「答えは今すぐじゃなくてもいい。

ただ、書類の関係上。

今月中に住民票と年金手帳は提出して欲しい」

 

そう言い残すと。

しゃちょーは整理していた書類を持って、帰った。

 

 

しばらく、智は無言だった。

俺も・・・何も言えなかった。

いきなり・・・しゃちょーがあんなこと言うなんて。

考えもしてなかったから。

 

ただ・・・これを真面目に智が考えてくれるなら。

きっと、立ち直る第一歩になるはず。

 

しゃちょーがいなくなった後も、智は真面目な顔してた。

下唇噛んで・・・・いつも微笑んでるような顔してるのに。

口元もキュッと引き締めて。

 

 

「あの・・さ。

今日、バイト上がりに住民票取りに行く?

俺、付き合うよ!

なんたって、何回か取ったことあるベテランだからね!」

 

わざとおどけて話しかけてみる。

 

 

「ふふ・・・何回か・・だけなのに、ベテラン?

じゃあ・・・教えてもらおうかな?

よろしくね?大先輩!」

 

「おう!任せなさい!

なんたって、実家から住民票を移したこともある大ベテランだから!」

 

「うん。頼りにしてる。

・・・・・しゃちょーさんの言う通り。

翔のところに住民票移しちゃおうかな」

 

 

なんか・・・ちょっといい感じじゃないか?

智は・・真っ当な道に戻ろうとしてくれてる?

 

しゃちょー・・・ありがとう。

 

智が一緒に住み始めて、初めてかも。

真っ当な道に戻る、って意志を見せてくれたの。

 

 

そしたら・・・まずは検索!

住民票を取るのに必要なもの。

印鑑は必要だったっけ?

身分証明書は??

 

検索する時点で、自分はベテランじゃないな、って思ったけど。

それは智にはナイショだな。