俺、大学の2年生で、〇〇市でひとりアパート暮らしをしてるんだよ。
それでこないだの夜、奇妙なことがあったんだ。その日は金曜で、
俺はいつものとおり、夜の10時過ぎに部屋に戻ってきた。
バイト帰りで、その日、給料が出たばかりだった。部屋について
ビールでも飲もうかと冷蔵庫を開けたら、ビールはあったものの、
その日の夕食になるようなものがなかった。それで「あちゃー」と
思った。どうしよう、コンビニに弁当を買いに行くか。しかし、もう
こんな時間なので、人気ある弁当はすでに売り切れてるだろうと思った。
肉まんで済ませるか・・・そのとき、今日は懐があったかいことに気がついた。
そうだな、今日は奮発してファミレスでも行くかな。ステーキ定食とか
いいかも、そう思った。ファミレスはアパートの近くに深夜営業の

ところがあり、チャリで5分程度で行ける。そこに入店したのは11時
ちかくで、ステーキ定食にコーンスープを追加して注文した。
店内はガラガラで、客は俺と、あと数組しかいなかった。ステーキの
肉はやわらかく、なかなか美味だった。で、そろそろ食い終わろうと
いうとき、店に団体の客が入ってきたんだ。団体と言っても、そこまで
多人数ではなく、人数をかぞえてみると6人だった。男が4人、女が2人。
年頃は正確にはわからなかったが、みな若く、どの人も同じような年代で、
20代後半ではないかと思った。みな、スポーツバックやトートバックを
持っていた。そいつらは俺から少し離れた場所に、テーブルを2つ
くっつけてもらって座った。まあ、そこまではふつうなんだが、そいつらが
コートを脱いで壁にかけたのを見て驚いた。コートの下は全員が

喪服だったんだよ。葬式の帰りとかなんだろうか。そいつらはまず、
全員がコーヒーを注文し、そこで中のひとり、髪の長い男が、
「今日はたいへんでしたね。では、始めますか」と言ったんだよ。
そしたらみなが足元に置いたバッグをごそごそさぐって、20cm×10cm
ほどの四角いものを取り出した。その何枚かは俺のところからも見えたが、
何かわかって仰天した。それ、黒縁になった額縁、しかも中に写っているのは
どう見ても本人、遺影にしか見えなかったんだよ。その遺影を各人が自分の
前に立てた。え、まさか、これどういうつもりなんだろう。そう考えていると、
最初に「始めます」と言った男が「じゃあ僕から」そう言って、
少し考えていたが、「きちゅう」と口に出した。その言葉の字面が
想像できなかった。「机中」なのだろうか。

まさか「忌中」ではないだろう。そしたら、次の女が「私はう、ね。うーん、
じゃあウジ虫!」と言った。するるとメンバーの中の別の男が、
「ウジ虫か・・・そうくるとは思わなかった。まあ、直接関係はないけど、
腐った肉にはウジ虫がたかるな。まあ合格にしよう」そしてその言葉に
他のメンバーもうなずいた。3人目は「し、だね。こりゃ簡単だ。サービスだな。
死亡記事!」そう言った。4人目は女で「じ、ですね。これも簡単。自殺者!」
そして5人目・・・という具合に、聞いているかぎり、死や不吉な言葉限定で
しりとりをしているみたいなんだ。こいつら正気なのか、でも表情は大真面目だ。
俺は興味を惹かれ、スープを飲み終わってもずっと見てたんだよ。そいつらの

しりとりは、俺のことはまったく気にしない様子で、2回り目までいき、
3回り目に入った。そこで2番めの女が「死亡事故」の次に「じゃあ、故人!」

 

って言ったんだ。そしたらその途端、女以外の全員が立ち上がって、
「あー、ん、って言った」と女を指さしたんだよ。女ははっとした様子でいたが、
「ごめんごめん、今のは取り消し」半笑いでそう言ったが、司会の男が
「ダメだよ。ん、を言ったものが  ひょうじん様の生贄というのがルールだ」
そして「なあ、みんな」と他のメンバーに同意を求めた。もう一人の女が
「〇〇、あなたに決まったのよ」そう叫んで「故人」といった女の遺影を
乱暴な手つきでパタンとテーブルに倒した。「ん」を言った女はもう何も
しゃべることはなく、うつむいていたが、やがてテーブルの上にポタポタと
水がこぼれた。どうやら女が流した涙のようだった。やがてグループの
男2人が両側から女の脇を抱え、そいつらは店外に出てったんだよ。
これ、いったいどういうことなんだろう。たしか生贄とか言っていたな。
あの女の人はいったいどうなるんだろう??