葬儀が滞りなく完了し、それからあっという間に四十九日を迎えた。

 

気持ちがバタバタしていると時間が経つのが本当に早い。祖母は節目の法要も希望していなかったので、その通りにしてひっそりと納骨の手続きを進めていた。

 

 

お墓は祖母が生前に目をつけていたところがあり、契約を済ませていた。いかにも“お墓”らしいところではなく、心地よく季節のお花が常に咲いている公園墓地の一角。地面に埋め込まれるタイプの小さなお墓だった。

 

祖母を埋葬するタイミングで、祖父の遺骨も一緒に改葬する予定としていた。ところが…

 

この祖父の改葬で大きな問題が発生した。

 

 

もともと祖父の遺骨は、遠方の山中にあるお寺に埋葬されていた。その地は祖父の生まれ故郷ではなく、戦時中の疎開先だったと聞いた気はする。祖父が独断で契約したらしい。

 

ところがそのお寺、典型的なボッタクリだったらしい。たとえば戒名代は6文字(居士)で200万円とか。調べると一般的な金額の5~10倍くらいもするようだ。そんなお寺に対して祖母は良く思うはずがなく、しばしば住職と対立をして険悪な関係となっていき、お墓は解約の流れに。

 

そしてある日、祖父の遺骨が掘り返されて祖母の元に返送されてきたらしい。泥だらけの遺骨が麻袋に入れられ、品名『衣類』と書かれ、宅急便の着払いで届いた。そして祖母はその遺骨を、食品保存用の透明のタッパーに入れて10年以上も自室に保管していた。

 

「おじいさんはここにいるからね!」

 

なんて言っていたっけ。

 

 

祖父の遺骨には、遺骨を取り出す作業代金40数万円の請求書が添えられていた。これも相場の何倍もするようだ。

 

 

金額の話についてはさておき。

 

最初の埋葬許可証がもう残っていなければ、今これから埋葬しようとしている墓地への改葬許可証も無い。法規的にこのままでは埋葬が不可能なのだった。上記の経緯があり、祖父の遺骨は手続き上“不自然に宙に浮いた状態”で長らく居室に保管されていた、ということになる。

 

 

祖父が亡くなったのはA市、埋葬されていた寺はB市、タッパーに入れて保管していたのはC市、これから埋葬(改葬)しようとしているのはD市になる。そして、管理していた祖母は亡くなり孫が手続きに走り回る。

 

何だかすでに面倒だ。

 

やるべき手続きは以下の通り。

 

①A市で除籍謄本を取得。

②B市に事情を説明し、埋葬許可証(行方不明)を再発行してもらった後、C市への改葬許可証を作成してもらう。

③C市に事情を説明し、C市で手元供養した後の改葬許可証を発行してもらう。

④D市に事情を説明し、埋葬許可証を発行してもらう。

 

平日に時間を作り、遠方の市役所を回ってこれらを説明しながら書類を集めて行く。何かの事件を疑われても仕方がない状況なので、当然ながらどこの役所でも詳細な説明を求められた。予想通り、なかなか大変だった。

 

 

さらに祖父の遺骨はタッパーに入れられていたので、ちゃんとした骨壺を買いに行った。仏具店を訪れ

 

「すみません骨壺ください!」

 

と言う。

 

店員さんに「えっ?!」と怪しまれた。そりゃそうだ、普通そんなふうに骨壺を買わない。ここでも経緯を説明して、いちばんシンプルな白い骨壺を6,500円くらいで売ってもらうことができた。

 

 

これで準備万端。かなり時間がかかった。墓地の担当者さんともすっかり顔見知りになっていた。納骨当日は、フタのようになっている墓石をサッと外して骨壺を安置するだけ。お線香をあげて、あっという間に完了した。墓石の周りには季節のお花がたくさん咲いていた。

 

ようやく一緒になれた祖父母。そこには早くに亡くなった父の遺骨も安置している。色々あったけど、ここから先は家族水入らずで安心してゆっくり眠っていてほしい。

 

これで祖母の介護はひと段落。これからは、自分の生活を大切にしていきたい。