昨日初日稽古後に観てきました。
不思議で美しくて清らかな世界。
素晴らしかった。
長塚圭史さんの演出も、ほんとに誠実で、それを受けた役者さんたちがまた素晴らしかった。
宮沢賢治役の松田龍平さん。前からステキな俳優さんだけど、井上さんの描く、ピュアで好奇心旺盛で一筋で、それでいて失敗ばかりでちょっと情けない愛すべき賢治さん、そのものに見えました。あんな風に無防備で赤ちゃんみたいに舞台に立てたら…。羨ましくなるほどピュアな存在でした。賢治を彩る役者さんたちの多彩なこと。
3時間半があっという間に感じられましたよ。
農業という仕事を、とてもとても大切に考えていた井上先生。
こんなに尊い仕事が軽んじられては絶対にいけない。また農業をする人々もどんどん知恵を出し合って発展させていかなけれなならない。
賢治の言葉なのか、井上ひさしさんの言葉なのか、観ているうちに2人が溶け合って舞台を動かしているように見えました。
農業。もそうだけど、もうひとつ。
このお話は死者のお話。
いずれ朽ちていくいのち、やろうとしてやり遂げられなかった志の数々。
でも、その志を持つことが大事なことであって、それをどうにかして受け継いでもらいたい。
お話の中で、死神のような車掌さんが出てきて、思い残し切符。というものを手渡します。それを託された人は少なくとも2.3年はこの先生きていく。
ふっと、スペインのサグラダファミリアを思い出した。
ガウデイが始めたこの大建設工事。
100年経っても完成しない。
完成図はガウディの頭の中にあったので、一枚のスケッチを元に完成を目指しているんだって。
でも工事は中断することなくまだ続いて、ついに2030年前後には完成?!するかもしれないという…!ガウディの思い残し切符は次々に渡されたんだね。
だから、
あきらめないで、
そんな大きなことは到底できないのだから、
小さいけど、確かなことを続ければいいんだ。
コツコツと、でくの坊のように不器用だけど、やめないで続ける。
そして、いつかそれを受け継いでくれる人に惜しみなく手渡す。
なんて。
そんなことを好奇心ばかりで、全てが中途半端な自分に言い聞かせた。

観終わったあと、すでにその日もあと2時間ほどで終わろうとするほどの時間だったけど、
雨上がりの夕焼けのような、なつかしさと清々しさと、あったかい思いが私を包んだのでした。