Amazon書評・『医者の僕が認知症の母と過ごす23年間のこと』
 認知症専門医の笠間睦先生から。
 Amazonに書評を書きました。
 素敵な一冊ですよ。

書評:
 筆者の森田豊さんは、「私、失敗しないので」の決め台詞で有名なドラマ「Doctor-X~外科医・大門未知子~」の医療監修を務める医師です。
 その森田豊さんが、冒頭「はじめに」において、「僕は失敗した。」とカミングアウトします。本を読み進めると、母親に認知症の症状が出始めた頃にうまく初期対応できなかった様子が描かれておりました。
 認知症の早期診断はとてもむつかしいのが現状です。私は2020年まで日本認知症学会の専門医でしたが亡父が一日に2回も車の接触事故を起こすまで認知症を発症していることに気づけませんでした。
 道を忘れて美容院に行けなかったという症状が30頁に記載されております。これは専門的には「道順障害」という症状です。比較的早い段階から起こりますので、この段階で気づけた可能性はあったかもしれません。症状について詳しく記述されておりますので、どんな症状から「ひょっとして認知症?」と気づくべきなのかということを啓発する内容にもなっています。
 診断が遅れたために、振り込め詐欺にだまされて200万円を振り込んでしまうという事件も生々しく描かれています。
 断固として認知症の検査を拒否していたお母さんに対して森田豊さんは、「僕のために検査を受けてください」と頼みました。認知症の人は、頼まれると「役割」を付与された状況となり張り切って頑張ります。認知症診療にまつわる重要なヒントが随所に描かれている貴重な一冊です。