が問い詰めると、面白そうだったし興奮するから、と一郎と藍は言います。

 

 

 「それに、俺たちみんな、自分の役割を演じているわけだしね。」とシニカルに一郎は言い

 

 

 「あなたは教師の役を」と涼介を指し、

 

 「彼は真面目な高校生の役を」と渉を

 

 「彼女は貞淑な主婦を」と織江を、

 

 「彼は人の良い牛丼屋の店長を」と文平を見、最後に蜜柑を見つめながら

 

 「君は……何の役を演じてるんだっけ?」と問いかけ、藍と共に店を出てゆくのでした。

 

 

 バカップルに振り回されてアホらしくなった順に、渉、織江が帰ってゆき、涼介も店を後にしようとしますが、蜜柑が彼の荷物が残っている事に気付き声をかけて紙袋を渡すと、涼介はお礼を言って一旦受け取りますが、直ぐに引き返してきて

 

 

 「良かったら…俺が持っていても仕方ないしー(略)渡せそうもないし」といって蜜柑にその紙袋をあげるのです。 

 

 

 驚いた蜜柑は、袋に靴箱が入っている事を確認し中を開け、先ほど銀座の靴屋で買えなかったお気に入りの赤い靴が入っているのを見て、牛丼代金も払わずに、反射的に涼介を追って店を飛び出してしまいます。

 

 

 お礼を言おうと涼介を探しますが、見失ってしまい、仕方なくそのまま帰宅する蜜柑。

 

 

 涼介は、婚約者・黒木レイ子(小雪)が誕生日当日に失踪し、関係者に電話をしながら行方を捜していたのでした。

 自宅マンションに着くと、郵便受けに部屋の合鍵と、ありがとうのメッセージが入った封筒が入っていました。

 

 

 当惑しながら、レイ子の応答しない携帯に電話して、留守電に怒りのメッセージを残す涼介。

 

 

 帰宅した蜜柑は、自分の部屋で再度靴箱を開けて、涼介に貰った赤い靴を履いてみますが、蜜柑にはややサイズが大きい事が判明します。

 

 すると、箱の中にカードが入っていることに気付き、そのカードを開けてみると、

 

 

 「これから長い付き合いになるけど

 一生一緒に生きてゆこう」

 

 

 と書かれていました。

 

 

 赤の他人に書かれたメッセージなのに、直球な愛の言葉に感動してしまう蜜柑。

 

 

 翌日、涼介は何事も無かったように学校に出勤しますが、婚約者レイ子は職場の同僚でもあり、欠勤しているのを不思議に思った他の教員や教頭がいぶかしげに聞いてきます。

 

 結婚式の準備で疲れたための体調不良かもしれない…と言って、失踪の事実を隠す涼介。

 なんと予定通りに、レイ子抜きで式場の打ち合わせに行き、サイズ直しをしたウェディングドレスまで引き取って帰宅します。

 

 

 すると、玄関前の階段に、女性が一人倒れているのを発見して驚く涼介。

 

 触らぬ神にたたりなし…と思い、無視してマンションに入ろうとしますが、夜遅く倒れている女性をこのままにしておくのに罪悪感を感じたのか、涼介は倒れている女性に声をかけます。

 

 

 すると、昨日牛丼屋で会ったバカップルの片割れの女性・藍であることに気付きます。

 

 

 涼介は昨夜の芝居の件があった事で、また騙されて隠れている一郎が出てきてドッキリ、みたいなことするんじゃない?、と言いますが、怒った藍は立ち上がって、誰か適当な男の家に泊まるから、と投げやりに答え、その場を離れていきます。

 

 その様子に嘘はないと感じた涼介は、一晩だけ藍を家にあげる事にしたのでした。

 

 

 家のリビングにある結婚式の招待状や、1人でドレスを持って帰って来た涼介を見て、カマをかけてレイ子になりすまし電話をかけ、涼介に置かれている状況を完全把握した藍は、もうその婚約者は戻ってこないと思う、と話します。

 

 

 女性としての根拠を聞きたい涼介は、お腹のすいた藍の要求通りに牛丼を買いに行かされたり、屋上に上って夜空の月を眺めたり、傍若無人なマイペースの藍に振り回されますが、根拠はない、女だからわかるの、と言われる始末。

 

 

 しかも式までの僅かな時間で、彼女の気持ちを戻して式まで漕ぎつけよう、としている男の見栄まで見抜かれ、言いたいことをズバズバ言う藍に、ぐうの音もでない涼介。

 

 

 しかし時折見せる藍の寂しい表情に驚き、自分と同じ孤独感を見つけた涼介は、藍の話に聞き入ってしまいます。

 以前一郎と一緒に涼介のマンションの屋上に上って、二人で見た月がとても綺麗だったと、寂しそうにいう藍。

 

 

 一郎に、「今日、君とあの美しい月を観た事を、僕は一生忘れない」と言われ、何だか分からないが凄く感動したこと。

 

 そういう感動する一瞬一瞬の積み重ねが人間の幸せなのだと思う、と藍は言い、

 これからは、したい事を我慢しないで生きていくつもり、と涼介に宣言するのです。

 

 

 その後も藍は、翌日何処かに消えたかと思うと、涼介の勤務先の教室に突然現れて、レイ子から昨夜留守中に電話があった事、パリに旅立つと言っていた事を告げ、涼介を振り回し続けます。

 

 

 授業を抜けて空港に行く事を躊躇する涼介に、

 

 「過去は変えられないけど、未来は変えられるでしょ?」

 

 と、藍は涼介に行動する勇気を与え、レイ子を説得するため成田空港に向かうのです。

 

 

 しかし、結局レイ子は涼介の声を無視し、飛行機に乗ってしまいます。

 

 

 傷心で落ち込んでいる涼介に、藍は無神経にも、パリまで迎えに行けば情熱に絆されて彼女の気が変わるかも、

と言ってしまい、涼介の怒りが爆発してしまいます。

 

 

 傍若無人な藍の物言いに、藍がフラれたのは君自身のせいだ。

 君のような女と話しても男は不愉快になるだけだ、と言って一人で帰ってしまいます。

 

  

 

 一方、牛丼屋で会った、他の客たちも様々な孤独を抱えていました。

 

 

 専業主婦の織江は、夫や子供達の家族が自分の話をまともに聞いてくれず、空気のように扱われていました。

 

 寂しさを紛らわすため、町なかで貰った2ショット伝言ダイヤルの広告を見ながら、絵に興味がある24歳の客室乗務員ですと嘘をつき、伝言を残してしまいます。

 

 

 高校2年生の渉は性に興味のある年頃で、年上の女性と付き合いたいと思い、伝言ダイヤルのメッセージを聞いています。 

 母親と再婚相手の裕福な義父と3人暮らしですが、事ある毎に別れた無能な父親のようにはならないで、と説教をされているため、居心地の悪い気持ちを抱えています。

 

 

 牛丼屋の店長・文平は1人暮らしで、別れて暮らすアパートで子供の写真を飾っています。

 最近、(涼介に会うため)頻繁に来店するようになった蜜柑に興味を持ち、少しだけ潤いを感じはじめています。

 

 

 ある雨の夜、牛丼屋で涼介が来店するのを待っていた蜜柑は、偶然涼介が運転中に信号待ちをしているのを発見し、またもや代金を払わずに店を飛び出し、涼介の黄色い車を追いかけます。

 

 

 雨のなか、一旦は車を見失いますが、歩いている間に雨が止み、反対側の道路脇に黄色い車が停まっているのを見つけます。

 

 

 急いで道を渡ろうとすると、そこには月を見上げる涼介の姿が。

 

 

 蜜柑は、自分が恋をしている事を確信しながら、涼介の方に走っていくのでした。

 

 

 

 

 第一話は75分の拡大版で、主要な登場人物7人の紹介と、涼介・藍・蜜柑の関係性を表した回だったと思います。

 

  藍の直情型で素直すぎる性格が、苦手な人もいるだろうな、と私は感じましたが、彼女から出たセリフは正に遊川節満載の、真理を突いたものだと納得しました。

 

 

 女ったらしの一郎にも、何か影がある様だし、何気に蜜柑もおとなしそうに見えて猪突猛進型で、個性的なキャラが多い印象です。

 

 

 色が関係性や性格を表しているのか、藍と紫村(一郎)は同系色、赤井(涼介)と蜜柑も同系色となっています。

 

 

 藍と蜜柑が反対側に位置する補色、紫村と文平も反対側に位置する補色なのも興味深い所です。

 

 

 人生を変えたドラマ㊺ に続く