「翔さんにあんな風に言われたら・・・

もう、しょうがないから松本潤個人としては諦めるから。

もう、あんたには手を出さないし。

翔さんにも手を出したりしない。

俺にもプライドがあるからね。

人から奪うのは興味あるけど、翔さんには全くその気がないみたいだし。

すっぱり諦める、とは言い難いから・・・

なんだかんだと社長秘書として、あんたにはこれからも関わるから。

翔さんの婚約者になったあんたにはそれなりのこと、してもらう。

じゃ、ごゆっくり」

 

松本さんは言いたいことだけ言って、すぐ出て行った。

早口だったから、全部は理解できてないと思うけど・・・

とにかく、僕にとって大事なことは。

櫻井さんにはもう手を出さないってこと。

 

なんだろう。

さっきまで、すごい苦しかった胸が・・・すっきりしてる。

痛いのも苦しいのもない。

僕の心臓、まだ動いてる?

死なないで・・・すんだのかも?

 

 

ベッドでしばらくそのままゴロゴロしてた。

なんていうか・・・体がだるくて。

でもそのだるいのが・・・すごい嬉しいっていうか。

櫻井さんと・・・の名残だから。

枕抱えて、うふふ、って笑い声が出るくらい、嬉しい。

1人でそんな声出してるなんて・・・考えるとすごい気味悪いんだけど。

一人部屋だから・・いいよね?

 

 

 

 

 

それから退院まで、僕は5日間、その病室で過ごした。

毎日、櫻井さんが病室に泊まりに来てくれて。

1人で寝ることなんてなかった。

朝になると、松本さんが櫻井さんのスーツを持って病室に来る。

病室から出社して、病室に帰ってくる。

 

櫻井さんいわく・・・

僕たちの新婚生活はこの病室で始まったらしい。

婚約、かと思ってたら・・・もう新婚さんなの?

僕は・・・あのアパートの部屋から始めたいんだけどな。

 

 

「櫻井さん、新婚生活が病室からってなんか・・・」

 

「嫌?じゃ、どこか新居探さなきゃかな?」

 

「新居じゃなくて、僕のアパートの部屋・・・じゃダメですか?」

 

「あそこがいい?じゃ、仕切り直そうね」