かつて神は、女性であると考えられていました。神が男性であると考えられてきたよりもずっと 長い間、そうされてきたのです。
偉大なる女神への崇拝は、キリスト教、イスラム教、ユダヤ教の三大父権制宗教が登場するよりも遥かに前のことです。メソポタミア地方のシュメールやバビロン、エジプト、アフリカ、オーストラリア、中国などの原始の神話では、すべての世界の創造者として女神が登場します。
旧約聖書の『創世記』では、男性のアダムは神に似せて創られ、女性のイヴはアダムのために、アダムの肋骨から創られたと記されています。これにより、「女性は男性のために存在する」という家父長制の考えが確立されたのです。子供を産むことができるのは女性ですが、神は女性であるという考えは異端とされました。
1960~70年代、女性の学者と研究家はこの非常に男性的な宗教観に異議を唱え、女神の歴史を明らかにする本が出版されました。最も物議を醸したのは、リトアニア出身の女性考古学者マリヤ・ギンブタスでした。
彼女は、考古学的な遺跡の発掘品の証拠から、新石器時代の農耕社会では偉大なる女神が創造主と崇められ、女性と男性は平等でお互いに協力し合って平和に暮らしていたとのこと、コミュニティのアイデンティティや富と財産が母方の家系、つまり母から娘へと母系を介して受け継がれたと主張しました。
女神が崇拝されていた社会は、女性が家族や集団、組織のリーダーである母系社会であり、男性は結婚すると、女性の苗字を自分の名前として名乗ったのです。
マリア・ギンブダス著『The Living Goddesses』
