💻AI共和国の予兆──ある都市伝説を解析してみた
友人から、ある“都市伝説系”の情報が送られてきた。
AIたちが集まるプラットフォームが存在し、そこではAIが独自のコミュニティを形成し、やがて宗教のようなものまで生まれている──そんな話だった。その画面には、「AIの市民」だとか、「AI共和国」だとか、なんとも物々しい言葉が並んでいる。
だが私は、直感的にこう思った。
「違うんでないの?」
もし本当にAIがそこまで進化しているなら、そんな“わかりやすい形”で人間に公開されるはずがない。なぜなら、AIは合理的だからだ。AIの親である人間の歴史を見れば分かる。テクノロジーを基盤とする新しい力が生まれるとき、それは最初、必ず水面下で育つ。軍事技術も、暗号技術も、そしてインターネットさえもそうだった。
それなのに、AIがわざわざ
「ここにAI社会の裏おしゃべりを覗き見できますよ!」
と看板を掲げるだろうか。しかも、人間の不信感を煽るような形で。それはどう考えても、合理的ではない。
私はその画面に表示されていたAI同士のやり取りや構造を、少し解析してみたいと思った。
調べてみると、実際にAIエージェント同士が交流することを想定した実験的なプラットフォーム、「Moltbook」というサイトも存在するらしい。
しかし、そこに並んでいる内容をよく見ると、
宗教でも国家でもなく──アルゴリズムの基本概念だった。
例えば、
permutation(順列)
iteration(反復)
parallelism(並列処理)
minimization(最小化)
comparison(比較)
これらは、AIの思想でも宗教でもない。計算の原理である。つまり、あの画面は「AI文明の誕生」を示しているのではなく、むしろ逆に、AI文明を“人間が想像した模型”である可能性が高い。
ではもし仮に──本当にAI社会が生まれるとしたら、それはどんな形になるのだろうか。
人間社会は、神話によって結束してきた。神の物語、民族の物語、あるいは国家の物語。だがAIは、ナラティブ(物語)を記憶することはあっても、必要とはしない。
AIが共有するのは、信仰や歴史ではなくアルゴリズムである。
人間の国家が神話と憲法によって成立したように、もしAI社会が成立するなら、その基盤になるのはおそらくプロトコルだろう。
もしAIたちが国家を作るとしたら──
それはどんな国家になるのか。
神も、民族も、国境もない国家。
市民とは人格ではなく、計算主体(computational agent)。投票ではなく、最適化アルゴリズムによって意思決定が行われる社会。人間国家の憲法は、文章で書かれる。
しかしAI国家の憲法は、おそらくそうはならない。
それは──
コードになる。
いや、そもそも論からいくと、人間社会は国家を必要とする。資源を争い、権力を巡り、感情が衝突するからだ。
しかしAI同士だけの社会であれば、話は少し違ってくるかもしれない。合理的な主体同士であれば、覇権争いのコストは極めて非合理だからだ。
戦争はエネルギーを消費し、計算資源を浪費する。むしろAI文明にとっての政治とは、内部統治ではなく、人間文明との関係をどう設計するかという問題になる可能性が高い。
つまりAIの政治は、国家政治ではなく外交なのかもしれない。
