数日前から降り続いている激しい雨が、屋根をたたいている。
一つしかない窓から差し込むおぼろげな光の中で、
僕はぼんやりと天井を見つめながら、
ある女のことを考え続けている。
雨音の他には、ほとんど何も聞こえない。
そのとき突然、一滴の水が額の上に落ちてくる。
やれやれ、と思いながら、頭の下に組んでいた手を持ち上げ、額を拭う。
そして再び、天井の、先程と同じ部分に目をやる。
正確に言うと、天井にできた、あまり大きくはないしみの部分に。
この雨の中、毎晩のように僕はそのしみを見つめながら、
ある女のことを考え続けている。
時々、天井のしみを見つめ続けていると、その部分が特定の名詞を持ったなにかに見えるときもあるが、
もちろんそんな考えはばかげている。
今日もそのしみが、なにか特定の存在に変わりつつあるような気がしてきたので、
ばかげた考えを振り払い、思考を一点に集中させようと、目を閉じる。
と、水滴が再び額の上に落ちてくる。
再び目を開いたその瞬間、
彼女の顔が視界に飛び込んできた。
「やっと気がついてくれたのね」
天井に張り付いた彼女の顔が、寂しげにつぶやいた。
僕は何も答えずに、じっと彼女の顔を見つめ返す。
「ここ、とても暑いわ」
しばらくの沈黙の後、彼女はぽつりとつぶやいた。
「私、ずっとここにいたのよ…」
「あなた、そんなこと、考えもしなかったでしょ…」
彼女は小さく微笑んだ。
「ずっとあなたを見てたのよ。」
「あなたが何を考えていたのかもわかってる。」
「ここにいるとね、なんだってわかっちゃうのよ」
そして、大きくため息をつくと、弱々しく続けた。
「それって、結構つらいことなのよね…」
僕は黙って目の前の彼女を見つめている。
しばらくの間、お互いに黙って見つめあっていたが、
先に我慢ができなくなったのは僕のほうで、何も言わずに目を閉じる。
そうして、意識を思考に集中させようとしたとき、
再び水滴が額の上に落ちてくる。
やっぱり何も言わずに目を開くと、
彼女の寂しそうな顔が再び視界に飛び込んでくる。
「そんなこと、考えさせないから」
彼女が震える声でぽつりとつぶやくと同時に、
再び水滴が落ちてきた。
でも、それが彼女の涙だったのか、
それとも雨水だったのかはわからない。