どうも。日本政府が謙虚ならば、新型コロナウィルス感染抑制できている他国に教えを乞うはずです。日本人に忍耐力があれば、緊急事態宣言が解除されて直ぐに、浮かれて旅行や会食に行かないはずです。「日本人は謙虚で忍耐力がある」というのは嘘っぱちの幻想です。それでも日本人のうち、取り柄のない無能はその幻想にすがらなければ生きていけないのでしょうね。まるでヤク中みたいに。
それはさておき、映画の感想文を書きます。今回は『オール・ザ・キングスメン』です。
純粋な目的で政治家を志した田舎者が州知事になり、権力欲に溺れて腐敗していく様を描く。1949年製作のアメリカ映画で、1976年日本公開作品。監督はロバート・ロッセンで、出演はブロデリック・クロフォード、ジョン・アイアランド、ジョーン・ドルー、アン・シーモア、ジョン・デレク、マーセデス・マッケンブリッジ、シェパード・ストラドウィック。
ポール・ニューマン主演の『ハスラー』でも知られるロバート・ロッセン監督は、生涯で10作しか監督していません。それは共産党員だった過去を暴かれたロッセンが「赤狩り」によって映画界を追放されたからです(更に追放後、転向して仲間を売ったことによって、ハリウッドでの映画作りが困難になりました)。そのロッセンが過去を暴かれたのは、本作がノミネートされた米国アカデミー賞授賞式直前なのです。
アメリカの政治腐敗を描いた本作が高評価されたことによって、当局がロッセンを政府批判者としてマークしたと考えることもできます。何しろ本作はアカデミー賞受賞作(作品賞、主演男優賞、助演女優賞)でありながら、1949年当時、GHQからの政治的圧力で日本公開されなかったと言われているほどですから。アメリカ政府にとって本作は厄介な邪魔者だったのでしょう。
本作は真面目な田舎者だったウィリー・スターク(ブロデリック・クロフォード)の政治家人生を、新聞記者からスタークの参謀になったジャック・バードン(ジョン・アイアランド)の視点から描いています。派手な演出はなく、シリアスな内容を着実に展開していきます(そこが物足りなくもあります)。
権力者となったスタークは初心を忘れ、賄賂、恐喝、女性スキャンダルと堕落していきます。因みに、ようやく本作が日本公開された1976年にロッキード事件で田中角栄元首相が逮捕されました。偶然とは恐ろしいものですね。
苦労人から努力して出世したスタークは、苦労人の心を失います。「苦労人だった政治家は苦労人の気持ちが分かる」なんて甘ったるい大嘘です。苦労人だった者は苦労人だった時代に戻りたくないから、苦労人である庶民を騙してでも金や権力にしがみつくものです。
本作のスタークと対極に、初心を忘れることなく、理想に燃えて政治腐敗に立ち向かうのが『スミス都へ行く』の主人公ジェファーソン・スミスです。本作と『スミス都へ行く』を見比べてみるといいでしょう。そうして、現実の日本政治について考えてみましょう。溜息しか出ませんから。
★★★☆☆(2021年1月5日(火)DVD鑑賞)
にほんブログ村 映画評論・レビューに参加しています(よろしければクリックを!)
