「で、手術のほうはどうでした?部長」
「う、うん ちょっと時間はかかったけど おかげさまでうまくいったよ」
「そりゃあそうですよね~?ミコシさん」
「ぼくらが部長のかわりに行ったから、部長も安心してメスをふるうことができたんですよね~」
「ぼ く ら が?」
ミコシさんは汗をふくしぐさをしながら
「そ、そうだよね」
「あ、で、でも 僕は途中で呼び出しがあって 天使を呼ぶ機械ってのを見たかったんだけど」
「途中で帰ったんだよ」
「・・・本当に」
「ふ~ん・・それならそれでいいですけど・・・」
「部長は説明してくれないといけませんよねえ?」
「だって 聞いてた話とぜんっぜんちがってましたからねえ?」
「あ、うん ドクロさんごめんよ~ ほんっとに手違いがあってさ 話の行き違いでね」
部長も額の汗をぬぐうゼスチャアをしながら心の中でつぶやく
「ペイント イット ”悲壮の青”!」
部長の腕が蜃気楼のように二重にぶれる
この時、バー「なんと」にいた客の中で 部長の背後に現れた物体を見たものは何人いただろう
部長は、ぼくちんに向かってその秘めた力を放っていたのだ
「ひどいなあ・・・ほんとにぜんぜん話がちがうんですもの」
「なんか、もう 悲しくなっちゃいますよ・・・」
ぼくちんはニジさんに お茶をかけられた時の気分を思い出してしまった
「うん ごめんね・・・で・・・でね?」
「本当に悪いことしたと思っているから これ・・・もってきたの これ」
部長は鞄の中から高級そうな箱を取り出し、ぼくちんの前でつつみをといて中身を見せる
中に入っていたのは 石仮面フィギュアだった
「これ・・ね かわりに行ってくれたお礼としてさ ドクロさんに進呈するよ」
「ほら・・・すごいでしょう これ」
ふたたび 部長の瞳がきらめく
「ペイントイット ”歓喜の黄色”」
「ええええええ!?マジっすか?マジでいいんすか!?」
「ま、まあ、約束だったんだけど」
「ほほほ ほんとにいいんっすか?」
ぼくちんは心の底から湧き上がってくるような、喜びにうち震えて声が震えてしまった
「うんうん さしあげますよ それ」
「あ、あとね これ一応お車代とクリーニング代として納めてよ」
と部長は一枚の封筒を差し出す
「ええ?いいんですか こんなまでもらっちゃって」
「うんうん、迷惑かけたしさ これくらいはさせてよ ドクロさん」
「ペイントイット ”興奮の赤”」
「いやあっ ははは!すいませんね こんなんまでいただいちゃって!」
「あははははは」
ぼくちんは封筒をズボンのポケットにねじこみ フィギュアを手に取る
なんだかすごく嬉しくて 興奮してきた
このとき ぼくちんの心はいいように部長に操作されていたのだ
すっかり部長に 文句たれてストレス発散してやろうという気もうせてしまい
ニジさんとのやりとりも どうでもよくなってしまいながら
つづく
