人気アイドルグループ「KAT-TUN」の元メンバー、田口淳之介さんが大麻取締法違反(所持)の疑いで逮捕されたというニュースが流れました
KAT-TUNという文字列は見たことがあるのですが、読み方が分かりません
カツーン? カートゥーン? カトゥーン?
ニュースでなんとなく耳にしましたが正式名称を探しても見当たらないのです
読み方が分からないと、自分がおじさん化してしまったように感じます
そういえば紅白歌合戦に登場した米津玄師さんも読み方が分からず、だいぶバカにされました
悔しかったので、何て読むのか看護学校の若い学生に聞いたらみんな曖昧でした
今のところ、「よねづけんし」さんだと思っています
KAT-TUNと米津玄師、両方とも自信を持って読めた人だけ、僕をバカにしてください
さて、話を戻して大麻です
大麻が体に良いか悪いか、医療上必要かどうかという議論を今回するつもりはありません
自分の診療上は今のところ必要ないですし、全ての薬物はよほどのベネフィットがない限り投与すべきではないというのが基本的な考え方ですので、「よほどのベネフィット」が示されるまでは僕から積極的に「使いましょう」と言うことはないと思います
ただ、リスクがどの程度あるかというと、経験上、大麻の急性中毒症状で搬送された人を診療したことはありません
危険ドラッグを使用した人の診療に携わったことはあります
危険ドラッグによく使用されるのは、合成カンナビノイドで、これらは大麻の主成分であるテトラヒドロカンナビノールと比べて、カンナビノイド受容体との親和性が数十倍高く、交感神経作動薬を使用した時のような変化が出るとされております
とはいえ、最近は危険ドラッグを使用して運び込まれる人も見なくなりました
大麻中毒は症状が非特異的で判断が難しいです
以前、大麻所持で捕まった人が、留置所の中で様子がおかしくなった(徐々に食欲が低下して、呼びかけに反応せず興奮し、汗をかいて痙攣した)ということで搬送されてきたことがあります
大麻の中毒症状か禁断症状を疑われての搬送だったのですが、僕は大麻による影響ではないのではかと思いながら応需しました
というのも、僕らが急性中毒疑いの患者さんの診察をするときは、トキシドロームという考え方を参考に診療を進めます
トキシドロームは1970年にMofensonとGreensherが使い始めた言葉で、Toxic Syndromeが元になった造語です
中毒物質を症状や身体兆候から大まかに分類し、中毒物質が分からない段階でも、身体診察から推定するものです
一般的には興奮性、鎮静・催眠薬、麻薬、抗コリン性、コリン作動性に分類されることが多いですが、当院では以下のような表をERに置いて診療しています
中毒物質と症状の関連(日本中毒学会「急性中毒標準診療ガイド」などを基に作成)
バイタルサインや意識状態、臨床症状からおおよその薬物毒は推定されます
興奮状態で発汗して痙攣したとなると、この表を参考にすると覚醒剤か、鎮静離脱かと疑うことになります
(ミオクローヌスであればセロトニン症候群も考えておいたほうが良いかもしれません)
大量の大麻を使用すると痙攣が誘発されるという動物実験結果があるようですが、頻度を考えれば他の物質ではなかろうかと思うのが自然です
まぁそもそも、留置所で大胆に覚醒剤や大麻を使わないでしょうから、たぶん鎮静剤の離脱じゃないかということで、ジアゼパムを投与したところ、瞬時に元気になってくれました
捕まる前まで、睡眠薬を定期的に飲んでいたそうで、逮捕されて投薬が切れたため離脱症状が出たという状況だったわけです
大麻の症状としては、何ともいえないメンタル面での変調や、バイタルサインでいうと血圧上昇などがあるとされています
そして大麻の離脱症状はなんともいえない頭痛とかそういったもののはずで、特徴的な臨床症状を呈するわけではなくこちらの表には入れずらいものがあります
しかし正直、目の前に慢性中毒の人が現れても見抜く自信はありません
「医者に分からないような変化しかないなら使っても大丈夫だろう」
というのはとんだ誤解ですが、我々は大麻についても勉強して精進しなくては・・・
ついでですが、国家試験勉強中の学生さん向けの情報です
では、大麻の中毒者に出会ったら、どこに通報しましょうか?
麻薬及び向精神薬取締法では、医師は麻薬中毒者と診断したら都道府県知事に届け出ることが義務付けられています
この法律内で、麻薬中毒は「麻薬、大麻又はあへんの慢性中毒をいう」と記載されておりますので、大麻の慢性中毒の人は都道府県知事に届け出なければなりません
しかし大麻の慢性中毒かどうかの判断もまた難しいものがありそうです
ちょっと意識状態がおかしな人の尿検査をしたらたまたま引っかかって・・・
というのが一番診断頻度が高いかもしれません
なんにせよ、今のところ日本では所持してはならぬとされる薬物です
医療用に使うにしてもきちんとした管理が必要です
「元」とはいえ、今回は若者に影響力のあるアイドルのしたことです
薬物へのハードルが変に下がらないことを願うばかりです