数学的帰納法
最近『論文の捏造』の話題が多いので、実験データの証明にラボノート(アメリカの研究所などでは古くから取り入れられている研究用の記録簿)の取り入れの必要がある、等と先生方と話をしているうちに、自分の研究成果の証明の方法の話から派生して、高校数学の「数学的帰納法」の話題になった。
ご存知の方は多いと思うが、数学的帰納法とは、自然数nにかかわる命題において・・・
n=1 が成り立つことを証明
n=k が成り立つと仮定したときにn=n+1が成り立つことを証明
・・・することによって、全てのnについてその命題が成り立つことを証明する手法、なのである。
私はこれが好きである。数学らしくないが、とても数学的で、数学的思考がないと解けない、興味深い問題である。いや、これほど「解き方が自明」な証明問題はない、といっても過言ではない。
この問題は、「答えから逆算して解く」ととても簡単にできる、という、とても面白い性質があるのだ。だからこの問題が解けない、ということは少ない。いや、どんな問題でも、コツさえ判れば解ける。
教科書に載ってはいないが、こうやると解けるのだ。
n=1が成り立つことを証明
命題のnにk+1を代入し
それを、n=kのときと比較し同じ形に変形
その形になるようにするには元の式をどのように変形すればよいかを考え
具体的にn=k+1を代入した両辺を変形
つまり、「最初に最終形を求めたあと、その形になるようにもとの式を変形」すれば良いのだ。
言い方を変えると、「結果から経過を類推する」ということになる。
これが『証明』といえるかどうかはいささか疑問ではあるが、必ず解けるので気持ちは楽だ。
なにしろ、最終形がわかっているから、高次方程式の因数分解なんか屁の河童でできてしまう。これはやってみた人でないとわからないかもしれないけれど。
数学はどのセクションでも同じことが言えるが、食わず嫌いなところは多くないだろうか。三角関数も指数対数も、微分も積分も、ベクトルも数列も、何かの弾みでマスターしてしまうことが多い。その際たるものが、「数学的帰納法」ではないだろうか。
研究成果においては、
初日の結果が正しいことを証明
任意の日の結果が正しいと仮定してその翌日の結果が正しく導くことができれば
最初から最後まで全ての研究が正しい
とはなかなかいえないところがミソなのかもしれない。ではそういうことで。