かにかに銀 | ドクター鈴木・あめぶろ研究室

かにかに銀

 うちのチビどもは将棋を指す。どうやら女房のお父さん、彼らから見ておじいちゃんに入れ知恵されたのではないだろうか。近所の公民館でやっている「将棋教室」に連れて行ったら、その教室を指導している先生(アマ3段らしい)から、『アマ4級』ぐらいではないか、といわれた。


 実は私は高校時代に「囲碁将棋部」にいた。実態は、囲碁も将棋もあまりしなくて、いわゆるリバーシ、商標名で言うところの「オセロ」にうつつを抜かしていた(もちろん、アマ6級程度の将棋は指せるが)。


 30年近く前の話だが、(今の事情はわからないが)当時大学の願書には『高校時代の部活動』を書く欄があった。当然「囲碁将棋」と書くわけだが、画数がとても多く、「機械工学科」を志願するときなど、手がくたびれて、とても囲碁将棋と書く気力が沸いてこなかったことを良く覚えている。


 さて子供たちの将棋。師匠と思われる女房の実家のおじいちゃんの将棋ポリシーが受け継がれていて、結構渋い定石とかを知っている。私も時々お義父さんと刺すが、オーソドックスでとても堅実な将棋になる。


 もっとも、囲碁将棋部にいた私が言うのもなんだが、将棋は「糞」(やはりオセロが一番?)。私は将棋は「かにかに銀」で先手必勝だと思う人間なので、どうも奥深く掘り下げられないでいるのだ。実際、アマ3級?の我が家の子供たちも師匠の義父も、私の指す「先手・かにかに銀」には歯が立たないのだ。


 ちなみに「かにかに銀」とは、いわゆる中飛車で、露払いとして二枚の銀が千鳥足よろしく5筋に攻め入る戦法。おそらく対応策を知らなければ圧倒的なパワーで負けてしまうという、いわゆる「先手の必殺」の戦略なのである。パソコンにバンドルされている「KS将棋」では、『平手レベル2』だったら確実にこの手法で勝てるはずである(っていうか、子供たちも私も、レベル2では負けない)。


 さて今日、将棋を指していた下のチビが妙にご機嫌伺いをしてきた。なんだろうと思ったら、「かにかに銀崩し」を教えて欲しい、ということだ。なんでも学校の友人がやはり将棋を指していて私と同様「必殺かにかに銀」で百戦錬磨状態。うちのチビは彼に全然勝てないのだという。確かに「かにかに銀」は対抗策を知らないと勝てないのだ。


 そこで仕方がないので、その「かにかに銀崩し」を伝授した。同好の方は承知していると思うが、中飛車の飛車の頭(後手からみて5七」)めがけて両翼桂馬を集中させる「返し技」があるのだ。しかし、「かにかに銀返し」を子供に教えるということは、『父親たる私が彼らに勝つためのすべを失う』ということにも繋がる。確かにそれ以降私はチビに勝てなくなってしまった。


 喜ぶべきか悲しむべきか。どなかた第二第三の『必勝法』をご存知でしたら是非、子供たちに内緒で私にだけ教えていただきたい。ではそういうことで。