幕末の桜の花びらたち第八章「島原の風に揺れる命一つ」中編 | 散り急ぐ桜の花びらたち~AKB小説

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小説家を目指しています。AKB9期推し 京都地元大好き 鴨川のせせらぎと清水寺の鐘の音の聞こえるところに住んでいます。


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「麟太郎さんって、あの勝海舟?」


「どの勝海舟だい、花魁?」


人懐っこい笑顔が浮かぶ。幕臣の旗頭とも言えるいかつさはそこには微塵もない。まるで、京の寺町の骨董品屋の前で日向ぼっこをしてそうなのが似合いの笑顔が素敵なナイスミドル。

「勝さん、なんでこんなとこに」

「来たんだってかい?」

そうさなぁ、あんたはどう思う?、そう言いながらドスンと音を立てて美音の前に胡座をかいて座り込む。
その勢いに押されて思わず龍馬に寄り添う美音。

「"えーけーびー"ってもんがある世の中をよ、それを知りたくってわざわざ島原くんだりまで繰り出したって分けよ」

「何で?何でAKB 知ってるんですか?」


「隣のお兄さんに聞いてみな。いや、ほんとはお姉さんなんだよな。
そうだよな、ぱるさん」

「ふっ、信じるんだ私たちのこと」



「もーっ、ほんとになんなんですかぁ」

目を丸くして聞いていた美音が、緊張の糸が切れたのか
ほっと安堵の溜め息を漏らす。

勝海舟。勝麟太郎とも呼ばれる。

感臨丸で日本人としてはじめて太平洋を横断。その持って生まれた天性の処世術で江戸城を無血開場に導き、江戸を戦火の嵐から救った幕末の英雄。明治維新後も幕臣ながらも請われて明治政府に参画。幕末という時代を司ったそのリベラルな平衡感覚は敵方であった薩摩長州からも多大な支持を受けた。



「信じないわけにはいかねぇやな。なんせこの大江戸が東京ってなもんにかわるのをしってるなんざ、そうはいねえ。だろう、ぱるさん」

私の言葉を待たず美音が口を開く

「江戸が東京に変わるのを知ってるだけで信じたんですか、
私たちのことを?」

「いけねえかい、花魁」
そう言ってた勝は嬉しそうに眉を下げた。

「ただし、俺もバカじゃねえ、そんな事だけで誰でも信用するってもんじゃねえ」
勝が立ち上がり窓の方へと体を寄せる。もう射し込む日差しは肌に暖かい。

「桜の花びらたちって唄、知ってるかい?」

「勿論」

美音が口角を上げて言う。
少し勝海舟という人間に小慣れてきたのか、もうその声は震えてはいない。
ただ彼の脇を固める二人の若者には尋常ならざる殺気が感じられ、
座敷のなかはいまだにピンと張り詰めた空気は続いている。

「だろうな。あんたは、"せんた"だもんな」


そういうと勝は自分の羽織の袖に手を伸ばし一枚の紙切れを彼女に示して見せた。

「歌詞?」


「一つこの年寄りの願いを聞いてくれると有り難いんだが」

「歌えって・・いうことですか?」

「まぁ無理にとはいえねえけどな」

「歌わなかったら切られちゃうとか」

「まさか」
勝がまた笑う。

美音の視線の先は勝の両脇にいる若侍を行ったり来たり。
顔中に笑みを浮かべる勝とは対称的に未だに眉間に深い皺を寄せ
こちらを射ぬくほどの勢いで睨み付ける若者二人。

「こいつらに何とか解ってもらいたくてねぇ」

 

 



 

桜の花びらたち、

畳の上に拡げられたさくら色の和紙には薄茶色の墨でなぞられたその文字が躍っていた。


ぱるるが龍馬となってこの京の都に降りたって初めて心を許したのが
勝麟太郎。

ぱるるがこの世界で生きていく為にまず考えたこと、
先ずはこの世の仕組みを理解すること。

それには先ずは味方も必要。この世界を教えてくれて私のサイドに立って手助けしてくれる人間。
それはもう龍馬の32年という少ない歳月から見ると限られた人間しかいなかった。

勝と龍馬の出会いは土佐藩の命を受けて龍馬が勝に会いに行く。

史実でいくとそうだけど、それはこの際そんなことは言っていられない。


「俺はよ、先ずは面白い事は信じることにしている。泣き言とか切った張ったは信じねえ。胸を張って面白いことどえらいことを言える人間を信じるってことだ」

なんて人だろうと思った。恐らく坂本龍馬の名前は知っていたのかもしれない。土佐を脱藩して新撰組に追いかけられている面白いヤツがいる。それぐらいの事は予備知識としてあったのだろう。

けれど、出し抜けに未来から来たと言い、本意ではなく龍馬に憑依していると言い、そして前世は歌い踊る、アイドルという女性だったと言う。そんな人間をこの人は何でもないような顔をして両頬に深い皺を湛えた笑顔で受け入れてくれている。

そしてここで以前、秋元先生から言われた事を思い出した。

「歴史上の人物で会えるなら勝海舟に会いたい。彼は日本という国をプロデュースした稀代のエンターテイナー。恐らくこの世のものとも思えない柔軟な発想力といかなるものも受け入れる受容力を兼ね備えていたはず。」

 

そう、先生は勝麟太郎を稀代のエンターテイナーだと言ったんだ。
まるでわたしがこうなることを予期していたかのように。
そして勝麟太郎はこう言った

「信じるさ。あんたが言うことはいちいち筋が通ってる。俺達の知らないこともいっぱい知ってる、ただ、頭は認めてもここが少しばかり言うことを聞いちゃあくれねぇ」
勝は拳を握り胸をとんとんと叩いて見せた


「あんたがその平成という時代に歌を歌う踊り子として生きていた
それも女子として。ならその歌を聞かせて欲しい。
それで俺は自分の心を鎮めてみせる。
どうだい、龍馬さん。いやぱるさんって言うんだな、あんた」


(ちょっと待ってよ、んなとこで歌えるわけないじゃん)
龍馬のなかの私の心の叫び。
いくら中身はアイドルぱるるでも見てくれはAKBの仲間以外は龍馬そのものの男っ振り。これで桜の花びらたちはちょっときつい。

「できれば歌詞を読むだけで・・」

「ま、とりあえずはそれでいいやな」

通された屋敷の十畳程の客間には大きな床の間が正面にあって、そこには大きな木製の地球儀やら南蛮製の置時計やらが飾られている。それを背に勝麟太郎は胡座をかいて座っている。
対面する私が声を整えるために咳払いをひとつすると勝はおもむろに座り直し
正座して私の声を待った。

目を閉じて腕を組み、秋元康作詞、桜の花びらたちを聞き入るその姿に何故か
胸が熱くなり僅かに声が震える。

外はもう秋の夕暮れ、どこかで野犬の遠吠えが聞こえていた。
脇に流れる高瀬川の瀬音が耳に心地良く響く。

「幕末の京も悪くない」
龍馬かぱるるかそれは知らない、けれど私はその時、心からそう思った。

 

 

 

 

 

 

桜の花びらたちが咲く頃
 

どこかで 希望の鐘が鳴り響く
 

私たちに明日の自由と
 

勇気をくれるわ
 

桜の花びらたちが咲く頃
 

どこかで 誰かがきっと祈ってる
 

新しい世界のドアを
 

自分のその手で開くこと

 

 

新しい世界のドアを自分のその手で開くこと

 

 

 

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 




 

 

 

次回幕末の花びらたち弟八章「島原の風に揺れる命一つ」後編に続く

 


 


 

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