新説『マジすか学園4』
#3907『そのアイドル、天然につき57 車中の瑠夏と茜』
水曜日の午前10時半頃、シャチホコハウスに自動運転の送迎バスが到着した。
ハウスで朝を迎えた30人の他、瑠夏と美晴が乗り込もうとする。
ショルダーバッグで身軽な瑠夏は、いち早く窓際の席を確保した。すると隣に茜が座ってきたので、すぐに聞いてみる。いつもなら「KEYABINGO!」の打ち合わせをベマーズの人たちと一緒にシェリーのマンションでしている頃だなと、頭をよぎる。
スマホを触ろうとした茜が、一旦中断してこちらを向く。
『さぁ、どうだろうね。ゆうゆはしっかりしてる子だから、ランチに来られないなら、るーちゃんかかおたんに連絡すると思うけど、連絡がないってことは来るんじゃないの』
『そうですよねぇ〜』
『ちょうど今頃は、ベマーズの人たちが「KEYABINGO!」のあらすじを考えてる頃で、明日が合同稽古、あさってが撮影なんだから、ゆうゆ抜きでは成立しないでしょ。ゆうゆはバラエティーより演技の方が好きみたいだから、「KEYABINGO!」と白雪姫には出続けるんじゃないの。私はよく知らないけど、るーちゃんの方がゆうゆとは仲良しでしょ。どう思ってるの?』
『るかですかぁ。そうですねぇ。取りあえず、今日のランチは来ると思います。昨日帰りのバスで、ホテルのランチが食べられるって楽しみにしていましたから』
『そうだったの!じゃあ、今日ゆうゆに会ったら、ドラマには出続けるようにるーちゃんから言っといてよ』
『はい。分かりました。それにアイドルも辞めないようにって、るかが説得します!』
『そんなことを言ったら逆効果になる!面と向かって言わない方がいいよ』
『分かりました。アイドルのことは言わないようにします。明日の合同稽古は、みなさんで張り切ってやりましょうね!』
『う、うん。私、運営に連絡メール入れておきたいんだけど、そろそろいいかな?』
『どうぞどうぞ。メールしてください。るかが邪魔したみたいでごめんなさい』
『今さらだけど、るーちゃんは事務所に入ってないの?』
『芸能事務所のことですか?るかは、そんなの入ってません。個人でやらせてもらってます』
『そっか。大変だね』
『そうでもないです。るかは気楽にやってます』
『るーちゃんらしいね。昨日胴上げされてる最中、突然プールに落とされたでしょ。私は心配だったけど、結構ケロッとしてたよね』
『あれですかぁ。あんなことされて凹んでなんかいられません!』
『さすが、るーちゃんだ。メンタルも強いし』
そこで茜は瑠夏との会話を切り上げ、スマホの画面を見つめた。
同じバスに乗り込んだ愛理は、1人で考える。このあとのランチビュッフェで、一体どんなドッキリが待ち受けていて、かおたんが依頼した仕掛け人は何人いて誰なのか。そしてドッキリで何が起こるのか…。じっくり楽しませてもらうつもりだ。
一方、これよりもう少し早い水曜日の午前9時頃、ベマーズの6人はシェリーのマンションに集まっていた。
◇続く