小説指原莉乃第二十三章リライト〜沖縄夢散(前)終わりの始まり | 散り急ぐ桜の花びらたち~The story of AKB.Keyaki.Nogizaka

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小説家を目指しています。ゆいぱる推し 京都地元大好き 鴨川のせせらぎと清水寺の鐘の音の聞こえるところに住んでいます。






こんにちわマナです

大谷さん、地区優勝おめでとうございます💐🎉

念願のヒリヒリした9月を満喫してられるようで何より

最愛の真美子さんもデコピンもヒリヒリしたのかなw

今年の始まりは最悪だった大谷夫妻+デコピン

終わりよければ全てよしでワールドシリーズ制覇で締めたいもんですよね🩵💙


ということで今回のいつものウダな前説はあとがきになります

あんたの小説何か見たかねぇやって方はすっ飛ばして進んでくださいね💁‍♀

ではではご覧くださいませヾ(。・v・。)




            𓂃𓈒𓂂𓏲☆.・𓂃𓈒𓂂𓏲☆.・




これまでのあらすじ
2016年6月、指原莉乃は第八回AKB選抜総選挙中間発表の思わぬ結果を受けて
本選三日前に突如棄権。メディアの批判の嵐のなか、AKBグループとしての衿を正すべく、横山由依が総監督の名において指原莉乃に卒業勧告を言い渡す。
揺れるAKBグループ、騒動はHKTの独立分裂危機にまで及ぶが、寸前のところで回避。AKBの絶対エースと二代目総監督、二人は少なからぬ蟠りを残しながらもAKB第二章を共に刻んでいく。
そして二人の前に立ちはだかる恋愛解禁の壁。指原の戦線離脱に単身挑むことを決意した由依総監督。恋愛向上委員会設立、けれどバンドラの箱は開くことはない。
難波の大量スキャンダルという大波から自分の未来と引き換えにNMBを救った山本彩。

総監督という地位にありながら何もできない自分に苛立ちを隠せない横山由依。
指原莉乃と横山由依、そして山本彩、三人の織り成す勝者と敗者のストーリーがいよいよ最終章へと進んでいく。

http://ameblo.jp/doujouji1991/themeentrylist-10097443612.html

 






            𓂃𓈒𓂂𓏲☆.・𓂃𓈒𓂂𓏲☆.・

 



前日から沖縄に降り続く雨の勢いは治まる様子もない。それどころか、ますますその激しさを増しているようにも思えた。会場に設定された豊崎浜の空にはまるで悪魔が手を広げたようなどす黒い雲が覆っていた。

 

鳴りやまない雷鳴、ヒューヒューとうなりを上げる風の音。

なぜこの時期に沖縄だったのか、不信と疑心に満ちた言葉ばかりが掛け巡る。

誰がどういう経緯で何の為に。メンバーたちの間で広がる魔女狩りにも似た犯人捜し。

代替会場も用意せずに挑んだ梅雨の真っ只中の沖縄開催。

その結果、一時は国民的行事とまで言われた選抜総選挙が一地方都市の市民会館で開かれるという事態。それもこともあろうに無観客で。

明日その場所でいくら叫んでも、立候補者総勢322名のアイドル戦士たちの想いは誰にも届かない。

 

 

「あんたらの言いたいことはよく分かるし、この日の為に汗と涙を流して来たみんなのことは私が一番よう知ってる。けど、内々でもめるのんはもうこの場で終わりにして欲しい。あんたらの胸の内のもやもやはすべて私に預けて欲しい」

 

 宿泊するホテルの50畳ほどの畳敷きの大広間。自主的に集まった古参や中堅のグループの主だったメンバーたちが、横山由依と指原莉乃を取り囲むように車座になって座る。予想通りその口からは運営への不満が噴出する。

総監督由依はんはそんな荒れる議論に楔を刺すべく、珍しく声を荒げる。

 

 

「考えてみいや、今ここで私らが運営がどうの、しのぶさんがどうの言うたところで何にもなれへん。

このホテルの周りにうじゃうじゃとたかってる三流週刊誌のええ標的になるだけや。

心を一つにせえと迄は言わへんけど、せめてみんな同じ方を向くべきやと思う、いろんな声に惑わされて

ああだこうだと言うのは今は違うと思う。

声を上げるのはアキバに戻ってからでも遅ないはずや」

 

 

いつもは言葉足らずで一歩踏み込めない由依はんも今日ばかりはその言葉に勢いを増す。

それはまるで前総、たかみなの魂がのりうつったかのよう。迫りくる嵐の予兆にAKBの神様が彼女に力を与えているようにも思えた。

 

「私は・・・」

それまでずっと腕を組み一言も話すこともなく携帯に目を落としていたさしこがボソリと口を開く。

 

「いい機会だと思う。言うだけの事を言ってみる、そんな機会を神様が与えてくれたんだと思う」

 

「さしこ・・・・」

 

「考えて見なよ、こんなチャンスはめったにないよ。今なら何を言っても聞いてくれる。

いつもは都合の悪い事には耳を貸さない運営も今なら押し込める。運営のピンチは私達のチャンス。

違う?由依ちゃん」

 

「ひとつやないんか、うちらは? 苦しい時に助け合うのに運営もメンバーもないやろ」

 

「ほらほら、また由依ちゃん。 まだそんな事言ってんの? あんた誰のてっぺんに立ってんのさ?

あっち側に立ってどうすんのよ。あんたがそんなんだから、だから、大人たちはつけあがるんだよ」

 

「私が?なにを、いつどうしたって・・・」

 

「わかんない? じゃあ、聞いてみさいよ、みんなに。珠理奈もはるっぴもりりぽんも、みんなこのままでは済まさないって顔してるじゃん」

 

確かにさしこに言われるまでもなく、先ほどからずっと続いているAKBの本店メンバー中心の議論の最中にも栄や博多や難波の面子がこちらをじっと見据えているのは肌で感じていた。

特に去年のさしこの卒業勧告の事件以来、博多とAKBの関係性は未だに良好とはいえない。

「しぇからしか!東京もんは出ていかんね!」

あの日の児玉遥の叫びはAKB メンバーの心には今も強く残ってる。

 

「いいですか?」

 

朱里が突然立ち上がり手を挙げる。けれどその目は私じゃなく広間の後方に陣取る博多勢に照準を合わしたまま。朱里の目は気持ちが入れば入るほど何故か死んだようにその色と輝きを失っていく。

 

「いいけど手短にね、さっきから本店ばっかりだから、喋ってんのは」」

 

私の言葉を待たずにさしこがそう言う。

朱里はその声に小さく頷き、意を決したように胸に手を当て呼吸を整える。

気が小さい癖に時折突拍子もないことを言う、しでかしてしまう。それが朱里という子。スキルは人並み以上のものがあるんだけど、行動が読めないのが内々の大人達には今一つ人気がない理由。

 

「自分達のスキャンダルの懺悔もそこそこにファンの人達に釈明ひとつしないで、

活動を平然と続けているメンバーが、そもそも上に物を言えるのかという話ですよね。」

 

「じゅ、朱里さん?」、傍らにいたこじまこが思わず小さく悲鳴にも似た声をあげる。室内が一瞬ざわついた後、凍り付くように静まっていく。

30名にも満たないメンバーたちの視線の波がさわさわと後方の一角に吸い寄せられていくのが手に取るようにわかった。

 

思わず身を乗り出す村重杏奈の肩を抑え、唇を噛みしめ言葉をその胸に飲み込むようにそっと手を上げる兒玉遥。

だけど、さしこは取り合わない。小さく首を横に振り、二人を手で制し再び高橋朱里と向き合う。

 

「それで、なんなの?」

 

「それで? それでって、それで十分じゃないですか。人に意見する前にまずは自分が襟を正す、

悪いことをしたらまずはごめんなさい、そこからでしょ、話は」

 

「違うんだよね、それは」

 

「何が違うんですかっ?」

 

 

 

「朱里、もうやめや」

 

「やめなくていいよ」

 

「さしこ。。」

 

 

 

「あんた博多に来たことある?」

 

「あります」

 

「何で?」

 

「旅行で」

 

「住んだことは?」

 

「・・・ ないです」

 

 

さしこと朱里のいつもとは違う艶のないこわばった声が響く。会話の合間にコツコツと窓ガラスを叩く風の音だけが聞こえてくる。周りを見渡せば不安で張り裂けそうなまるで世界の終わりを目撃しているような顔が虚ろに並ぶ。

なんでこうなったんだろう。楽しい夜のはずだったのに。胸躍る、年にたった一度の夜のはずなのに。

見るとこじまこが私を見つめて涙をいっぱいに溜めていた。隣のあんにんも今にも泣きそうに無言で何かを訴えている。

 

「どんな生活してるか、知ってる?」

 

「えっ・・・・?」

 

「だからあの子らが博多でどう生きてるか知ってるって聞いてるの?」

 

「・・・・」

 

「知らないよね・・・」

 

「・・・・・」

 

 

「そうなんだよ、日本の端っこで生きてる子なんて誰も気にも留めない。

ひがみかもしれない、博多だって他の田舎に比べりゃ大都会だし、いっぱしのテレビ局もある。

オンデマで劇場公演も見てもらえる。たまにお小遣い稼ぎに東京にだって呼んでもらえる。

でもねあの子達は隅っこでアイドルしてる現実をやっぱり拭えないんだよ」

 

 

すすり泣きが聞こえた。ひとり、ふたり・・・。それは博多の子達だけではない。

みんなこの場所に座っていること自体、奇跡なのはわかっている。

自分が抱いている夢がどんなにだいそれたことであるかも良くわかっている。

ただそれでも夢を見る。

アイドルだから。アイドルと呼ばれたい自分が好きだから。

 

 

「人間ってさ、自分が恵まれない時には何かに優しさを癒しを求めてしまうのよ。

   それは男でも女でも、どっちでもいいわけで。。。

ぶっちゃけ、私も知ってるよ、諸々をね。注意もする。でも強くは言えない。

言えないんだよ、誰になんと言われようと。

 

いちいち釈明しないのも謝らないのも、それは彼女達のプライド。

同じルールをそっちが被せてくるんなら、対等な待遇にしなさいよ、ってね?

やっぱり、あの子らにしたら、東京もんはせからしいんだよ、朱里・・  」

 

 

 

何もかもすっきりしないまま、第九回選抜総選挙の前夜は更けていく。

この日に賭けていた想いは博多や難波や栄の子達の方がより強い。

地元の劇場公演で地道に活動しながらファンを増やす。そしてその結果として年に一度の総選挙がある。そこで自分を見つけてもらう、夢を与えてもらう。何もかもがここに繋がっているという事実。

そんな、年に一度のAKB48グループの最大のイベントが正常な形で行われないという事。

 

終わりのはじめを誰もが予見し予感する。

始まりはなかなか始まらない。助走は長くて苦しい。飛び立つまでにはもがいてもがいて翼をばたつかせてやっと浮かび上がることが出来る。けれど終わりは突然やってくる、あっけないほどに。

それがこのエンターテインメントの世界の物づくりというものらしい。

 

「私は幕引きなんか務める気はないから。私達の世代では終わらせない。あの人がどう云おうと」

沖縄へ向けて東京を立つときにさしこは確かにそう言った。

時代がAKBを退け始めている。それをさしこも私も強く感じ始めていた。

 

もうすぐ夜が明ける。

 

もう夢なんか、見ていられない。

 



          


          𓂃𓈒𓂂𓏲☆.・𓂃𓈒𓂂𓏲☆.・

 



 

 

〜あとがき


8年前の沖縄の美らSUNビーチで行われるはずだった49th選抜総選挙

メディアでは叩くだけ叩かれゆいはん総監督も涙ながらに頭を下げさせられ

ネットも大炎上。この運営の大失態はほんとうにAKBの終わりの始まりがやってきたと誰もが思ったはず


もうオワコンと世間では揶揄されることが多くなりメンバーたちもアイドル界での自分たちの立ち位置が以前のように頂きから見下ろせるものではなくて

逆に公式ライバルと言われた乃木坂を仰ぎみないといけない立場にいることを

AKBメンバーみんなが強く自覚する。


そんな時だからこそ、AKBが一番大事にしているもの

一年頑張った汗と涙の努力の結晶として自分が輝ける場所

乃木坂にはない真似のしようがないアイドルとしての生き様を見てもらい

その洗いざらいを語れる場所

それがAKB48選抜総選挙


1年間応援してくれた数万人のファンが目の前にいて

結果はどうあれあふれる思いを吐露する

AKBとはたかみなのことと秋元康から称えられた高橋みなみ初代総監督も

総選挙前夜ではいつも血反吐を吐くような壮絶な緊張感に襲われたと言う

それはもう単なるアイドルイベントを超越した命懸けの女の戦いとも言える


そんな彼女達の一年間の全てをかけた戦いが運営の安全安心を何も担保しない

無策のやり方が台無しにした

須藤りりぽんという邪悪な悪魔まで引き寄せてぐちゃぐちゃにした


何で嵐に備えてA案なりB案なりを準備できなかったのか

嵐でビーチの会場が使用できなかった場合を考慮してなぜもっとまともな会場を用意して置かなかったのか

晴れの舞台から無観客の公民館に移行される、それがどれだけメンバーにとって心折れることなのか

いやそれよりも何よりも6月の台風シーズンの沖縄で開催した愚行をどう説明するのか


それもこれも今にして思えばもう終わりの始まりの序章だったのかもしれない

僕青だのWHITE SCORPIONだの、今次々と新しいグループに手を伸ばし始めているあの人はAKBは綺麗に後腐れなく終わらせたかったに決まってる


スクラップ&ビルダー

太平洋に沈む夕陽、沖縄の夜空に煌めく満天の星屑の下で一つの夢を終わらせる

それは次に進む為の重要な己に課した儀式でもあった

もしかしたら嵐や台風もAKBを終わらせる為の想定内の演出だったのかも

そう考えていくと最後に現れたあの悪魔の道化師は納得がいく


綺麗事を絵に描いた様なステージで絶対タブーを見事なまでに演じてみせる

「何もかんも全部潰してやれ」

はたして、彼女はそんな使命を負わされた最後の刺客だったのか…。



            𓂃𓈒𓂂𓏲☆.・𓂃𓈒𓂂𓏲☆.・






 

 

 

 

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