『 シクラメンの妖精 』



街のあちこちで、クリスマスの曲が
流れていました。

行き交う人は、みんなプレゼントを
抱えて、家路に急いでいます。



そこに、恋にやぶれた青年が一人、
とぼとぼと、下を向いて歩いていました。

たまたま通りかかったお花屋さんで、
ピンクのきれいなつぼみを付けた
シクラメンが並んでいました。

たくさんついたシクラメンのつぼみは
すべて下を向いていました。

「君は僕と一緒で、下を向いてるんだね。」

 青年は、一番手前のシクラメンにそっと
つぶやきました。



とぼとぼと通りすぎようとしたその時に
後ろの方で声が聞こえました。

「待ってください。
あなたは私たちが咲いた姿を
見たことがありますか?」

シクラメンの妖精が、ふかみどりの葉の上に
ちょこんと腰を掛けていました。

「私たちは、はにかみ屋さんだし、
花粉が濡れないように下を向いているの。
花びらはちゃんと上を向いて咲くのよ。」

妖精は、はにかみながら言いました。



ちょうどその時に、つぼみがひとつ、
目の前で咲き始めたのです。

花びらが、力強く、上へ上へと
上がっていきます。

「この細い茎のどこにそんなパワーが
あるんだろう…」

青年は、自分の体にそのパワーが伝わって
くるのが分かりました。



「わたしたちは、寒い中、
下を向くあなたのような人を
元気にしたくて咲いているの。」

妖精は立ち上がって、可愛らしい声で
そう言いました。



青年は、思わず鉢を手にして、
ピンクのシクラメンを買いました。

そのシクラメンを眺めながら、
その冬は、ひとりぼっちでも
あたたかい気持ちで過ごしました。



青年は、花が終わっても、葉だけになった
シクラメンを大切に手入れして、翌年には
もっとたくさんの花を咲かせました。

今年のクリスマスは、彼女と
そのシクラメンを眺めています。

花のように、一度は枯れても
幸せは、またやってくるのですね。






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