秘密の扉

ひと時の逢瀬の後、パパとお母さんはそれぞれの家庭に帰る 子ども達には秘密にして


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 たかしが子供だとは全く思わないけれど、時々不安になることは確かにある。一人の人間の中にはいろいろな側面がある。女としての私は確かに彼に夢中だけれど、大人の人間としての私から見ると時に危うい面も見える。でもそれは私だって同じことだ。親だからいつまでも彼が子供に見えるのだと思う。
 別れると言う選択肢はさんざん考え尽くしてもう迷いはないつもりだった。それなのに再び心が揺れる。総ての決断を私に委ねられているような気がした。

 それから2.3日してたかしが戻ってきた。私はこれで最後かもしれないと思いながら、いつものように振る舞った。その段階ではハッキリと決めていたわけではない。けれど一つ一つの瞬間がかけがえもなく愛おしかった。たかしは新しい環境についてずっと喋っていた。10日振りに見る彼がなんだか眩しく、逞しく、懐かしく思えた。二人で買い物に行ったり、彼のリクエストで二人で料理をしたりふだん通りに過ごした。
 母親からの電話のことは言わず、すべてがいつも通り、それは楽しく安らかな休日だった。違うのは日曜日に早目に夕食をとり見送ることだけ。
「来週あたりdoorも来てごらん、向こうも見せたいし」
「うん、楽しみにしている」
バイクが見えなくなるまで見送る。先日と同じように部屋に戻って泣いた。いったいこれがいつまで続くのだろう。
 距離が遠くなって、心も離れるかも知れない。新しい環境で、出合いがあるかも知れない。翌週は風邪を理由に静岡行きを直前になってキャンセルした。今、思い返しながら1月のブログを読み直すとほとんどが以前書いたものを引っぱり出してきて掲載していたようだ。辛い時期だった。ずっと一人で過ごしていると何もかも悪く考え、不安に思い、いつの間にか別れを決断していた。
 
「秘密の扉」を再開したのはそのためだ。心の整理をつけるため。ところが始まる直前の週末連絡もせずにたかしがやってきた。私はきちんと別れを告げられず、自然消滅のような形で別れるつもりだった。メールの量が少なくなったので変化を感じた彼が突然やってきたのだった。彼を目の前にして私の決意は脆くも崩れてしまった。
 私は何度同じことをくり返しているのだろう。やはりこうやって書き記してみると自分の思考パターンや恋愛のパターンがハッキリ見えてくる。途中4月なかばには彼からの連絡が途絶えたり、何度も喧嘩したりで恋愛の「今」は相変わらず迷走しながら進んでいる。

 ただ、ハッキリと言えるのはお互いが想い合っている以上終わることは出来ないと言う単純な事実だ。私達は些細なことで喧嘩をくり返しながらきっとお互いを理解し合っていくのだろう。この半年で彼の新たな面の発見がいくつも在った。彼も同じだと思う。そうやって付き合っていくことで冷静になって、それでも相手を必要とすればその先も在るのかしらという私の遠距離恋愛の決定だった。けれどそれは誤算だった。逢えない時間に想いがつのって私達は相変わらず冷静になれない。

 私達は今も熱烈に恋愛をしているのだ。



ひとまず当初の予定通り1月までのことを書いて区切りをつけたいと思います。ですから第2章はここで終わりです。

長い長い話を読んで下さった方、心配して下さった方々どうもありがとうございました。

これからは気が向いたら詩や恋愛論を書くつもりです。ですからお別れではありません。ただ、本当に極まれの更新になると思います。毎日の更新はややきつく、少々疲れも出て参りました。特に私は夏が苦手でwしばらくゆっくりと日記ブログ「いわゆる認識の相対性」の方をメインに更新するつもりです。
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sora2
長いその腕に優しく抱かれて
私の鎧が溶けてなくなる
たよりない少女のままでいても良い?
恐い時は恐いと素直に言うから
ありのままの私を受け止めてくれる
あなたの胸の中で安らぎたいから
大きなその手で支えてくれる
幸せは感じるもの
ただ味わうもの
すべてを受け止めてくれるあなたと
目と目を合わせた
そこにあるもの
それがしあわせ
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 私は遅れるのが嫌だったので30分も前に約束のホテルのロビーに座っていた。持ってきた本を読もうとしたが内容はさっぱり頭に入らなくて、目だけが活字を追い頭の中では今日の話し合いのことを考えていた。
 多分別れて欲しいということなんだろう。電話をもらって中一日いろいろな可能性を考えたけれど、単なる茶飲み話でないことは確かだ。御両親はたかしがふつうのお嬢さんと幸せになってくれるものだと思っていただろうし、私が普通のお嬢さんではないのは確かだ。
 ふと宙を彷徨った目がたかしによく似た面影を捕らえた。ちらと時計を見ると約束の時間に15分も早い。早く来ておいて助かった。引きつっていようと、どう映ろうととにかく笑顔らしきものを浮かべて立ち上がり挨拶をした。


 ティールームでたかしの母親は戸惑いながら私と向かい合っていた。時には言葉につまりながら、思ったより私がちゃんとしていて安心したこと。分別があると思われること。距離が遠くなってどのような連絡をしているかなどを聞いてきた。直接別れろと言っているわけではなかった。認めないとも言わなかった。ただ少し戸惑っていると。私はそれは当然だと思うと言うほかない。たかしの母親も実の置きどころのない感じで、見ていて気の毒な様子だった。
 続いてこれからのことをどう考えているか聞かれる。たかしからもらった指輪を眺めながら少なくともあと半年ぐらいは少し物理的な距離を置いて考えたいと伝えた。そしてこれまでのこと、私自身たかしに幸せになって欲しかったから、ずっと自分は相応しくないと考えて苦しんできたことも伝えた。何もかもありのまま話すしかなかった。
たかしの母親は下を向いて聞きながらハンカチで目を拭っていた。それでも
「たかしは31になったとは言ってもまだ子供ですから、この機会にdoorさんもよく御考えになって」
と絞り出すように言った。それは言外にできれば別れてもらいたいと言っているように私には聞こえた。震えぎみの声がこんなことを言わなければならないことに苦痛を感じていることの表れだった。
「はい、でも…」
「私には何が彼にとって幸せなのか分からないんです」
自分の声があまりに細くて頼り無げに聞こえる。ほとんど泣き出しそうになりながら舌先を噛んで涙を堪えた。
「私は彼が幸せになってくれれば良いし、でもその彼に求められたら私は応えるしかないんです」
「そうね、ほんとにそうね、ごめんなさい。doorさんのお気持ちは良く分かりました。あの、失礼に聞こえた所があったらごめんなさいね。ただ、あの子の前でこんな話が出来なかったものだから」
私達は立場が違っても純粋にここに居ないたかしの幸せを願っていたと思う。私が彼をどのように愛しているか彼女も理解してくれたようだった。その意味で同じ気持ちを共有していると言う感覚があった。たかしの母親とこんなふうに心の交流ができるとは思ってもみなかった。
 別れたあと所用を済ませて部屋に戻ると、珍しく留守番電話のランプが点っていた。近ごろでは家に不在の時はすぐに携帯に電話が入るので珍しいなと思った。確認してみるとたかしの母親の声で今日の話し合いについて感謝の言葉が録音されていた。ずいぶん丁寧な方だと思いながら聞いていると最後に
「これから距離も離れることですし、どうぞ二人の人生を長い目で考えてみて下さい」
と締められていた。不思議と反感も反発も無かった。

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 居間に通されてきちんと御挨拶をしなおし、当たり障りの無い会話が始まる。表面上は和やかに、にこやかに進んで行った。たかしに何かを取らせにいった隙にすかさずお母さんから連絡先を聞かれた。私は素直に名刺を渡す。嫌な予感が心を掠めたけれどそれを押し殺してお父さんの冗談に口だけで笑ってみせた。2時間ほど和やかに過ごしてお暇させていただいた。たかしは私を送りに外に出て来た。駅までの道をゆっくりと歩く。
「どうだった?」
「どうって」
「うちの親」
「たかしの御両親だな~って」
「どういう意味よ」
「ん…素敵だって事」
「んだよっ」
 それからたかしは親についての解説を始めた。なんだかいつもより喋り過ぎるのは彼も何か不安を感じているのだろうか。それには触れずに素直に相づちを打つ。名刺を渡したことも黙っていた。雪が降り積もるように心の中の不安は次第に募っていく。年末に降った雪のなごりが道ばたにあり埃で黒くすすけていた。早く溶けてしまえば良いのに。

 翌日から次の日までたかしとずっと過ごした。たかしによると御両親は私に良い印象を持っているようだとの事で少しだけホッとした。日常のなんでも無いことが真珠のように貴重に思える。優しく、傷つかないように二人の時間を丁寧に過ごした。砂時計の砂が次第に落ちていくのを感じるように。これでお別れじゃないのに、そんなことは分かっているのになんだか貴重に思えるのだ。夕方実家から乗って来たバイクにたかしはまたがった。
「今週はちょっと無理だけど来週末にはこっちに来るから」
「うん、途中気を付けてね」
もっと言いたい言葉はいくら努力しても声にならなかった。
「泣くなよ」
たかしは革のごついグローブで私の頭を乱暴に撫でた。バイク姿は格好が良かったけれどそれをちゃんと見ることも口にすることも出来なかった。
「いってくる、じゃ」
バイクはスピードを上げてすぐに見えなくなってしまった。取り残された私は部屋に戻って泣いた。大きな声を上げて思いっきり泣いた。寂しかったらいつでも逢いにいける。少しだけ物理的に遠くなっただけ。いくら自分に言い聞かせてもやっぱり悲しかった。私の部屋に置いてあった荷物はそのままで、たかしだけがいない。実際には来ることが少なくなっただけなのに、どうしてこんなに悲しいのか自分でも理解できなかった。それでも毎日夜が来て朝が来た。仕事が立て込んでいたので気がまぎれて良かったかも知れない。
たかしからは毎日メールが来た。プロバイダとの契約が未だだったから私が書くメールの量に比べたらごく短いものだったけれど。
 ある日たかしのお母さんから電話があって私と会いたいとのことだった。心のどこかでこうなることは覚悟していた。新宿で待ち合わせることにした。


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いよいよ来るべきものが来るのだ。逃げたところで、いつかは避けられない道だ。
「わかった。どこまで話しているの」
「う~ん、一通り」
「バツ一で、7才年上でってこと?一緒に住んでいないけれど子供も居るってことも?」
「うん」
「何もそんな人とって言われたでしょう」
「だけど俺、他に考えられないって言ったら納得してた」
たかしの言葉は嬉しかったけれど、親の立場なら反対するだろうし、当たり前だと思った。
「どうしよう、何着ていこう」
普通だったらせっかくのお正月、振り袖姿で
「まぁ可愛いお嬢さんね」
などと言われてニコニコしている所なのだろうけれど。
「それでいいよ」クリスマス用の真っ赤なワンピースでは行けない。
「これじゃ…なんか、スーツでも来ていくわ。なんだかちょっとドキドキしてきた」
「はははっdoorでもそんなことがあるんだ」
「失礼ね」
いくら笑いに誤魔化しても不安は水にたらした墨のように広がっていく。先入観はあるだろうし、かと言ってどうすれば良い印象が与えられるのかも分からなかった。
 たかしの引っ越しの日、私は古いiMacを引っ越し荷物の中に入れてもらった。これを繋げばネットで彼ともやり取りできる。年末はいろいろなことがあって、私も辛い毎日を送っていた。不安はいっぱいだけれど、なんとか良い年にしたかった。

 いよいよ年が開けてたかしの家に二人で向かった。連れ立って歩きながら心臓の鼓動を感じていた。別に、自分より良く思われなくても良い。やっぱり多少は色眼鏡で見られてしまうのかしら、それだけは避けたい。たかしの御両親だもの、大丈夫、信じて良いはずだ。
組んだ腕からコートをとおして私の鼓動がたかしに伝わってしまうかと思うくらいだった。
「door、黙っているけど大丈夫?」
「ちょっと緊張してる」
「平気だってば、うちの親も結構さばけてるから」
「それなら良いんだけど…」
年越しは二人で過ごして元旦にたかしは実家に戻った。今日はほとんど私を迎えに来たようなものだ。最寄り駅まで迎えに来てくれれば良いと伝えたが、たかしはわざわざ部屋まで迎えに来てくれた。素直に喜ぶどころか逃げ出さないかと監視されているような居心地の悪さを感じていた。でも私一人だったらもしかしたら逃げ出していたかも知れない。

 住宅街の真ん中にたかしの家はあった。初めて見る。ここで彼は育ったのだ。私の知らないたかしがここに居たんだろう。この街で育ち、友だちと遊び、いくつか恋愛もしたのだろう。そう思うとその家になんだか親しみが湧く。これから会う御両親も私の知らないたかしを知っていて、私は彼等の知らないたかしを知っている。どんな御両親だろう。
「ちょっと、…たかし、深呼吸させて……大丈夫かなぁ」
「doorは細かいことを気にし過ぎなんだよ」
そう言いながらたかしは扉を開けた。
「ただいま~、連れてきたよ~」
廊下の向こうから御両親がいらして上がるように勧めてくれた。たかしは母似だったようだ。簡単に御挨拶をしてたかしの家に上がった。

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ポコッと音がしてケースが開くとずいぶん小さなパヴェダイヤのリングが入っていた。
「小指にして」
私は左手の小指に指輪をはめる。ぴったりだった。
「どう?これならしてくれる?」
それは私達の折衷案のようだった。無責任にイエスといいたくない私と、それでも示したい彼の意志がひとつの小さな形になっていた。もし立爪の婚約指輪なんかだったら、そうでなくとも薬指用だったらやはり心の中に抵抗を感じただろう。けれど指輪というものを贈ることで彼の意志はしっかりと私に伝わっていた。
「ごめんね、気を使わせちゃったね。なんて言ったらいいか…」
喉が詰まって言葉が出て来なかった。たかしは私の顔を見ながら静かに微笑んでいる。
「…ありがとう、とっても嬉しい」
「ほんと?」
頷きながら自分の意志を押し付けること無く私の気持ちも尊重してくれる彼とだったら、この先も上手くやっていけるに違いないと思った。
「こんなに気の効いたものを貰ったのに、なんにも芸がなくて申し訳ないんだけど」
私はマフラーの包みをたかしに渡した。たかしは包みを開けてマフラーを取り出した。
「ありがとう」
「向こうに行ったら必要無いかも知れないけど、風邪引かないようにね」
「うん」
「私の事だからたくさんメールしちゃうかも知れないけど、返事はいいからちゃんと仕事をしてね」
「おいおい、別に今日でお別れじゃないんだからさ」
「うん、これ素敵、嬉しい、ずっとする」
歪んでしまいそうになる口元を見せまいと思わず俯いてしまった私の頬をたかしの手が撫でる。嬉しいような少し恥ずかしいような甘酸っぱい素敵な気持ち。

照れくさくなって私は急いで話題を変えた。
「ねえ、引っ越しは何時するの」
「うん、年内にやっちゃいたい。正月doorのところで過ごして良いだろ」
「うん」
「実家に帰ったりするの?」
「ちょこっと顔は出さないといけないと思う」
「何日?」
「いつもは2日だけど今年はどうなのか…妹たちの都合もあるし、明日にでも聞いてみる。たかしは実家に帰らないの?」
「それなんだけどさ…」
「…?」
「ちょっとうちの親にあってくんねえ」
「えっ、…御挨拶に伺うの?」
なんだか急に胸がドキドキして来た。たかしは親に何と言っているのだろう。
「だめ?」
「ダメじゃないけど」
「別に結婚するとかしないとかじゃなくて、doorの事を話したら正月に連れてこいって言われてるんだ」

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 年末は慌ただしく過ぎて行く。
 結婚式の日に大きく動いた気持ちはいつの間にか日常の中に埋没していった。どうしてどちらかを選ばなければならないのか、頭では理解できてもどうしても心が追い付いていかない。選択を迫られていること自体に理不尽さを覚えていた。
 たかしは連日日付けが変わらなければ帰って来なかった。それでも毎日私の部屋に来て私達は毎晩抱き合って眠った。私は何度も何度もすべてを捨ててたかしと一緒に静岡にいこうと考えた。けれど何度考えても、やっぱりもう少しだけここに残ろうと考え直すのが常だった。
 たかしだけが私にとっての総てじゃない。そう考えてしまう私は冷たいのだろうか。もし私がたかしの立場だったら私のことを愛していないのねと詰め寄ったかも知れない。けれどたかしはそれをしなかった。ずっと私を見守っていた。

 クリスマスイブに約束していた食事の予約を入れる余裕もなかったようで、私は勝手に高層ビルのチーズフォンジュの店に予約を入れた。たかしは前日も休日出勤しているような状態で時間に間に合うかどうか私は心配していた。クリスマスプレゼントはジルサンダーのマフラーを選んだ。あきたりだけれど趣味のうるさい彼に何を選んでいいか良く分からなかったからだ。
 内緒で編んでいたセーターは途中でベストに変更されてそれでもお腹の辺りまでしか出来上がらなかった。以前はテレビを見ながらあっという間に編めたものだから充分間に合うと思っていたのだけれど、ブログばかりの毎日では編み棒を手に取ることも忘れていた。

 たかしは約束の時間からに15分程遅れて走りながらやってきた。コンタクトを入れてくるのを忘れてきてしまったのに一目で彼だと分かる。そばを通ったカップルの女の子がたかしを振り返り目で追っていた。私はそれを見て少なからず優越感に浸る。中身も良いけれどガワだってそれなりには大切だ。素敵デショ、ワタシノモノヨ。私は相変わらず彼のコート姿にすっかり満足していた。
「ごめん、遅れた」
私は抱きつきたい衝動にかられたけれど、黙って彼の腕をとって歩き始める。
「こっちこそ無理させちゃったんじゃないの」
「クリスマスイブだぜ、当たり前だよ」
少し上がった息が白かった。Xmas
 レストランでの食事は会話が弾んで楽しかった。もう少しでこんなふうに一緒じゃなくなるかと思うと私の胸は痛む。どうしても静岡行きを決断できない自分が申し訳なかった。
「doorこれ、クリスマスプレゼント」
たかしはごそごそしながら一目見ただけで中身の明らかな小さな包みを私に差し出した。
「たかし、私それ受け取って良いかどうか分からない」
静岡行きの決断も出来ない私に婚約指輪を受け取る資格があるとは思えなかった。戸惑っている私を見てたかしは悪戯っぽく笑った。
「うん、御期待の物と少し違うかも知れないけど、受け取ってほしい」
たかしは自分で包みを開け始めた。不思議に思いながら彼の手先を見つめる。彼の手の中でその包みは本当に小さく見えた。

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今宵は七夕。
離ればなれに暮らす恋人達が年に一度だけ逢える日です。
 
 天帝の織姫が仕事に励んでいたので牽牛とめあわせてやったらお互いに相手に夢中になって仕事もしない。それではと年に一度しか逢えなくなってしまったと言う、悲しいお話です。
 好きな人に逢えない辛さや切なさが、今とても分かるので、今年ばかりは心から星空が見たいと思います。
 巡り会わなければ仕事に励んでいられたのに、出会ってしまったために返って辛い思いをする。一時も離れたくない、いつもずっと一緒に居たい。好きなんだもの当たり前ですよね。
 好きであればずっと一緒にいくらでもいられる。そんな子供のころの恋愛と違って大人の恋愛は少しほろ苦く、より切ないような気がします。
 それでも一緒に成長して行けたらイイと言ってくれる人と出逢えたことはとても幸せなことだとつくづく思っているのですよ。
 今東京は微妙に曇り空。夜には晴れてくれるようにハラハラしながら見守っています。あの人もきっと同じ気持ちだと思うから。
今夜、星空に向かってつぶやきます。
「逢いたい」と。
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「いい結婚式だったね」
たかしは先ほどまで女の子が座っていた席に腰掛けた。
「そうね」
話の接ぎ穂は喧噪に巻き込まれて漂って行った。二人とも黙ったまま相手に言うべき言葉を探している。ここで誤魔化してしまうのは私達ではなかった。
「私達にもいつかこんな日が来るのかしら」
絡み合わなかった視線がようやく交わる。
「僕は来てほしいと思っている」
「あなたが旅行中にやっていた例の仕事が繋がりそうなの」
たかしの表情は変わらなかった。
「うん」
「でも私あなたと離れたくない」
「うん」
私達はしばらく目で会話していた。そこにあるのはただ相手を求める気持ちだったのではないだろうか。
「どうしても今はどちらかを選べる状態じゃないわ」
たかしはゆっくり瞬きをした。そして口だけで微笑んだ。
「別に急がなくていいさ」
「無理していない?」
「していないって言ったら嘘になる」
「ごめんね」
その顔を見るのが辛くてたかしの肩に頭を預ける。
「俺さ~、バイク持っているんだよね」
「えっ」
「あんまり乗らないし、アパートのところに置いとけないから実家に置いてあってさ、
だから来る」
「私も行く」
確かな保証は何処にもない人生だけど、私らしく、彼らしくそのままで生きて行きたかった。泣き出したいような衝動にかられ、歪んでしまった私の唇の端に彼の指が触れ、たかしは微笑んでいた。のどの奥はひりひりと痛んで言葉が出て来ない。
「まだどうなるか良く分からないの。案外早くダメになって、しっぽを巻いて都落ちするかも」
たかしは頷いた。
「バイクに乗っていたなんて初めて知った」
たかしは再び頷いた。もしかしたら、声が出なかったのかも知れない。


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 私には特に知っている人も居ないので置いてあった椅子に腰掛けて料理を食べていた。たかしは向こうで誰かと話し込んでいる。そこに女の子がやってきた。4.5才だろうか。薄いピンクのレースの服がとても可愛らしかった。両親は向こうで話し込んでいるらしい。誰か相手になってくれる人を探しているのだろう。
「こんにちは」
「こんにちは」
「お名前は?」
「わたなべさやか」
「さやかちゃんなにか食べたいものがあったら取ってきてあげるよ」
さやかちゃんははにかんだ。
「ケーキとジュース」
自分の皿を席に置いてケーキを取りに行く。ケーキの皿を渡すと消え入りそうな声でありがとうと言った。彼女と二人でな取り留めもない話をする。彼女はは椅子に座り、足をぶらぶらさせながらゆっくりケーキを食べていた。
「さやかちゃん、大きくなったら何になりたいの?」
「えっとねー、ケーキやさんになりたかったんだけど、やっぱりお嫁さんにする」
「なんで?今日の花嫁さん綺麗だったから?」
女の子は頷いた。
「だけど花嫁さんの服を着られるのは1日だけだよ、それでもいいの?」
女の子は少し困った顔をしていた。
私は大人気ないのは承知していた。禅問答の問いを彼女に投げかけて欲しかった。問いに意味はなく、その問いを味わうことで自分の答えを探るかのような。あるいはなにかのお告げを伺うような
「さやかちゃんのママも花嫁さんだったんだよ」
「そうなの?」
「花嫁さんになって、さやかちゃんが生まれてママになったの」
なにか言いたげな女の子の唇はクリームの脂がついてつやつやと光っている。ピンク色の頬と唇のバラ色が抱き締めたくなる程愛らしかった。
「ケーキやさんになったら花嫁さんになれる?」
「なれるよ、ケーキやさんになって、花嫁さんになって、おかあさんにもなれるよ」
彼女はニコニコしながら実をよじって考えていた。そのかわいらしい様子に私の心の古傷は痛んでいた。
「おかあさんにはなりたくないの?」
「わかんない」
「さやかちゃんのお母さんはいつも楽しそう?」
「わかんない」
「そっか」
ケーキを食べ終えて椅子から滑り降り彼女は母親の近くに行った。母親に私を指し示し、母親と私は目顔でお互い挨拶をする。
 分からない、やっぱり確かな保証などどこにもないのだ。ただ今の気持ちを持ち続けていられたら幸せになれるのだろう。第1章を書いた時の詩で「吐息はため息に変わり、愛は無関心に変わる」と書いた。それでも初めから諦めては何も手には入らない。
 たかしが話を終えて私の方に近付いてきた。


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