
建築家を夢見つつもグリーティング・カード会社で働くトムは、社長秘書として入社してきたサマーに一目ぼれをする。運命の恋を信じるトムは果敢にアタックし、遂に一夜を共にするのだが、サマーにとってトムは運命の人ではなく、ただの「友だち」でしかなかった(映画.comより引用)。2010年日本公開作品。監督はマーク・ウェブで、出演はジョセフ・ゴードン=レヴィット、ズーイー・デシャネル、ジェフリー・エアンド、クロエ・グレース・モレッツ、マシュー・グレイ・カブラー。
『インセプション』の頃から売れっ子になったジョセフ・ゴードン=レヴィットの主演作です。レヴィットは子役上がりで、一時期芸能界から離れることにより、従来のイメージを払拭することに成功しました。その成功の秘訣を、本作で共演したクロエ・グレース・モレッツに教えてあげたのでしょうか。
マーク・ウェブ監督がCMやミュージック・クリップ出身なので、映像に遊び心があり、BGMを多用しています。サマー(デシャネル)と一夜を共にしたトム(レヴィット)が、上機嫌で街に出ると、街の人たちも一緒になって踊り出すミュージカル的なシーンにも、監督のセンスが表れています(このシーンを大根仁監督の『モテキ』が真似していたような記憶があります)。
冒頭で「この作品はラブストーリーではない」旨のナレーションがあるとおり、本作は恋愛物というより、主人公トムの成長譚です。少年期からの思い込みが強く、少女(モレッツ)に恋愛相談をするトムは、精神的に大人になりきれていない存在です。それがサマーという「異物」と交流することで、それまでの価値観を壊され、新しい世界を見る価値観を得て、大人になっていくのです。
そして、一人の青年の成長をポップな感覚で描くことができるウェブ監督が、後に特殊能力を得た青年がヒーローとして成長する『アメイジング・スパイダーマン』を任されることになるのです。名前(Marc Webb)が「蜘蛛の巣(web)」にかかっているからという理由だけではありません。
★★☆☆☆(2016年3月23日(水)DVD鑑賞)
『世界の中心で、愛をさけぶ』から難病の設定を除き、ポップでドライに仕上げれば、本作です。