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何もせぬまま1日が過ぎ、ちょっとした食い違いで、バイトの面接もすっぽかしてしまった。

なにやってんだか。
だが、そんな日にも面白いことはある。
おれは大阪で、寮生活をしているのだが、なかなか、ここにいる連中には面白いやつが多い。
この日は、そのうちの一人。
ソーシというやつと過ごした1日だった。

おれの住む部屋、#113に、ソーシが来たのは真夜中のこと。
映画監督を目指すそいつと、DVDを見るためだった。

見た映画は、宮崎葵 佐藤浩市 ユースケサンタマリアなどなど、そうそうたる顔ぶれで繰り広げられるパンク映画。
「少年メリケンサック」

パンクという題材のなかに、たっぷりのユーモアと、感情剥き出しのぶつかり合いとを混ぜ合わせた映画だ。

中年のオッサンたちがかき鳴らすパンクに、しばらく見入った後、そこから、朝、完全に日が登りきるまで、おれとソーシは延々と話していた。


ソーシはいわゆる、現代に多い‘脱力系’というやつだ。
だが、無気力なクセに、冷静さと、あらゆる方面へのセンスだけは併せ持った厄介なやつで、さらに、ちょっと日本人離れした顔で、こいつはモテる。
本当に、厄介だ。



しかも、おれとソーシは、互いにびっくりするほど息が合わない。

真反対の考えを持っているせいだろう。

だが、いや、だからこそ。
二人で話しだすと、互いの見地の違いが新鮮で、ムチャクチャに話しが長くなる。

この日も、例によって長くなった。

あーいえばこーいう合戦だ。

》》こんなシーン。カッコ良いんだよね
》》いや。そこはこーやろ
》》え!?クソじゃんそれ
》》あ…?

身ぶり手ぶり、仕舞には軽い演技まで入るおれらの話しが終わったのは、am 6:30 のことだった。