アメリカ支配層の内紛(その7:私的な情報機関)

 

ドナルド・トランプ大統領は自国の情報機関や治安機関を信用していないようで
、​私的な情報機関を設置​しようとしていると伝えられている。
本ブログでも書いたように、その中心は1997年に傭兵会社のブラックウォーター
(2009年にXE、11年にアカデミへ名称変更)を創設したエリック・プリンスだという。

この人物は海軍の特殊部隊SEAL出身で、熱心なキリスト教原理主義者。今は未公開株を取り引きするフロンティア・リソース・グループを経営、軍事的サービスを提供するフロンティア・サービス・グループの会長を務めている。プリンスの姉、ベッツィ・デボスはトランプ政権で教育長官を務め、夫のディック・デボスは「アムウェイ」の創設者。また副大統領のマイク・ペンスは親友のひとりだという。

大統領選でロシアとの関係修復を訴えていたトランプは支配層の好戦派、
つまり1992年2月にポール・ウォルフォウィッツ国防次官(当時)を中心に
作成された国防総省のDPG草案(通称、ウォルフォウィッツ・ドクトリン)に
賛同している勢力から激しく攻撃された。
これは1991年12月にソ連が消滅、
アメリカが唯一の超大国になったと認識して作られた世界制覇プランだ。

冷戦の終結で世界が平和になると考えた人は
冷戦の本質を見間違っていたと言えるだろう。
ライバルだったソ連が消えたことにより、
西側、特に米英の支配層は民主主義者を装う必要がなくなり、
侵略戦争を公然とはじめた。
それが西側支配層の正体だったのだ。
実際、アメリカが1950年代からソ連や中国に対する
先制核攻撃を計画していたことも明確になっている。
この計画を潰そうとしたジョン・F・ケネディ大統領は1963年11月に暗殺された。
(この辺の詳しい話は本ブログで何度か書いているので、今回は割愛する)

ウォルフォウィッツ・ドクトリンに従い、
1995年2月にジョセフ・ナイ国防次官補は
「東アジア戦略報告(ナイ・レポート)」を作成、
日本をアメリカの戦争マシーンへ組み込む作業が本格化した。
この報告書が発表されるより前の細川護熙政権、
あるいは2009年から10年にかけての鳩山由紀夫政権は
プランすると考えられたようで、潰されている。
冷戦後における日本の政治、経済、軍事、安全保障を
このドクトリン抜きに考えることはできない。
これに触れない議論は意味がないとも言える。

好戦派が担いでいた候補者がヒラリー・クリントン。
上院議員時代にはロッキード・マーチンの代理人と呼ばれるほど戦争ビジネスに近く、
国務長官時代に投機家のジョージ・ソロスの指示に従って政策を決めていたほか、
リン・フォレスター・ド・ロスチャイルド(エベリン・ド・ロスチャイルドの妻)と
頻繁に連絡を取り合っていることも漏洩した電子メールで判明している。
つまり巨大金融資本ともつながっているのだ。

クリントンを公然と支援していたCIAの幹部だった人物もいる。
マイク・モレルがその人だ。
2011年7月から9月、また12年11月から13年3月までCIA長官代理を務めている。
なお、2010年5月から13年4月まで副長官。
CIAから離れたのはクリントンを支援するためだった。

2011年春、アメリカ、イスラエル、サウジアラビアの
三国同盟を中心とする勢力はリビアとシリアに対する侵略を始める。
その主体はサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)や
ムスリム同胞団で編成された傭兵部隊、つまりアル・カイダ系武装勢力だ。

リビアでは2011年10月にムアンマル・アル・カダフィ体制が倒されたが、
そのときにアル・カイダ系武装勢力とNATO軍との連携が明確になった。
リビアから戦闘員や兵器がシリアへ運ばれたことも露見している。

そこでバラク・オバマ政権は「穏健派」を支援すると主張するのだが、
それを否定したのがマイケル・フリン中将が局長を務めていたDIA。
オバマ政権へ提出しているが、
その中でシリアにおける反乱の主力をサラフ主義者、
ムスリム同胞団、そしてAQI(アル・カイダ系武装集団)だと指摘している。
こうした武装勢力が西側、湾岸諸国、
そしてトルコから支援を受けていることも明らかにしている。
つまり、オバマ大統領が言うところの穏健派は過激派だということ。
DIAはアメリカ政府が方針を変えなければ
シリア東部にサラフ主義の支配地が作られると予測していたが、
これは2014年にダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)という形で現実になった。
トランプは当初、このフリンを国家安全保障補佐官に選んだわけだ。

クリントンの暗部を暴く電子メールがWikiLeaksなどが公表すると、
ロシア政府にハッキングされたというキャンペーンが
民主党や有力メディアによって始められる。
それにCIAやFBIが協力しているが、そうしたハッキングがあったわけではない。

NSAの通信傍受システムを設計する一方、情報機関の不正を内部告発した​
ウィリアム・ビニー​も指摘しているように、NSAは全ての電子メールを記録している。
削除されたメールを含め、FBIが要請すればNSAは電子メールを渡すことが可能だ。
ロシア政府がハッキングしたという主張が事実なら、
その証拠をNSAは握っているということで、それを出せないと言うことは証拠がない、
つまりハッキング話が嘘だと言うことを意味する。

ダナ・ローラバッカー下院議員によると、昨年8月に同議員はロンドンのエクアドル大使館でWikiLeaksのジュリアン・アッサンジと会談、リークされた電子メールの情報源がロシアでないことを示す決定的な情報を提供する容易があると聞かされた。

この情報をローラバッカー議員はジョン・ケリー大統領首席補佐官に伝えたのだが、この情報はトランプ大統領へは知らされていない​。「ロシアゲート」の幻影を維持しようとしている人間はトランプ政権の内部にもいる。

2017年4月6日、アメリカ海軍の駆逐艦、ポーターとロスから巡航ミサイル(トマホーク)59機がシリアのシャイラット空軍基地に向けて発射され、少なくとも数機は目標へ到達したという。その2日前、4月4日に政府軍が化学兵器を使用、その報復だということだったが、その主張には根拠がない。そもそもシリア政府軍は化学兵器を2013年に廃棄、現在、そうした兵器を保有しているのはアメリカが支援してきた反シリア政府軍だ。その後、その主張を否定する調査結果も出ている。

ジャーナリストの​ロバート・パリー​によると、4月6日の早朝にマイク・ポンペオCIA長官はドナルド・トランプ大統領に対し、シリア政府側は化学兵器を使用していないと説明している。空爆の前、アメリカ側へ通告があり、アメリカ軍もCIAも状況を詳しく知っていた。

6月25日にはジャーナリストの​シーモア・ハーシュ​も同じ内容の記事をドイツのメディアに書いている。ハーシュによると、4月4日に聖戦主義者の幹部が会議を開くという情報をつかんだロシアとシリアは攻撃計画を立て、その内容をアメリカ側へ伝えている。CIAにも直接、ロシアから攻撃に関する情報が伝えられていた。その情報が何者かによって現地のアル・カイダ系武装集団へ伝えられたと推測する人もいる。

現在のホワイトハウスは、大統領がCIAやFBIを信用できないと考えても仕方のない状況にある。現在、特別検察官を務めているロバート・ムラーは好戦派の暗部を隠蔽してきた人物。ジョン・ブレナン前CIA長官とジェームズ・クラッパー元国家情報長官は昨年7月21日にアスペン治安フォーラムでCNNのウルフ・ブリッツァーと対談、もしトランプ政権がムラーを解任したなら官僚は大統領の命令を無視するべきだとしていた。


歴史的に見て、イギリスやアメリカの情報機関、つまりMI6やCIAが金融機関と関係が深いことは本ブログでの何度か書いた。クリントンにはそうした勢力が付いていたのだが、トランプの背後ではイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相の人脈(モサドも含む)が動き始めている。そしてエリック・プリンス。しかも、デビッド・ペトレイアス元CIA長官の弟子と言われるH. R. マクマスターがトランプ政権で国家安全保障補佐官を務めている。シリアやリビアに対する侵略が始まった当時のCIA長官がペトレイアスであり、国務長官がクリントン。権力抗争が収まる気配は感じられない。