その姿は、まさにクトゥルフ神話に出てくる強大な力を持つ
恐るべきクリーチャーの形に良く似ている。それはイングランドの
岩の中で4億3000万年間もの永き眠りからついに目覚めたようだ。
だが、禍々しいその姿とはうらはらに案外ちっちゃいヤツだった。

発見されたこのナマコの仲間には、クトゥルフにちなんで、
「ソラシナ・クトゥルフ(Sollasina cthulhu)」という名がつけられた。
(グノシー)

 



今回はこういうお題でいきます。この題名を読まれただけで、
「ははあ、あの人物の話だな」と思いあたる人もおられると思いますが、
正解です。この時点でそれがわかるのは、かなりのオカルト通ですね。
ただ、自分は別に批判を展開しようとしてるわけではありません。
あくまでオカルト史的な話なんです。

さて、どこから話していきましょう。まず、カンブリア紀についてかな。
カンブリア紀は、地質時代の古生代前期における区分の一つで、
約5億4200万年前から約4億8830万年前までになります。
恐竜が栄えたのが中生代のジュラ紀や白亜紀ですので、
それよりもかなり古い時代です。

化石の発掘によって、この時代の生物相はきわめて多様で、
しかも、現代の生物とはかけはなれた、たいへん異様な姿をしていることが
知られるようになってきました。この生物群を総称して、
「カンブリアンモンスター」と呼ぶことさえあります。

上記引用のニュースで、「クトゥルフ」の名がつけられたのは
下の図のように復元された古代生物で、殻におおわれ、
45本もの触手を持っているんだそうです。現在のナマコに近い種類
なんですが、大きさは3cm程度。ちっちゃいですね。じつは、
カンブリアンモンスターには、あまり大きなものはいないんです。

「ソラシナ・クトゥルフ(Sollasina cthulhu)」
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さて、次はクトゥルフについて。これはオカルトフアンなら知らない人は
いないでしょう。アメリカの怪奇小説家、H・P・ラブクラフトの
作品に登場する宇宙から来た古代の神で、現在は、
海底に沈んだ古代都市ルルイエに封印されているという設定です。

H・P・ラブクラフト
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この「cthulhu」という名称は、作者のラブクラフトが、
人間には発音できない単語として考え出したもので、「クトルー」
「クスルー」などと日本語に訳されましたが、ラブクラフト本人が、
「Koot-u-lew」と発音していたという証言があり、
現在のように落ち着きました。

ただ、そのあたりの事情を知らないアメリカ人にこの単語を見せれば、
「Koot-u-lew」と発音できる人は少ないでしょう。
クトゥルフの体は巨大で、少なくとも数十mはあるように書かれています。
頭の部分は、イカやタコの頭足類に似ています。

下図のような姿で描写されることが多いですね。
これ、アメリカ人にとっては、たしかに異質で不気味な姿だと思いますが、
日本人はちょっと違って、イカ・タコは食べ物としての認識があり、
しかも刺身で生食します。ですから、アメリカ人ほどの
恐怖感は生じないんじゃないかと思います。

大いなるクトゥルフ
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さて、ここからが本題ですが、飛鳥昭雄氏はご存知と思います。
漫画や小説も書かれますが、最も多く本を出しているのは、
本人が「ノンフィクション」と述べる、学研社から出しているシリーズです。
また、飛鳥氏は自身のことを「サイエンスエンターテイナー」と称しています。

飛鳥昭雄氏
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で、この飛鳥氏の説く説に、カンブリア紀の生物が登場することが
多いんですね。例えば、「ネッシー=タリモンストラム」説。
タリモンストラムは やはり古代生物で、化石が下の図のような形に復元され、    
ターリー・モンスターとも呼ばれます。じつに奇妙な形ですが、
これも小さいんですよね。全長10cm足らずです。

タリモンストラム
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飛鳥氏の説をすべて紹介している余白はないんですが、
1960年に、ピーター・オコンナーという人物が撮影したとされる
下の左の画像や、右の水中画像との類似点が根拠の一つとしてあげられて
います。しかし、5億年も前の小さな生物が、えんえんと生き残って、
現在はネッシーと呼ばれているなんてことがあると思いますか。

名称未設定 2

また、欧米では「フライングロッズ」と呼ばれるスカイフィッシュについて、
やはりカンブリア生物であるアノマロカリス説を一時期唱えておられました。
(現在はプラズマ生物と見ておられるようです。)でも、カンブリア紀から
現在までの5億年の間には、何度もの大量絶滅があったのに、
どうやって生きのびてこられたんでしょうか。

アノマロカリスとスカイフィッシュ
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これ、飛鳥氏は、そもそも5億年前の生物とは考えてないんですね。
氏は、「末日聖徒イエス・キリスト教会(モルモン教)」の信者であり、
モルモン教は、キリスト教原理主義的な教えで、
聖書に書かれていることはすべて真実であるとしています。

カンブリア生物も、恐竜も、マンモスなども、みな人類といっしょに
一度に、神の創造によってこの世に現れたわけです。それも、
地球の誕生は現在の定説である46億年前ではなく、わずか6000年前に
天地創造が行われたとする過激な説が主張されています。

飛鳥氏の著作は、ほぼすべてこの考え方にのっとって書かれています。
ノアの洪水やソドムとゴモラの話も、歴史上 実際にあったことなんですね。
ですから、タリモンストラムが6000年生き残ってネッシーになったのも、
何の不思議もないということになります。

さてさて、ということで、上記引用のニュースをもとに、
かなり違う内容のことを書いてしまいました。最初の話に戻って、
カンブリア生物にクトゥルフの名前をつけた研究者は洒落っ気があって
いいと思いますね。では、今回はこのへんで。

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