「ぼたん雪が舞うとき」
NHKBSで観ました。横堀悦夫(A組)、津田真澄(A組)さんによる上演でした。
自然で・・・ちょっぴりぞんざいで、そのくせお互いをいつも意識していて、ほっこりする素敵な夫婦でした。
私が一番よく知っている夫婦の形だなって思いました。
ああ、劇場で観たかった。
あの地下の小さな閉鎖的な空間で観たら、閉塞感に呼吸困難になってしまっていたかもしれません。
テレビで観ていても、放射能に取り囲まれた不安に、周囲に誰もいなくなってしまった絶望感に、息が苦しくなりました。
開けたら、ダメ、開けたら、放射能が……と思いながら、
「新鮮な空気が吸いたい」
という思いに心から共感しました。
そして、放射能汚染のせいだと思いながら、ぼたん雪の美しさにぞっとしました。
夫婦のリアルなやりとりに放射能の存在を忘れて、あたたかい気持ちにされました。
素っ気ない言葉や態度に、長年積み上げてきた夫婦の愛を感じました。
このまま、何事もなく、放射能から解放されて!
祈るような思いでした。
「おまえ、むくんでる!?」
と夫が気付いたときの苛立ち……
「もう4日前から……」
妻の諦めた表情が目に焼き付きました。
それからは、もう今にも命がつきてしまいそうなほど、弱々しくみえるその表情は、演技とは思えませんでした。
妻を一人残して、他の住民が避難した場所を探しに行く?
どこまで?
隣町にもいなかったら?
私を一人にして……?
いつの間にか、自分があの妻になっていました。
夫が自分の夢を試したかったと、過去を思い出しながら、ギターを弾きながら歌う姿にぐっときました。
捨てられなかった夢……捨てなきゃいけなかった夢……
それでも、その代わりに手にした娘……温かい家庭
つながっていく命……
原発の恐ろしさや災害弱者をテーマにした作品であっても、必死で生きようとした温かい夫婦のやりとりに大きなドラマがあって、後から、ぞっと恐怖感が襲ってくる作品でした。
行政という大きなものに守られているという錯覚にぞっとします。
ひとりひとりを大切に!というスローガンのもと自分たちが大切にされているという錯覚の中で育てられてきましたが、いざというとき!? 少なくとも、災害などの緊急時、私達は大きな分母の中の1という数字でしかなくなります。
自分たちで守る術を持たなければ、仕方の無かった数字になってしまうのです。
公助ではなく自助を行政が推進する社会なのです。
そんな風に考えると、自分がなんの覚悟も用意もしていなくて、自分の身の回りの人さえも助けられそうもなくて……自分のちっぽけな存在がぼたん雪のように儚くて……いつまでも後を引く作品でした……。
素晴らしい作品でした。
劇場で観たかったな……