秘密の扉

ひと時の逢瀬の後、パパとお母さんはそれぞれの家庭に帰る 子ども達には秘密にして


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 月末近くに生理が来た。おかしい。前回の生理日から23日しか経っていない。ずいぶん早いと思った。うそでしょう。まだ38になったばかりだ。認めたくない単語は脳裏に浮かべずに、うそでしょう、うそでしょうと何度も繰り返す。じわじわと不安感が沸き上がってくる。まだこれからなのにちょっと待ってよ。お願いだからちょっと待ってよ。私の身体、もう少し待って頂戴。これからなのに、これからなのに。
 認めたくなくて婦人科に行く勇気もでない。あの時「出来ちゃったら産もうかな」と言ったときに、パッと輝いたたかしの顔が忘れられない。あんな風に喜んでくれるなんて思わなかった。その後喧嘩になってしまったけれど、いつも彼が道行く子ども達に暖かな眼差しをかけていることを私は知っている。それを見るたびにいつもちくりと私の胸は痛んだ。彼とこれからどうするのかハッキリ決めなくてはならない。
 私と別れてもっと若い人と幸せになった方が良いのにといつも思っていた。心のどこかで自分はもう半分終わってしまった人間で彼はこれからの人だと思っている。男性は多少年齢が行っても若い女性と結婚すれば子供なんていつでも作れると思っていた。だから彼に対してそんなに後ろめたくはなかったけれど、正直言って私と結婚するなら子どもは出来ないかもしれない。結婚自体を具体的に考えるまでもう少し時間が欲しかったし、たかしにはどこかつかみ所のないところがあってそれが何なのか私にもよく判らなかった。だから人生のパートナーとしてどこまでやっていけるのかまだ見極めることは出来なかった。せめてもう1年しっかりと見極めてから決断したかった。

 けれどタイムリミットは容赦なく迫ってくる。体力的にも仕事をしながら子どもを育てるのは多分もう無理だろう。以前だって切迫流産で仕事先に迷惑をかけた。子どもを取るか、仕事を取るかと言われたらもちろん子どもを取る。けれど、そこからはもう二度と元のレベルの仕事は来ない。詰まらない仕事や半端な仕事からもう一度信頼を築いていかなければならない。それだって子どもが熱を出さないかいつも冷や冷やしながら睡眠時間を削ってこなしていたのだ。


 折角戻った旧姓からまた名前が変わるのもいやだった。仕事は旧姓をずっと使っていたから手続きの煩雑さやいちいちしなくてはならない説明が煩わしかった。名前が変わるというのは自分のアイデンティティが変わることだ。
 一軒の家に住んで「Kです」と電話に出ると「Gさんではないですか」と言われ「はいGです」と答えること。仕舞いには夫に結局君はKの家の人間になりたくないんだなと言われたこと。今時この人は何をこだわっているのかと考えながら、その向こうにいる彼の家族のことを考える。そんな風に思われているのかしら。慣れ親しんだ名前を使い続けることに私はこだわった。私はKさんでなくGさんだ。いくら結婚したって、私という人間が変わるわけではない。同様にたかしと結婚したら今度はFさんと呼ばれ自分の名前にこだわったら彼の家族になんと思われるだろう。
 自分がこだわりすぎているのだと言うことは百も承知の上で、それにしても彼の名字が私の名前の上につくのは妙な感じだった。口に出して言ってみると知らない人の名前のように響いた。そういう違和感をたかしに説明して理解してもらえるのかどうか自信がなかった。



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Photo byねぇもうけんかはおわりでしょう
こっちへ来て耳元でささやいて
優しくキスしてちょうだい
楽しくお話をしましょう
だからこっちへ来て
あなたのこと
もっと知りたい
黙っていないで
もっとおしえて

Photo by: NOION


気分は変わったのですが、何だか調子が今一歩
今日中に調子を戻すようにしたいです

そんな私に愛の手をw
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彼の旅行の日が近づいてきて、たかしは忙しそうにしていた。休日も準備に追われてなかなか逢うことができなかった。彼は彼で好きにすればよいと考えていた私は何だか少し寂しくなってくる。
「今夜うちに来るでしょう」
「んー悪いけど中川達と飯喰う約束しているから、ごめんな」
「そう」
不思議なものだ。行こう行こうと誘われるときは行きたくならない。こうやって彼一人で楽しそうにやっているのを見ると自分も一緒に行きたくなる。けれど、もう今更の参加は無理だ。
変な意地を張らなければ良かったと後悔しながら、もし一緒に行くことを決めていたとしたらきっと嫌で嫌で堪らなかっただろう、とも思った。何だか少し彼との間に距離を感じてしまう。そうだ、夫との時はこうやってすれ違っていったのだ。今のうちに何とかしなければ。次は必ず一緒に行こう。ダイビングだって、ずっとライセンスを欲しかったのに機会がなかっただけだ。たかしと一緒に色んな海を潜ったらきっと楽しいに違いない。今度は必ず、行こう。素直になろう。

「いよいよだね、気を付けて行ってきてね」
「あれ?何だかずいぶん寂しそうだね」
「うん、やっぱり行けば良かったかなって」
「んだよ~だから…」
私はたかしに抱きついて言った。
「ごめん、だけどこんなに寂しくなるとは思わなかったんだもん、旅行で逢えないって言うだけじゃなくて、このところあなたがずっと忙しそうに楽しそうにやっていたから何だか寂しくなっちゃって」
「次は二人で行こうな」
「うん、みんなとでも良いけれど始めっから私の予定も聞いて」
「わかった、それじゃ行ってくる」

 たかしを送り出したあと今頃彼が何をやっているのかそればかり考えていた。仕事に追われながらもブログで遊び、生活自体は充実しているはずだったのに胸の中は空っぽだ。出かける前にたかしは2.3日置きに電話するよと言っていたが、一度お土産の確認で連絡が来ただけでそれきり何の音沙汰もなかった。

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風邪直りません……orz 以前に書いたボツものでごめんなさい

ボツものなので面白くないです

もう少し状態が良くなったらコメントレスします



あ~ぁ、もう毎日真面目な話ばかり書いているので自分で息が詰まって来ちゃいました~(笑)
何だかオトコや恋愛のことばかり書いている自分に、も~~飽き飽き(笑)
と言うわけで、今日は全く色気のない話。


夏、関西の友達に会いに大阪へ行って来たのね。ちょっと観たいものもあって。新幹線の往復だと、朝早く起きなくちゃならないし、夜早く帰らなくちゃならないし。
それで、深夜バスを利用することにしたの。夜9時に自宅を出て、東京駅からのバス。
安いのも魅力。
夏の暑い盛りだから向こうでの着替えも詰めて。

で、考えたら、バスのなかで寝るわけだからブラジャーしたまま寝るのは嫌だなと思って。
ブラジャーの所にじんましんが出やすいのでそれもイヤだった。

でも東京駅のトイレか何かで着替えるのも面倒だなって思ったのよ。
私そんなに胸大きくないし、エアコンよけに半袖の紺色パーカーを着ていくことにしていたから。
夜のことだしノーブラで、東京駅まで、

   行っちゃえ!

えぇ、電車に乗っていきました(笑)
どうせ誰も見ていないし(笑)<おばさん化始まる



新幹線でダーッと言うのも良いけれど、一晩かけてバスで行くのもいい感じ。
無事大阪駅前について、いい加減朝の明るい日射しの中、さてトイレでブラジャーしよう!って思ったらバッグのなかに


無い!



梅地下のトイレで、一人ボーゼンとしておりました。



朝の7時半にブラジャーなんてどこにも売っておりません。



仕方なくノーブラのまま待ち合わせの日本橋に向かう私。
そこに10時半の待ち合わせだったんです。
どっか駅前にスーパーやデパートぐらいあるだろうし、
うろうろしていれば、なんかあるさ。
えぇ、私わりと行き当たりばったりの性格ですね。



一杯につまったバッグを胸元に抱えて歩く女……

            かなり怪しい


地下鉄の駅でおりて階段を上がるとなんとそこは

            電気街!



下着屋どころか、デパートもスーパーも見あたりません。
ちょっと入った小径もブティックすらない。

30分ほど探し回って唯一あったのが









「制服.セーラー服.下着」

という看板。
いくらなんでも入れません。てゆーか、10時に開かないし。

仕方なくドーナツ屋に入り、朝ご飯をノーブラで食べながらどうしよう…

店員さんに聞きました。

「すみません、この辺で服(下着とは言えなかった)買えるところありませんか?」
「さぁちょっと…」

そりゃそうです。
秋葉原の電気街でそう聞かれたら私だって答えられませんよ。


切羽詰まって9じ頃友達にメールを打ちました。

私、基本的に親指打ち苦手です。10分かかりました。
だって、お店のなかの電話口でそんなこと言えませんよ。

「今、日本橋にいるんだけど、どこかでブラジャー買えるところ知りませんか?」なんて




速攻電話がかかってきました。

「いったいなにがあったの!どうしたの!」

「えーとえーと、忘れて来ちゃったみたい」




10秒ぐらい絶句されてしまいマスタ。

「あの~Aさん…」

「他のものならいざ知らず、こればっかりはサイズもあるしね~」

しかし、大阪の街とAさんは偉かった。

10秒後

「解りました。そのまま真っ直ぐ歩いて、隣の駅まで行くとなんばウォークがあります。そこへ行けば、きっと何とかなるはずです。」

開店5分前のランジェリーショップに飛び込み無事ブラジャーをゲット~~!

ありがとうAさん!
ありがとうなんばウォーク!
ありがとうブラジャー!


あーあ、ほんっと色気のない話


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風邪が酷いので以前に書いたものを
うんと若かった頃の出来事
少し状態が良くなったらコメントレスします、ごめんなさい



ある男のために5年付き合った男をあっさり捨てた
彼は私の目の前で
素手で窓ガラスを破り
自分の脚に
包丁を突き刺した

太股からドクドクと溢れてくる血が
ベッドに染みていく
タオルを当てたくらいでは止まらない
次第に顔が蒼白になってきて
「救急車を呼んで」とつぶやく声に我に返った

足の付け根を何かで縛り
遠くから聞こえてくるサイレンに逃げ出したくなる
「お願い、だから別れないで」といわれても頷けなかった
心の温度計の目盛りは
0度から
どんどん下がっていく

救急隊員がトランシーバーに向かって
「出血、中」と報告している
こんなに血が流れているのに「中」なんだ
その辺り一面血だらけだった
血の甘い香りが立ちこめる
甘い甘い血の香り

救急車に同乗して大学病院まで行く
暗い待合室で
刑事に状況を説明した
「て言うことはつまり別れ話のもつれかな」
そうか、これが別れ話のもつれってやつなんだ
初めて気がついた

病院に彼の父親が来て
「女なんていくらでもいるさ」と私の顔を見ずに言う
妙に白けた気持ちで私は心の中で頷く
私も彼の顔をまともに見られなかった
きっと能面の様だったろう
心と同じように凍りついていたはずだ



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オーバーラップ 1から読む

「それに、さっき恋愛感情は持っていないって言ったけれど、好きになりそうで怖いっていったいどっちよ、それって期待しても良いって事だよね」
佐々木は私の目を真っ直ぐに見つめて言った。
私は答えられなかった。
「別にすぐって訳じゃなくても良いんだ、だけど君がもし彼との将来で迷っていることがなにかあるんだったら、その時にちょっと僕のことを思い出してもらえれば」
「佐々木さん、私は天秤に掛けるようなことはしたくないの。佐々木さんは佐々木さんで彼女と結婚すればいいじゃない。私と彼との間に入って来られないと思う」
少し感情的になってしまった。恋人への愛情を疑われたような気がしたからだ。
「そんなにムキになるようなことじゃないじゃないか、別に僕のことを好きになってくれって言っているわけじゃないんだし」
その後どういう会話をしたのか実は余りよく憶えていない。もう、何を食べたのかも憶えていない。何だか頭に血が上ってしまったのだと思う。いつの間にか食事が終わってコーヒーも飲んだはずなのに何を話したかの記憶がふっつりと途切れている。

冷たい風の吹く中駅まで送ってもらう途中
「ま、僕もこれから年末に向けて忙しくなってくるからもうそんなに連絡は出来ないと思うけど」
と言われて私は少しホッとした。
山手線に乗り込みながら何でこんな事で動揺しているのか自分で自分が変だと思った。佐々木とのやり取りは確かに楽しかったけれど私は何より恋人を大切に思っていた。こんな風な面倒ごとを抱え込みたくなかった。それよりも恋人とのトラブルをどうにかしなくては。彼とのことを迷っているから付け込まれるのだ。
 しばらく佐々木のブログは2.3日置きに更新されていた。やっぱり彼の映画評は面白かったから、更新されるとつい見に行ってしまう。私は昼間彼の所にコメントを残すことはあってももうチャットのようなやり取りはなかった。電話もかかってこなかった。そのうちにブログの更新もなくなって、いつの間にかブログもなくなってしまった。

 もう諦めて止めたものと思い、私はオーバーラップの連載を「いわゆる認識の相対性」に書き始めた。もちろん彼の本名は佐々木ではないし、彼の人物と事実をそのまま書いているわけでもない。フィクションもかなり入っている。その頃「いわゆる認識の相対性」は本書評ジャンルにあったのだ。しかし年が明けて1月12日の「オーバーラップ6」を境に書けなくなってしまった。

なぜか。
それは「秘密の扉第3章」の部分に相当するからなのですが、第3章を書くかどうかは未定です。 
              「秘密の扉第2章 オーバーラップ」完

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物質的な物、経済力、実際的
経済力
 若い頃は別にお金なんて無くても十分楽しかったし物質的なこともあまり興味がありませんでした。ブランド物も宝石も欲しいとは思わなくて、使うのは飲み代、本代、旅行代金。精神的に豊かに、楽しく暮らせていけばいいじゃないって思っていました。着られないほど服があっても仕方がないし、だだっ広いところに住んでも掃除が大変。馬鹿高いレストランで食べるより自分が作った方がよっぽど美味しい。今でも基本的にはそう思っています。でも最近少し変わってきたかも。あればあったで色んな世界が広がることに気が付いたのです。いらないって思って拒否しているようでいて、実はお金が無いのに努力するのが嫌で否定していたのかもしれません。
 私だって贅沢は嫌いじゃありません。誰でもそうだと思います。贅沢をするまで行かなくてもお金で得られるものは物だけではないことにようやく気が付いたのです。様々なサービスを買うことによって自分自身がもっと豊かにも成れるし、時間すら買うことが出来る。例えばISDNでネットに繋いでいた頃に比べると光ファイバーしかも専用線(ちょっと自慢)の威力はもの凄いです。肝心のアメブロが重くて仕方がないのですが(最近改善されていますよね)w
 掃除が大変で広いところに住めないと思ったら人を雇えば良いだけの話。何も嫌いなことをいやいやするよりはその時間を有効に使えばいいのですから。バックパックも楽しいけれど、一流ホテルで最高のサービスを受けるのも快適で気分の良いものです。ガンなんかにかかると命すらお金にかえられる部分があって、それは気分の良いものではありませんが実際にはそれが現実です。
 例えば一般的に同じくらい魅力的な人が二人いて片方が年収2000万、片方が500万だったら迷わず2000万の方を選びますよね。ハイ、そこのあなた!佐々木さんの年収とたかしの年収じゃないですよw
 お金があると色んなことに積極的に挑戦できるし、出来ることの自由度も格段に上がります。何だか当たり前のことを大層に書いておりますが私、実は最近までそのことに気が付かなかったのですよ。ある意味でお金はその人の評価を測る一つの側面でもあります。特別に執着する必要はないけれど、かといって生活していくためには欠かせない重要な要素。

物との付き合い方
 自分が本当に気に入った物に囲まれて生活していくと豊かな気持ちになれます。その気持ちの潤いが人に余裕を与え、その余裕がその人の魅力になって反映されるのではないでしょうか。
 身につけている物のセンス、その人に似合っているかどうかは重要なポイントだと思います。私はアースカラーが好きですが自分に似合わないことが分かり泣く泣く捨てたことがあります。どうもハッキリした色味の物が似合うようです。その辺は専門家の人に相談してみるのも良いかと思います。
 良いものは本当に長く持つもので、今でも私の実家には祖母と曾祖母の嫁入り道具の箪笥が残っています。削り直して塗装し直せば立派に使えます。ケヤキの一枚板で出来ていて今買ったら何十万するものでしょう。曾祖母の箪笥はいくつもの思い出と歴史を刻んで100年以上経って尚使っているのですから本物って凄いなと思います。えぇ、密かに狙っているのですよw3人姉妹なので誰がババを引くかw古臭いからと捨ててしまえばただのゴミです。でも良い物は直せるし長く使えば愛着が湧いてくるもの。
 とは言っても余り高価なものはなかなか買えませんね。何も高価な物を身につけるのが良いことだとは決して思いません。その辺の兼ね合いは自分の経済力と相談です。無理をして見栄を張っても良いことは一つもありません。ブランド物のお財布に1000円札しか入っていないのでは少しアンバランスな気がします。安いものでもじっくり探せばきっと気に入る物は出てくると思うのです。

金銭や物と上手に付き合っていくことの出来る人ってやはり魅力的だと思います。私もこれからはなるべくガンガン稼いで選択の自由を手に入れたいし気に入った物に囲まれて暮らしていきたいと思っています。

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ついと

後ろ向きになってあごを上げた

あなたの肩が震えてる

あなただって辛いんだ


あたりまえのこと

今更ながら気が付いた

自分のことばかりでごめんね



風邪を引いてしまいましたw節々が痛いので熱があるみたいです
でも記事のストックがあるので明日も更新できま~すw
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「それは…これから一年か二年かけて、二人でそう言う関係が出来てくれば良いんじゃない?」
「だからそう言うって関係ってどういう関係だよ?」

たかしに突っ込まれて上手く答えることが出来ない。お互い束縛し合わず、甘えすぎず、助け合える関係。でもこんな抽象的なことをイメージしてもそれは現実にどういう関係なのだろう。
「ごめんなさい、まだ上手く言えないわ」
たかしはふてくされたままそっぽを向いて
「なんだよそれ」
とつぶやいた。私は自分が相手を甘やかすから甘えてくるのだと言うことは解っていた。原因は彼ではない、自分にあるのだ。自分が彼のためにいろいろしたくなるから自分自身が疲れてしまうのだ。けれど愛するというのはそういうことではないのだろうか。好きだからその人に喜んで貰いたい。嬉しそうな顔が見たい。
 けれど初めのうち喜んでくれていた着替えのYシャツに丁寧にアイロンをかけることも自分の仕事の納期を気にしながら彼のために時間を割き、彼の好きなベシャメルソースを根気よく作ることも、もはや当たり前になってしまった。初めのうちはまめにかけてきた電話もない。
 それはもしかしたら彼にとって私もそうなのかもしれなかった。初めのうちは彼の前でブログなんてしなかった。彼と一緒にいるための時間を大切にしたかったからだ。けれど、彼が居ることが日常になってしまうと私は自分の好きなことだってやりたい。本だって読みたい。要するに距離感の問題なのだ。
 ふと前の夫とのことを思い出す。なんでも二人で楽しんでいたのに彼が私の入り込めない世界を作ったのだ。毎日2時間も3時間も友人と夜中に電話で話していた。クリスマスイブの夜さぁこれから御馳走を食べようとしたときに電話が鳴って、それから2時間半待たされたこともあった。相手にゆっくりとがっかりして行く生活、それが結婚というものだ。
 私はたかしにがっかりしたくなかった。魅力的な青年がもっと魅力的な大人の男になってゆく過程を楽しみたかった。寝ころんでナイター中継を見ながらお尻をボリボリ掻いたりする彼を見たくなかった。いつも一緒にいるというのはそう言う危険をはらんでいる。今の適度な距離感でこれ以上詰めたくはなかった。しかし、彼の子供が欲しいのもまた事実だ。好きな人の子供が欲しいというのは女の本能のようなものだ。
他の人は知らない。少なくとも私はそうだ。

腕の長い彼にピッタリのセーターを内緒で編み始めてはいたけれど気に入ってもらえるかどうかは判らない。お洒落な彼にはうっとうしいだけかもしれない。


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「それに今の状態だって俺は嫌だね。ちゃんと夫婦として生活したいんだよ。周りの人に祝福されて、認めて貰ってきっと幸せになれるよ」
 こんな喧嘩の最中にこれはプロポーズなのだろうか。けれど、付き合い始めてまだ4ヶ月。そんなに早く決めてしまって良いのだろうか。たかしは良くとも、私にはこの先ずっと一緒にいられる自信はまだなかった。彼はどこか私に理解できないところがある。もちろん年齢の差があるからそれは当たり前のことなのかもしれないけれど、何十年も一緒にやっていけるという自信が無かった。それにこんなに早く結論を出すなんて余りに軽率ではないだろうか。確かに今は燃えるような気持ちがある。けれどこの先、多分落ち着いてくるだろう。その時にならないと冷静に判断なんて下せない。冷静に下した判断だって、私は過去に間違ったのだから。
「ねぇ、冷静になりましょうよ。もう少しあと一年くらい結論は待って頂戴。あなたも私も知り合ったばかりだし、一生のことなんだからこれからじっくり考えないといけないわ。好きという気持ちだけで結婚するわけには行かないのよ。もう少し付き合って、もう少し気持ちを静めてそれから冷静に判断しないと」
「じゃぁ、なんで子供を作るとかいっているわけ?訳判かんねーよ」
私は大きく息を吸って呼吸を整えた。冷静によく考えて話さないといけない。
「落ち着いて聞いて頂戴」
たかしは頷いた。
「女の人は子供を産める年齢があるのよ」
「知ってるよ、そんなこと」ao
「まだちゃんと医者に調べて貰った訳じゃないから分からないんだけれど、この間から少し生理の周期がおかしいの。もちろんただのホルモンバランスの乱れかもしれない。だけどどちらにしても年齢的に子供を産む限界の所なの」
たかしはふてくされた顔でじっとこちらを見ている。
「だからもし結婚を考えるのならもっとじっくり考えるべき。だけどそれを待ってから子供を作ったのでは間に合わないの。どうも私は子供が出来にくい体質みたいだから。出来たら出来たですぐに結婚すればいいわ。そう言う考え方っておかしいかしら」
たかしの答えはなかった。空の一点を見つめて、なんのリアクションも示さなかった。
「もちろん子供が欲しいのは私だからあなたは責任を感じなくても良いの」
「お前そう言う理屈はないだろう」
「私の優先順位ではあなたの子供が産みたい。あなたと結婚したいと今は思わない。だから子供が出来なかったらあと1年か2年くらい考えてから結論を出すわ」
「何度言われても解んねーよ、俺の子供は欲しいけど結婚したくないって言う理屈が」
「だから一年先に結論を出したあとじゃ遅いかもしれないから言っているのよ、そりゃぁ順番が逆だってことは解っているわ。でもこっちは切羽詰まっているの。結婚なんかいつでも出来るわ」
「じゃぁ寄りかかって生きていくのは嫌だって言うのはどうなったわけ?」


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