エスカレーターが見える。ダダダと走る。駆け上がり終電に飛び乗り、ホッと胸を撫で下ろして家路につく。若い頃一時期仕事が忙しく、こんな日ばかりだった。
エスカレーターを駆け上がるのは当たり前だと思っていたし、他の人もやっていた。私は駆け降りるは怖くてできなかったけど、もちろん駆け降りる人もいた。エスカレーターのずらりと空いている左側のスペースを駆け上がり、駆け降りる。
時はめぐる。エスカレーターは本来2列に乗って利用するものだということがニュース等で言われるようになった。
正直、衝撃だった。地域によって右空け、左空けの違いはあれど、エスカレーターの片側空けは普通にあった。私の周りでは片側空けはエチケットだと言う人もいた。
私の暮らす大阪では左空けだ。でも、諸般の事情で左側に立ちたい、左側に立たないとエスカレーターを利用できない方がいる。それを知って申し訳ない気持ちになった。
そして、私はガンを患い、思うように動けなくなった。エスカレーターは立ち止まって乗っている。右側に乗っているが、混雑している時間帯にはそれでも後ろから音を出されたり、足踏みされたりしてイヤな気持ちになる。
人が横を駆け上がる時にギシギシと音がして、床面が沈み込むことにも今更ながら気づいた。これが重なると危険だという。
専門家によると、2列に並んで乗るのが正しいという。
昨年の大阪・関西万博で人々が2列でエスカレーターを利用する映像を見た。感心した。すごいなと思った。ただ、大阪からエスカレーターのマナーを広げるという話だったが、私は正直無理やろと思った。現に万博会場の外では2列利用を見ることがなかった。
そして、万博が終わり、あちこちでエスカレーターに乗る人々はやはり片側空けをしている。条例で規制している自治体もあるそうだが、これを広めてほしいと訴えるべきなのだろうか。
自分にできることはないか。エスカレーターを見るたびに考えている。